大規模な開発プロジェクトに対する環境社会配慮
背景
大規模な開発プロジェクトは環境・社会に多大な影響を与える可能性がありますが、プロジェクトを資金面で支援する金融機関もその融資実行に際し、環境・社会への影響を十分検討することが国際社会から求められています。先進国・発展途上国問わず、金融機関は複雑かつ困難な環境・社会問題に取り組まなければならないことがしばしばあります。
三井住友銀行は、SMBCグループの一員として、環境問題を重要な経営課題と認識しています。活動の基本方針として、SMBCグループは「グループ環境方針」を定めており、その基本理念において、「持続可能な社会」の実現を重要課題の一つであると認識し、地球環境保全と企業調和のため、継続的な取り組みを行い、社会・経済に貢献する旨を定めています。
本環境方針に則し、当行が関与するプロジェクトにおいて環境・社会への配慮がなされ、当行の企業としての社会的責任(CSR)を果たすとともに、より高品質の国際金融サービスを提供していくことを目的として、当行はエクエーター原則の理念を尊重しつつ、環境社会リスク評価を実施し、評価結果をリスク管理プロセスに反映しております。
当行は上記取組みが、当行自身、借入人、地域コミュニティなど様々なステークホルダーに大きな恩恵をもたらすものと考えています。
具体的な取組(三井住友銀行)
行内ルールの策定
三井住友銀行は、行内の環境社会リスク評価体制の整備を行い、「環境社会リスク評価手続」(以下「手続」)を作成しました。この手続は、エクエーター原則を考慮した環境・社会への配慮方針ならびに行内における環境社会リスク評価方法を規定したもので、2006年6月より運用を開始し、継続して見直しを行っています。
プロジェクトの環境・社会リスク評価・管理体制
三井住友銀行は、融資を検討する全世界の大規模開発プロジェクトの環境・社会のリスク評価を行い、評価結果を踏まえて案件採り上げ判断をしています。必要に応じ、借入人に対して適切な環境社会配慮を促し、借入人の取組みを継続的にモニタリングします。
環境社会リスク評価
当行は、事業の潜在的リスクと影響の大きさに基づき、対象事業を以下の3つのカテゴリー(A・B・C)のいずれかに分類します。
カテゴリー | 定義 |
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カテゴリーA | 環境・社会に対して重大な負の潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響が多様、回復不能、または前例がないプロジェクト。 |
カテゴリーB | 環境・社会に対して限定的な潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響の発生件数が少なく、概してその立地に限定され、多くの場合は回復可能であり、かつ、緩和策によって容易に対処可能なプロジェクト。 |
カテゴリーC | 環境・社会に対しての負のリスク、または、影響が最小限、または全くないプロジェクト。 |
1.環境スクリーニング
大規模なプロジェクト向け融資の営業を担当する部署は、評価項目に従って対象プロジェクトのリスクの大きさを確認し、プロジェクトをいずれかのカテゴリーに初期的に分類します。
2.環境レビュー
社会的価値創造企画部は、対象プロジェクトのカテゴリー分類の確定、プロジェクトの環境社会配慮状況及び国際的な環境社会配慮基準の充足状況の確認を行います。営業担当部署や社会的価値創造企画部は、必要に応じ現地調査を実施します。
評価結果は、営業担当部署から審査部門に送られ、案件採り上げ判断の重要な一要素となります。
環境モニタリング
環境スクリーニングおよび環境レビューの結果に基づき、環境社会配慮に関する誓約事項を、借入人が遵守するべき事項として融資契約書に盛り込むことになります。社会的価値創造企画部は、営業担当部署と協力して借入人の遵守状況を定期的に確認し、プロジェクトの環境・社会への配慮を継続的に確保するよう努めています。

研修および周知徹底
環境社会リスク評価プロセスを行内に浸透させるために、海外拠点での集合研修、オンライン講座、外部専門家によるセミナーなど、様々な行内研修を実施しています。これまでに、経営層、営業、審査、監査の担当者などが研修に参加しました。さらに、日常的に環境社会リスクヘの取り組みを徹底するために、レポート等を銀行内に配信しています。世界中の環境に関する最新の動向や留意すべき環境リスクについて共有を行うことで、従業員の環境・社会配慮ヘの意識向上に努めています。
これまでの活動実績(三井住友銀行)
活動内容 | これまでの実績 |
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環境社会リスク評価体制の確立 |
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環境社会リスク評価の実施 |
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行内研修および周知徹底 |
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今後の取組(三井住友銀行)
- 国際的なベストプラクティスを踏まえた環境社会リスク評価手法の高度化に努めます。
- 行内研修を継続して行い、環境社会配慮への意識向上に努めます。
- 金融機関や借入人などプロジェクトに関わるステークホルダーの環境社会配慮の意識向上に努めます。
三井住友銀行は、当行が関与するプロジェクトへの環境社会配慮を通して、「持続可能な社会」の実現に貢献してまいります。
用語集
- エクエーター原則
大規模なプロジェクト向け融資における環境・社会への配慮基準。世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が制定する環境社会配慮に関する基準・ガイドラインに基づく。この基準・ガイドラインは、環境社会影響評価の実施プロセスや、公害防止、地域コミュニティへの配慮、自然環境への配慮など多岐にわたる。
- プロジェクトファイナンス
通常の企業向けの融資と異なり、企業の信用力や担保価値ではなく、プロジェクトのキャッシュフロー、事業性を評価して資金を提供する手法。
- プロジェクトファイナンス・アドバイザリーサービス(FA業務)
開発案件の資金調達について助言を行う業務で、資金調達の選択肢にプロジェクトファイナンスが含まれるものを言う。
- 国際金融公社(IFC)が制定する環境社会配慮に関する基準・ガイドライン
- 1. IFCパフォーマンススタンダード(PS)
プロジェクト実施者が環境・社会リスク管理を行うにあたり、自らの責任において行うべき事項を定めたもの。以下全8基準で構成されている。
PS1:環境・社会に対するリスクと影響の評価と管理
PS2:労働者と労働条件
PS3:資源効率と汚染防止
PS4:地域社会の衛生・安全・保安
PS5:土地取得と非自発的移転
PS6:生物多様性の保全および自然生物資源の持続的利用の管理
PS7:先住民族
PS8:文化遺産
IFCパフォーマンススタンダード本文については、 以下国際金融公社(IFC)公式ウェブサイト(英語)をご参照。
- 2. 世界銀行グループ 環境・衛生・安全(EHS)ガイドライン
世界銀行グループ環境・衛生・安全ガイドライン(EHS ガイドライン)は、IFC パフォーマンススタンダードで述べられているように、国際的な業界グッド・プラクティス(Good International Industry Practice, GIIP)を含む、技術的参照文書である。指定国以外の国に立地するプロジェクトについて一般的に受け入れ可能と考えられる実績水準・方法と、新規設備案件についても既存技術による適切なコストで達成可能な水準・方法を含む。一般 EHS<環境・衛生・安全>ガイドラインと産業セクター別 EHS ガイドラインの2 種類のガイドラインが用いられる。
EHSガイドライン本文については、以下国際金融公社(IFC)公式ウェブサイト(英語)をご参照。
- 1. IFCパフォーマンススタンダード(PS)