交易拠点の特徴が現れたグルメ

シンガポールはタイ、ミャンマー、マレーシアなどがあるマレー半島の先端に位置しています。

国土面積は約720平方kmと、東京23区より15%ほど広い大きさで、人口は約564万人。とても小さい島国です。

船で欧州・中近東〜中国・日本間を移動する場合の中間地点であり、西がインド方面、東が太平洋方面と、東西に往航する船の渡航ルートとなっています。

この地の利から、19世紀には英国の海峡植民地の首都と定められ、英国商船の貿易拠点として大きな成長を遂げてきました。

小さな国ですが、一人あたりGDPは64,041ドルで世界第8位(2018年時点のデータ、IMFより)。39,306ドルで26位の日本よりも経済力が高いです。

今回紹介する「ラクサ」は、ココナッツミルクとエビの出汁が効いたスパイシーなスープが特徴の麺料理です。

中華料理をベースにし、数種類の香辛料が使われたラクサは、インド、マレーシア、インドネシアといった近隣のアジア諸国の影響を大いに受け、交易拠点として発展してきたシンガポールだからこそ生まれたグルメなのです。

新興国影響でさらに加速する貿易

近年は、工業化により、加工貿易基地としての性格を強めてきました。

欧米や日本、香港、韓国などから船舶で運ばれてきた半導体やその他電子部品など大量のキーパーツを加工し、成長著しいASEAN諸国に輸出。各国で組み立てられた製品は再びシンガポールに持ち込まれ、全世界へと輸出されていきます。

昨今の取扱高を見ると、主要輸入品は、IT製品(携帯電話やパソコンなど)と原油などです。

輸出も、IT製品が36.8%を占めており、スマートフォン向け部品や車載用電子機器の自国生産に力を入れています(2018年シンガポール貿易統計より)。

輸出先は第1位が中国、第2位が香港、第3位が隣国マレーシアです。その他、日本、ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)などが主要貿易相手国であり、アジアの貿易拠点として大きな役割を果たしていることがわかります。

石油化学工業の分野も、飛躍的に成長しています。

2009年には、西部に点在する7つの島を埋め立て、東南アジア最大級の石油化学産業の一大拠点を完成させました。

そこには、石油やガスなどのエネルギー素材加工の生産施設が集積し、日本の企業約15社を含む世界の石油化学企業がズラリと並びます。

アジア有数の金融センター! 外国金融機関の拠点に

交易拠点として発展したシンガポールは、アジアの金融センターを目指して積極的に外国企業を誘致し、1980 年代半ばには多くの外国金融機関がシンガポールを拠点に事業を展開しています。

ASEAN 地域の中心地として資産運用残高を伸ばしてきました。

国際決済銀行(BIS)の 2016年4月時点の調査では、一日当たりの外国為替取引高は日本を上回り、金融マーケットとしては、イギリス、アメリカに次ぐ世界第3位となっています。

シンガポールに拠点を置く銀行は約200行に及び、資産運用会社、保険会社などを含めると、1,200社以上です。

貿易を基点として、金融でもグローバルに連携し、確固とした地位を得ているのです。

テクノロジーの力でさらなる成長へ

小さな島国でありながら、貿易の交易拠点として、金融センターとして発展してきたシンガポール。

テクノロジー分野でもこれからの成長が期待できます。

日本でも、社会全体の運営の効率化のために、スマート化(主に社会インフラのIT技術による高度化)が推進されています。

シンガポールでは2014年から、高齢化や公共交通の混雑など都市の共通課題を、最新のICT(情報通信技術)で解決し、人々が暮らしやすい環境をつくる「スマート国家構想」がスタートしています。

具体的には、@国家センサー・ネットワーク設置(人や物の動き、気候などの状況をセンサーで把握し、システムに取り入れる仕組み)、A国家デジタル身分証明システムの構築、Bキャッシュレス社会の実現に向けた電子支払の普及拡大などを進めています。

また、シンガポールのハイテク分野のスタートアップ企業は推定5,000社。

配車アプリの「グラブタクシー」や、オンライン・ゲームやEコマースを提供する「SEA(旧ガレナ)」など、ユニコーン企業(企業価値10億米ドル以上の未上場企業)も登場しています。

近年では、シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)の後押しもあり、フィンテック分野の起業活動も活発になっています。

デジタルエコノミー関連の施策でも、アジアでもっとも進んでいるのがシンガポールなのです。

先進国とアジア新興国のハイブリッド!

東西の交易拠点、ASEANひいてはアジア全体の金融センターとして、これからも自身を変容させて成長を続けていくであろうシンガポール。

先進国の顔を持ちながらも、アジア新興国と良い関係を築き、橋渡し役として両者をしっかり結び付けています。

今後も、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど、成長力の高い新興国に囲まれ、そうした国々への輸出の成長も長期的に期待できます。

また、シンガポールは新しい産業を常に取り入れ、先進国全体の経済成長率を上回る伸びを見せ、2008年のリーマンショック時にも、実質経済成長率の落ち込みは限定的で、安定した成長を続けてきています。

世界の実質経済成長率見通し
  • 出典:IMF World Economic Outlook(2019年4月)
  • データは2024年まで、2019年以降はIMFの予想値、2019年4月時点

まとめ

近隣のアジア諸国の影響を受けて、生まれたラクサ。

シンガポールの経済を支える貿易産業と金融は、成長著しい新興国を支えながら、さらに強固な位置を築くことでしょう。

さらに今後は、デジタルエコノミーなどの新分野で先陣を切り、IT化によってより多くの国とつながることで、さらに魅力的な国へとステップアップしていくと予測されます。

シンガポールはアジア新興諸国の成長性とIT産業や金融業といった先進国的な産業力を持った、新興国と先進国のハイブリッドと言えそうです。

これからの投資先としても有望な対象の一つだと考えられます。

シンガポールのおいしいレシピ
「ラクサ(2〜3人前)」

材料

米麺 200g、鶏肉 150g、厚揚げ 1/2枚、殻付きエビ 6個、ラクサペースト 80g、ココナッツミルク 200ml、水 300ml、ナンプラー 小さじ1〜、レモン汁小さじ1〜、塩少々

<トッピング>ゆで卵 1〜2個、もやし適量、パクチー適宜、レモン適宜

作り方

1)鳥肉は一口大に切って、塩少々でよくもみ込んでおく。エビは背わたを取り除き洗っておく。厚揚げは食べやすい大きさに切る。

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2)鍋にラクサペースト、ココナッツミルクを入れてよくまぜ、水を加えて火にかける。

3)沸騰したら鶏肉を入れ5分中弱火で加熱し、エビ、厚揚げを加えさらに3〜4分加熱する。レモン、ナンプラーを加え、塩で味を調える。

4)別の鍋に湯を沸かし、米麺をパッケージ通り茹で、湯を切る。

5)器に麺を入れ、3をかけ、もやし、半分に切ったゆで卵、パクチーをのせる。好みにあわせて、レモンを絞る。

  • 2019年9月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

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