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2019.6.26マネーのおいしい関係
スイスといえば、美しいアルプスの自然豊かな山岳風景を思い浮かべる方も多いでしょう。
スイスは、面積約4万㎢と九州よりやや狭いところに、標高4,000m超のマッターホルンやモンブランなど欧州最高峰の山々が連なる、山岳国です。
山々に囲まれて交通の便があまりよくないことから、昔から、長期保存ができるハードタイプのチーズが主に生産され、家庭料理にも重用されてきました。
日本でもチーズ料理の代表格としてお馴染みの「チーズフォンデュ」は、一般的な家庭料理のうちの一つです。
「チーズフォンデュ」でもっとも多く使われるのは「チーズの王様」エメンタールチーズですが、その日の気分でグリュイエール、ヴァシュラン、アッペンツェラー、ティルジットなど多様なチーズを加えて楽しまれており、スイスとチーズの深い関係がうかがえます。
スイスという国を語るとき、まず特徴としてあげられるのは「永世中立国」であることでしょう。
18世紀末、フランス革命の波を受けてフランス軍に占拠されたスイスでしたが、ナポレオン失脚後の1815年にウィーン会議に参加し、同年のウィーン議定書で「永世中立国」として認められました。
20世紀の2つの大戦でも中立の立場を継続。
1945年の国際連合設立時には加盟を見送り、2002年になって190番目の加盟国となります。
数々の戦火を逃れてきた人々を受け入れてきたスイスは、国際人道主義発祥の地でもあります。
そのため、ホスト国としての公正性を保つことができるということから、赤十字国際委員会、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)などの国際機関がスイスに集まっています。
ヒューレット・パッカードやマクドナルド、ヤフー、グーグルなど、世界の名だたるグローバル企業も欧州本社を置いており、名前を挙げればきりがありません。
食品のネスレや医薬品のロシュ、金融のUBS、クレディスイスなどは、スイス発祥の企業として日本でもお馴染みです。
その他、「ロカルノ国際映画祭」「ルツェルン音楽祭」「ローザンヌ国際バレエ・コンクール」などの国際的な文化イベントも数多く行われています。
グローバル企業、国際機関、文化イベントなどがスイスに集まってくるのは、永世中立国だからというだけではありません。
欧州のほぼ中央にある、という地の利も、理由のひとつです。
また、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つを公用語と定めており、多くの国民が複数の言語を話せます。
これにより、スイスの人たちは欧州域内で広く活躍する人材として、非常に価値があるといえるでしょう。
山に覆われて産業が乏しかったスイスは、16世紀頃から他国間で戦争が起きるたびに、傭兵隊を送り込むことで国益を得てきました。
遠征中の傭兵が母国に送金する、その資金を運用するといったことがスイスの金融ネットワークを発達させました。
その影響によって、スイスには世界有数の銀行が数多くあり、国内経済にも強い影響を与えています。
スイスの金融業界が生み出す付加価値は、国民総生産(GDP)の9.4%です。
その割合は、欧州での金融の中心地である英国でも6.9%、日本は4.2%ですから、いかに国の基幹産業であるかがわかります。
また、現在で、スイス国内において金融業界に携わる就労者数は約20万人に上り、2017年末時点では全就労者の約5.7%を占めています。
2.7%(保険業も含む)である日本の2倍以上です。
スイスが金融立国として地位を築いている背景には、「プライベートバンキング(=ウェルス・マネジメント)」の存在があります。
投資可能資産総額100万米ドル(約1億2,000万円)以上の富裕層を対象にした、特別な金融サービスの発祥が、スイスなのです。
実際、プライベート・バンクの預かり資産(AUM)金額ランキングの1位は、スイスのUBS銀行であり、クレディスイスも6位に名を連ねています。
さらに、永世中立国になったことで、欧州中の富裕層の資産を受け入れて発展し、外国人顧客の資産管理における世界的リーダーとして、世界のクロスボーダー資産の約4分の1を管理するまでに至っています。
また、富裕層人口は増加の一途をたどっており、2017年時点で、100万米ドル以上の資産を保有する人は2,225万人で、前年比12.6%増。
富裕層の保有資産は総計91兆6,980億ドルと前年比13.8%増。
そのうち、保有資産3,000万米ドル以上の超富裕層は、約26万人(同12.9%増)と人数は少ないですが、保有資産は31兆5,030億ドル(同16.3%増)にのぼります。
この増加傾向はこれからも続くと予想され、超富裕層の資産額が今後5年間で4割近く増加するという予測もあります。
(米調査会社Wealth-X 調べ)
富裕層向けのプライベート・バンクを主力とするスイスにとっては、こうした追い風も手伝い、今後も金融業を糧に成長していくことが見込まれます。
スイスの強みは、金融業だけではありません。
世界経済フォーラム(WEF)が発表している「国際競争力ランキング」でも、毎年高い順位を維持しており、2018年も4位となっています。
各項目でみると、「労働者のスキル 2位」「イノベーション能力 3位」などが特徴的です。
この背景には、薬品や精密機器業を起点とした先端技術の発展があります。
スイスの工業分野で有名なのは時計です。
価格1,000フラン(11万円)以上の腕時計の、約95%がスイス製と推定されており、高級時計の代名詞である「ロレックス」をはじめ、高級時計メーカーが、スイスにはとても多くあります。
スイスの輸出向け腕時計生産量は、年間約2,370万個。
輸出向け生産量だと主要4か国合計の2.6%にすぎませんが、輸出向け売上高では2,160億米ドルと、主要4か国合計の50%以上を占めています。
このように、スイスの時計は生産量が少ないものの、平均価格が高いハイブランド市場を席巻しているため、 売上高もとても高い数字となっています。
他にもスイスでは、精密機器全般、ロボット製造、IT分野などで、幅広く研究開発がなされています。
その拠点となるのが、産学交流を推進するチューリッヒ工科大学です。
ここには欧州中からエンジニアの卵が集まり、スイスに拠点を置くグローバル企業の研究所での開発メンバーとなるなど、国をあげてのエンジニア人材の養成が進められています。
これらが、イノベーション能力や技術導入で高い評価を受けている理由といえるでしょう。
国際競争力ランキングで、他にも「職業教育の質 1位」「国際共同発明 1位」「複数の関係者との連携 2位」とグローバルに連携しながらも、自前の技術も磨くスイスらしさが国際的に評価されています。
これからのIT分野での活躍も十分に期待できます。
どの国にも依存しないが、独自の存在感を示すスイス
永世中立国として、独自の路線を歩むスイス。
欧州各国とも、さらなるグローバル諸国とも、うまく関係を築きながら成長を続けています。
それはまさに、単体で食べても十分美味しいうえに、さまざまな料理にもマッチするチーズとその姿が重なります。
これからもチーズのように、さまざまなモノとつながりながらも、自身の魅力を失わずに成長し続けるスイスは、中長期の投資先として魅力的と言えるでしょう。
エメンタールチーズ 200g、グリュイエールチーズ 200g、片栗粉 大さじ1、白ワイン 200cc、キルシュ(お好みで) 大さじ1、にんにく 1片、ナツメグ・こしょう 適宜、バゲット 適量、じゃがいも 適量、ソーセージ 適量、ブロッコリー・アスパラ・ミニトマトなどお好みの野菜 適量
1)チーズは1cm角に切って片栗粉を全体にまぶしておく。ジャガイモ、ブロッコリー、アスパラは茹でて、刺しやすく食べやすい大きさに切る。バケットは一口大に切る。ソーセージは温めておく。
2)半分に切ったにんにくの切り口をフォンデュ鍋に擦りつけ、香りを移す。
3)白ワインを入れ加熱しアルコールが飛んだら、チーズを入れて時々混ぜながら煮溶かす。お好みで、キルシュ、ナツメグ、こしょうを加える。
4)お好みの具材を串に刺し、チーズにくぐらせてどうぞ。