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2018.11.7 笑顔の未来へ
家電製品や日用雑貨などの設計・生産管理を行う「WAVE株式会社」(前会社名:株式会社bigiu)。同社は、すでに流通している製品を安価に作る「ジェネリック家電メーカー」であり、大場さんはその代表取締役社長を務めています。
ジェネリック家電とは、大手メーカーの特許に抵触しない形で、主に中国などで生産することにより低価格に抑えた家電のことで、最新の機能をそこまで必要とせず、価格を抑えたい消費者から人気を集めています。
大場さんが社長に就任してからは既存の事業に加え、新しい分野にもチャレンジしています。現在は、同社初となる自社オリジナル製品「with1」を開発中です。
「with1は、磁石の作用を利用し、振るだけで発電する充電器です。まずは中東やアフリカなど、電力供給が安定しない地域で、人々の役に立てば、と考えています。」
大場さんは大学卒業後、大手保険会社と知的財産権のコンサルティングファームに計20年以上勤めました。しかし、46歳で脱サラ。経営者として独立します。
「仕事で中小企業の経営者と会うことが多かったのですが、とにかく皆さんかっこよかったんですよね。次第に、自分も『いつかは一国一城の主になりたい』と思うようになりました。もちろん苦労は半端じゃないでしょうが、自分で大きな判断を下して、自分で責任を背負う。その真剣さや熱さに感銘を受けました。」
大場さんが大切にするのは「第三者から見て、自分が楽しそうかどうか」。彼は、楽しそうに働く経営者の姿に憧れ、「事業継承」という形で独立を果たしました。
「最初は自分でゼロから事業を立ち上げようと事業計画のコスチュームをいくつも考えました。でも、どれもイマイチで(笑)。ただ、事業継承の話をいただいたときは、すでに売上もあるし、とはいえまだ規模は小さく伸びしろもありそうで、これは『面白そうだな』と思ったんです。」
最初の数ヶ月は、当時の事業者に同行しながら、事業の内容やマーケットの状況を把握。2013年の夏頃、正式に引き継ぐことを決めました。それから今に至るまで、彼は経営者として事業を徐々に拡大しています。
独立という決断に至るまでには、もちろん不安もあったといいます。「独立すれば後がないし、命がけですから」と大場さん。
「最終的に独立に踏み切れたのは、やはり外から見て『楽しく働いている人』でいたかったから。楽しくないと、何事も長続きしませんよね。そして、チャンスは長く続けなければやって来ません。だからこそ、継続するための『楽しさ』が大切だと思うんです。」
一方で、失敗したときのことも想定し、「まずは従業員に迷惑をかけない形で事業を閉じること。そのためにも、責任を取れる範囲の借金を超えたらすぐに手を引くこと」をボーダーラインとして経営しています。
「今の事業を継いでから、従業員募集のためにハローワークによく行くのですが、求人って本当にたくさんあるんですよね。ですから、もしこの事業がダメになっても、自分が再就職するチャンスはたくさんあるな、と。変な社長ですよね(笑)。」
大場さんは保険からコンサルティングファーム、そしてジェネリック家電と、その度に異分野へ転身しました。「同じ業界で転職や独立をすると、競合になることもあり、それまでの人の縁が切れてしまうかもしれません。私の場合、違う分野だからこそ、今もご縁が続いてますし、いろいろと助けてもらえました」と言います。実際、事業継承の話もかつての保険会社の上司からもらったとのこと。
2013年に引き継いだこの事業は新たなフェーズを迎えています。冒頭で紹介したwith1の販売です。「すでに海外で大きな取引が生まれ始めているので、販路を拡大したいですね。」と意気込みます。クラウドファンディングの活用にもチャレンジし、見事に資金を集めました。
「資金をいただけたことはもちろん、日本でこれだけ支持していただいたことが嬉しかったです。日本は電力供給が安定していて、with1のマーケットとしては厳しいと思っていたので。今後、先進国で発売する際の"勇気"にもなりました。」
さらに、with1に使われる発電機能について、ドローンへの搭載や波力発電への応用など、横展開も考えているとのこと。大場さんの今後のプランは尽きません。
あまり無責任なことは言えませんが、とにかく自分と自分の大切な人が納得してくれたら、思い切って前に進んでほしいですね。これに尽きると思います。ちなみに、私がよく思い浮かべるのは「わがままたれ」という言葉。自分の人生、最後に決めるのは自分だと思うので、納得のいく決断をしていただければと思います。