住宅ローンの最長借入期間は35年が一般的

住宅ローンの借入期間は一般的に最長35年となっています。

ただし、多くの金融機関はローンを完済しなければいけない年齢が決められているため、誰もが35年などの最長借入期間で住宅ローンを借り入れできるわけではありません。
たとえば、50歳の時に、完済時年齢が80歳の住宅ローンに申し込みをすると、最長の借入期間は30年です。

申し込み時の年齢が高いと、借入期間が短期間となるため、月々の返済額の負担が増えます。
収入に対して住宅ローン返済の割合が大きくなると、返済比率が高くなり、審査において厳しく見られる可能性が高いです。
また、希望していた借入金額や期間で審査に通らないこともあります。

住宅ローン返済期間は長期化が進んでいる

近年、住宅ローンの返済期間は50年ローンの登場によって長期化傾向にあり、借入期間が35年から50年の超長期住宅ローンを借りる人が増加しています。

建築資材費や人件費の上昇、省エネ・高性能住宅の普及などにより、不動産価格が高騰した結果、住宅ローン利用のハードルを下げるため、借入期間を最長50年に延長する金融機関も出てきているのが現状です。

期間が長くなれば毎月の返済額は抑えられ、借入可能額を上げられます。一方で、完済時年齢が変わらないことが多いです。そのため、超長期住宅ローンは若年層をターゲットにしている商品といえます。

では、実際に住宅ローンを利用している人たちが、どのくらいの期間でローンを組んでいるのかみてみましょう。

住宅金融公庫の調査によると、30年超から35年以内の借入期間を選択している人が最も多く、約半数を占めています。
また、近年は35年から50年の超長期間を選択する人も増加してきました。

住宅ローンの返済期間

この結果は、借入期間を長くするほど、月々の住宅ローンの返済額が少なくなるためだと考えられます。

家計の負担が軽減される一方で、総支払額が増える、老後に支払いが残るリスクなどを懸念して35年で住宅ローンを組む人が多いのが実態です。前述の通り、ただ返済期間を長くするのではなく、それぞれのライフプランにあった返済計画を立てることが大事です。

長期で住宅ローンを借りるメリット

住宅ローンを長期間借りることで毎月の返済額を抑えられ、団体信用生命保険(団信)の保障期間も長くなります。
住宅ローン返済中の万が一に備えながら、家計にゆとりが生まれることで、貯蓄に回せるお金が増えて安心感が高まるでしょう。

メリットやデメリットを考慮しながら、借入期間を決めましょう。

月々の返済額を抑えられる

返済期間が長くなると、短期で借り入れするよりも毎月の住宅ローンの返済額が少なくなり、突然の収入減や支出増にも対応しやすくなります。

たとえば、借入期間を35年と30年にした場合の月々の返済額を比較してみましょう。

【シミュレーション条件】

  • 借入金額:6,000万円
  • 返済方式:元利均等返済
  • ボーナス返済有無:ボーナス返済なし
  • 金利タイプ:固定金利1.3%
  • 団信:金利上乗せなしの団信

下の表は横にスクロールできます

借入期間 月々の返済額
35年 177,889円
30年 201,362円
  • 2024年10月現在

35年と30年で借り入れした場合の月々の返済額を比較すると、35年返済の方が23,473円ほど月々の負担が軽減されます。

団信による保障期間が長くなる

団体信用生命保険(団信)は住宅ローンの借入期間中に適用となるため、ローンの返済期間が長くなると、その分保障期間も延びます。

団信とは、借入期間中にローン契約者が死亡または所定の高度障害状態となった場合、返済中のローン残高が0円になる保険です。

さらに、住宅ローンの金利を上乗せすることで、8大疾病特約付の団信に加入でき、生命保険や医療保険の代わりとしての役割も果たします。

契約者に万が一のことがあった場合、ローンの返済が残っていると、家族が経済的に困窮してしまうかもしれません。
しかし、団信の保障があれば、もしもの時も家族の生活が守られるため、安心して長期の住宅ローンを組めます。

長期で住宅ローンを借りるデメリット

住宅ローンを長期で借りると、毎月のローン返済額は抑えられますが、その分支払う利息も増え、最終的な返済総額が膨らみます。
借入金額と金利条件によっては、借入期間が25年、30年、35年と長くなるごとに、数百万円単位で返済総額に差が出る場合もあるでしょう。

さらには、ローンの支払いが定年以降の老後まで続く場合、収入が減少し、家計が圧迫されるリスクも高まります。
将来、発生すると考えられるリスクなども考慮しながら、住宅ローンの借入期間を決めましょう。

返済総額が大きくなる

借入期間が長くなるほど、利息負担増で返済総額も大きくなります。
また、毎月の返済額が少なくなる分、元金の減るペースは遅くなります。

25年、30年、35年のそれぞれの期間ごとに、借り入れした場合のシミュレーションをしてみましょう。

【シミュレーション条件】

下の表は横にスクロールできます

借入期間 毎月の返済額 利息 利息割合 返済総額
25年 234,364円 10,309,200円 14.7% 70,309,200円
30年 201,362円 12,490,320円 17.2% 72,490,320円
35年 177,889円 14,713,380円 19.7% 74,713,380円
  • 2024年10月現在

シミュレーション結果を見てみると、借入期間が長くなるほど、毎月の返済額は少なくなることがわかります。

一方で、利息の割合は増加し、返済総額25年と35年で比較すると、約440万円もの差が生じるのです。

老後も支払いが続く可能性がある

借入期間を長くすると、老後までローンの返済が続く可能性が高くなります。
たとえば、期間35年の住宅ローンを先ほどのシミュレーションと同じ条件で、35歳時点で借り入れした場合、60歳時点の住宅ローンの残債は約2,000万円となります。
返済はその後も続き、70歳まで支払いが残るのです。

定年退職後は年金生活となったり、働き方を変えたりすることにより、現役時代と比べて収入は大きく減少する可能性が高いです。
返済を続けながら生活に余裕を持てる収入があれば問題はありませんが、十分な収入や貯蓄がない場合は、毎月のローン返済に追われ、生活が困窮してしまうリスクがあります。
老後の生活に大きな影響が出る可能性があるため、将来を見据えて借入期間を検討しましょう。

残債割れのリスクが高まる

一般的に、築年数が古くなるほど、経年劣化によって住宅の資産価値は下がります。
そして、下落した住宅の市場価値と比べて、その時点での住宅ローン残債が多い状態を「残債割れ(オーバーローン)」といいます。

住宅ローンの返済期間が長くなると、住宅流通市場の変化などで残債割れ(オーバーローン)となるリスクが高まるのです。

マイホームに住み続けている間は問題ありませんが、転勤や子育てなどで売却することがあれば、金融機関が設定した抵当権を抹消する必要があり、住宅ローン残債の一括返済が求められます。

この時、残債割れ(オーバーローン)の状態では、売却代金だけで住宅ローンを完済できません。
不足分を自己資金などから補って、ローンを一括返済することになります。

住宅ローンの借入期間を考えるポイント

住宅ローンの返済は35年など、長期間にわたるため、将来の生活にも影響を与える可能性があることに注意が必要です。
借入期間が長いほど、月々の返済額は軽減されますが、総返済額は増えます。

また、仕事を退職した老後にまで返済が続くリスクや、住宅の資産価値下落による残債割れといったデメリットも考慮する必要があります。

将来のライフプランや収入の見通しを踏まえて、住宅ローンの返済計画にゆとりを持たせることが、いつまでも安心して暮らせる住まい選びにつながるでしょう。

月々いくらまでなら無理なく返済し続けられるか

住宅ローンの借入可能額は、年収と返済負担率から求められます。
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合のことで、多くの金融機関では返済負担率の目安を30〜40%程度に設定しています。
金融機関が住宅ローンの審査で、必ずチェックする重要項目です。

一般的には、返済負担率は30〜40%程度であれば問題ないとされていますが、これは借り入れの上限に近い金額です。
上限に近い金額で借り入れすると、金利の上昇局面や収入に変化が生じた場合に、毎月の返済が苦しくなる可能性が高くなります。

実際には、子どもの教育費や老後の資金など、将来的な出費を考慮して、借入金額は収入の20〜25%程度に抑えるのが理想です。
こうすることで、生活費や他の支出とバランスを保ちつつ、安定して返済ができるでしょう。

ただし、長期で住宅ローンを借りられるからといって、無理をして高額な物件を購入してしまうと、老後の生活に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

将来の生活を見越して、住宅ローンを借り入れる際に、余裕を持った返済計画を立てることで、長期的に家計を安定させられます。

何歳までに返済を終えていたいか

住宅ローンを組む際には、いくらまで借りられるのかだけでなく、何歳までに完済したいかを軸に、借入金額や借入期間を考えましょう。

毎月の返済を無理なく続け、資金に余裕ができた際には一部繰上げ返済を行うなど、定年退職する前に住宅ローンを完済しておくことが理想的です。
定年後の収入状況によっては、毎月のローンの返済が大きな負担となる可能性が高くなります。

たとえば、60歳で定年を迎えた場合、年金の受給開始までには数年のギャップが生じます。
その間、再雇用やアルバイトなどで生活費を賄いながら、貯金を取り崩して住宅ローンを返済しなければならない状況に陥るかもしれません。

そのため、ライフプランを見据えたうえで、何歳までに完済するのがベストかを明確にすることが大切です。
将来目標を軸にして、購入する住宅の予算を決め、無理のない返済計画を立てることで、老後の生活の安心感も高まり、定年後のゆとりある生活が実現できるでしょう。

まとめ

住宅ローンの借入期間は、一般的に最長35年です。
しかし、金融機関ではローン完済時の年齢が決められており、年齢を重ねるほど借入可能年数は短くなります。

また、長期間のローンは、月々の返済額を抑えられるメリットがある一方で、利息の総額が増え返済負担が重くなるといったデメリットもあります。

住宅ローンを借りる際は、ライフイベントや家計の変化を考慮して、借入期間を決めることが大切です。
定年後に住宅ローンが残っていると、家計の負担が大きくなることがあるかもしれません。

自分たちのライフプランにあわせて、ゆとりのある返済計画を立て、新しい生活をスタートさせましょう。

  • 2024年10月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

水野 崇(みずの たかし)

水野総合FP事務所代表。東京理科大学理学部卒業。

相談、執筆・記事監修、講師、取材協力など多方面で活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。日本FP協会「2021年FP広報センター」スタッフを務め、全国の1000名以上から寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。

月20本の執筆・監修案件に携わり、学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義を毎週行っている。

【資格】1級ファイナンシャル・プランニング技能士ΙCFP認定者Ι宅地建物取引士Ι証券外務員1種

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