コラム
1.中堅企業の環境経営向上の視点
すでに環境経営に取り組んでいる多くの中堅企業では、ISO14001を認証取得し、環境マネジメントシステムの継続的改善に努めている。ただ、少しは改善されているものの、毎年同じような活動の繰り返しで、マンネリ化という課題を抱えている企業も多いのではないかと思われる。そこで、ここでは「ISOの継続的改善に変化をつける」ことを提案したい。
変化をつけるためには、まず、ルーティーン化した環境マネジメントシステムの見直しではなく、自社のビジネスと環境との係りを一度立ち止まってじっくり考えてみることである。例えば、顧客(社会)の抱えている環境課題に対して自社製品・サービスで何か貢献しうるものはないか、顧客視点で考えてみる。投入する主要な資源は、どこからどのように調達されているのか、サプライチェーンを遡って把握してみる。不要なアウトプット(廃棄物、排気、排水、排熱)は、どの工程で、どのような要因で、どれだけ発生しているのか把握し、削減や活用の余地がないかを真剣に考えてみる。現状の業務や作業が、環境影響、業務の効率化、コスト削減の点で、今のままでよいか、本当に必要かなどを再点検してみる。立ち止まって考えることで、環境改善のネタが洗い出される。
変化のためにもう一つ重要なことは、お金をかけないISOからの脱皮である。環境マネジメントシステムの継続的改善を、お金をかけないで取り組めることだけに限定していないだろうか。お金をかけて、より大きな環境改善の成果を得る取り組みも選択肢に入れることである。改善の取り組みに対して無意識に資金的制限をかけるという発想を変えてみることが大事で、必要であれば環境配慮評価融資などの環境金融を利用するとよい。
また、環境経営向上には、サプライチェーン・バリューチェーンを含めた自社のビジネスと環境の係りを踏まえ戦略的に取り組むことが必要であるが、経営層のサステナビリティへの深い認識、トップマネジメントの積極的関与、全社員の環境マインドの醸成も必要であることを忘れてはならない。
2.環境経営を支援する環境金融への期待
近年、金融の力を活用して環境経営を促進させる動きが進展しているが、三井住友銀行は、大手企業向けの「SMBC環境配慮評価融資」に加え、今回、中堅企業向けの環境配慮評価融資を開発した。利用環境の広がりで、さらに実用的な環境経営サポート体制が整備されたといえる。
この環境配慮評価融資は、企業の環境配慮状況を評価して単に融資するだけでなく、今後の環境経営に関するアドバイスを行う点が特徴的である。融資により環境改善が図られるとともに、環境経営に関するアドバイスを活用したプラスアルファの環境配慮の実践により、二重の効果が期待できる。また、お客様とのリレーションシップの充実と行員の環境リテラシー向上にも役立つ取り組みといえる。
当融資の積極的な展開により、環境に配慮した設備投資等が促進され環境改善が図られるとともに、環境配慮製品・サービスの種をビジネスとして成功するまでのサポート(企業マッチング、マーケット開発支援など)により、お客様の環境ビジネスを成功させ、「さらなる、環境経営へ、共に。」を深化させることを期待したい。
なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、筆者が所属する法人としての見解ではない。
以上
プロフィール
孫入 修一
公認会計士、サステナビリティ情報審査人
立命館大学大学院 政策科学研究科 客員教授 (企業責任実践論 : 2008年度・2010年度)
財務諸表監査従事の後、ISO14001認証取得支援、温暖化マネジメント支援、環境・CSR経営支援、環境・CSR報告書作成支援、環境・CSR報告書の第三者審査等に従事している。