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2025.2.20マイホームの夢、叶えよう!住宅ローンの基礎知識
住宅ローンの借り換えを検討する際には、現在の金利と比較して高くなるのか低くなるのかを見極めることが大切です。以下では、ケース別にその詳細を解説します。
変動金利と固定金利の利率がほぼ同水準である場合、金利が大きく変動しないうちに金利タイプを変更しておくことも、選択肢の1つといえます。2024年3月に日銀がマイナス金利政策や長短金利操作などの金融政策を転換し、17年ぶりの利上げに踏み切りました。今後、どのようなペースで利上げされるかは見通しにくい状況にあります。
金利上昇局面における住宅ローンの金利は、変動金利よりも固定金利が先に上がり始める傾向があります。そのため、過去の変動金利と比べ、現在の固定金利の利率に大きな差がない場合は、変動金利から固定金利にタイプ変更や借り換えることで、将来の金利変動リスクに備えることができます。とくに金利の上昇について不安を感じている方にとっては、心理的な安心感も得られる選択肢となるでしょう。
変動金利が固定金利より低い状況であれば、借り換えについて慎重な判断が必要です。住宅ローン金利の仕組みとして、変動金利は日銀の政策金利(短期金利)の影響を受け、固定金利は10年国債の金利(長期金利)の影響を受けます。そのため、住宅ローンの融資実行時点では、変動金利のほうが固定金利より低く設定されているのが一般的です。
それぞれの金融機関では、短期金利や長期金利を参考に住宅ローンの基準金利を決定しています。また、変動金利は短期プライムレートに連動し、半年ごと(4月、10月)に利率が見直されます。政策金利が低水準で推移する間は金利タイプ変更や借り換えをせず、変動金利で借り続けたほうが総返済額と利息負担でメリットがあるでしょう。
ただし、金利上昇局面での変動金利は、返済終了までの利息負担が増加するリスクを抱えています。変動金利かつ元利均等返済の住宅ローンには、金利上昇による毎月返済額の増加を一定範囲に抑える仕組みとして、多くの金融機関で「5年ルール」と「125%ルール」といった激変緩和措置を設けています。仮に金利が急上昇しても「5年ルール」「125%ルール」により返済額の増加は一定程度抑制されますが、未払利息が発生した場合は最終返済日まで繰り越しされ総返済額が増えます。
これらの要素を総合的に考慮し、ご自身の家計状況や将来のライフプランに照らし合わせて、固定金利へ借り換えるか否かを判断することが重要です。
固定金利の利率が、現在適用されている変動金利よりも低い場合、金利タイプ変更や借り換えを検討してもよいでしょう。住宅ローンを借りる時期が同じであれば、通常は変動金利のほうが固定金利よりも低い利率が設定されています。固定金利のほうが低い局面は、住宅ローンの借り換えの好機といえます。
利率の低い固定金利に借り換えることで、総返済額と利息負担を軽減できる可能性があり、金利固定による安心感を得ることもできます。さらに、返済終了まで毎月の返済額が確定することで、将来の返済計画を立てやすくなる点もメリットです。
そのため、固定金利のほうが利率が低い局面では、変動金利から固定金利への借り換えを積極的に検討するとよいでしょう。
変動金利から固定金利への借り換えには、主に2つの方法があります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえながら、具体的な手続き方法について解説します。
住宅ローンをすでに利用している金融機関では、変動金利から固定金利への金利タイプ変更に対応しているのが一般的です。この方法は手続きが比較的簡単で、変更したいタイミングも自由に選べます。
金利タイプ変更時の手数料は、条件を満たせば無料となるケースが多いのが特徴です。ただし、変動金利から固定金利へのタイプ変更は、新規契約時よりも借り換え時のほうが適用金利が高く設定されている金融機関もあり注意が必要です。
三井住友銀行では、変動金利型から固定金利特約型への金利タイプ変更に対応しています。タイプ変更後の固定金利特約期間として、2年・3年・5年・10年・15年・20年から選択できます。
具体的な手続き方法としては、まずはSMBCダイレクト(インターネットバンキング)にログインして金利タイプ変更シミュレーションを実施します。これにより、金利タイプ変更後の借入利率や返済額を事前に確認することができます。
さらに、借り換えシミュレーションも活用してより詳しく確認しましょう。シミュレーションの結果、金利タイプ変更によるメリットがデメリットを上回ると判断できれば、実際の変更手続きに進みます。なお、固定金利特約期間15年・20年への変更時はインターネットからではなく、直接取引店に連絡します。
住宅ローンの借り換えを同一金融機関でおこなうことはできませんが、別の金融機関で借り換えるという選択肢もあります。現在適用されている変動金利よりも、他金融機関が提供する固定金利のほうが有利な条件である場合、この方法は検討してもよいでしょう。
この借り換え方法の特徴は、基本的に新規の住宅ローン申し込みと同様の手順を踏むことです。つまり、事前審査から始まり本審査を経て、2段階の審査に通過してはじめて融資を受けることができます。申込者の属性と物件の担保評価の審査が改めて必要になりますので、手続きの手間という観点では煩雑に感じられるかもしれません。
しかしメリットもあります。同一金融機関での金利タイプ変更では新規借り入れ時よりも金利が高くなるケースがありますが、別の金融機関への借り換えでは、新規借り入れ金利が適用されます。
ただし、通常の住宅ローン契約と同様、諸費用や手数料が相応にかかることは避けられません。借り換えによる金利低下のメリットと、これらの費用負担を比較検討し、総合的に判断することが重要です。
借り換え前後の金利差以外にも、借り換え前のローン残高や残返済期間によっては、費用対効果の面で必ずしも有利とならない場合もあります。事前に借り換えシミュレーションを実施して、慎重な検討が必要です。
変動金利から固定金利への住宅ローン借り換えには、以下5つの点に注意が必要です。
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
先述のとおり、住宅ローンの借り換えには、新規契約時と同様に手数料や諸費用がかかることに留意しましょう。住宅ローン借り換え時にかかる費用としては、以下が代表的です。
下の表は横にスクロールできます
【住宅ローン借り換え時にかかる費用例】 | |
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事務手数料 | 各金融機関が任意で設定する手数料。「借入金額×〇%」というように一定の割合で計算される「定率型」と、決められた金額の「定額型」の2種類があり、金融機関によって異なる。定率型では、借入金額が多いほど事務手数料も高額になる。 |
保証料 | 住宅ローン契約は、通常は保証会社による保証を条件とするため、その際に保証料が発生する。一括支払いやローン金利上乗せなど、金融機関によって保証料の取り扱いは異なる。事務手数料が定率型であれば、保証料が不要となるケースもあり、事務手数料と保証料は一緒に検討が必要。 |
団体信用生命保険料 | 住宅ローン契約者が死亡もしくは所定の高度障害状態になった際に、住宅ローン残高がゼロになる保険。ほとんどの金融機関では団体信用生命保険への加入が必須。保険料は住宅ローンの適用金利に含まれている場合が多く、保険に特約をつける場合は金利に上乗せして支払う。 |
その他諸費用 | 印紙税、抵当権抹消費用、抵当権設定費用、司法書士報酬など。現在借り入れしている住宅ローンの全額繰り上げ返済手数料がかかる場合もある。 |
これら諸費用の支払いも考慮した上で、借り換えのメリットがどの程度あるのか総合的に判断することが重要です。
住宅ローンの金利変動に関して、多くの人が変動金利の上昇を確認してから固定金利への借り換えを検討しますが、これは適切なタイミングとはいえません。なぜなら、住宅ローン金利の上昇は一定の順序に従って進行するためです。
金融機関が住宅ローンの基準金利を決める際、固定金利は長期金利の影響を受け、変動金利は政策金利の影響を受けた短期プライムレートに連動し半年ごと(4月、10月)に利率が見直されます。政策金利とは、日銀が金融政策として定める基準となる短期金利のことです。
まずは、10年国債の利回りに連動する長期金利が先行して上昇します。その後に、政策金利が追従する形となります。つまり、固定金利が先に上昇し、変動金利への影響は最後に現れるのが通常のパターンです。長期金利は市場の将来予測を即座に反映するのに対し、政策金利は経済への影響を考慮して中央銀行が慎重に調整するため、変動金利は後から変動することが多くなるのです。
このため、変動金利の上昇を確認したタイミングでは、すでに固定金利も上昇している可能性が高く、住宅ローンを借り換えるには遅い場合があります。まずは、住宅ローン金利変動の仕組みと借り換え時の契約者への影響について、正しい理解を深めましょう。
固定金利への借り換えは、慎重な判断が必要です。金融市場の動向を正確に予測することは極めて困難であり、将来の金利上昇を見越して固定金利に借り換えをおこなっても、実際には予想に反して低金利が継続するケースもあり得ます。
固定金利に限らず住宅ローンを借り換える際は、メリットを享受できるほど残年数やローン残高があるかも重要なチェックポイントです。残年数や残高が少ない状態では、元本の返済が進んでいることで借入金利の影響を受けづらくなります。一般的には、残りの返済期間で10年以上、ローン残高では1,000万円以上ある場合に、借り換えメリットがあるとされます。
三井住友銀行のホームページでは、借り換え前後の諸費用を含めた増減額について、シミュレーションで確認できます。
住宅ローンを借り換える場合、団体信用生命保険も入り直しとなります。新規契約と同様、ほとんどの金融機関で団体信用生命保険の加入が必須条件です。ただし、健康状態が一定の基準を満たしていないと加入できません。
団体信用生命保険は住宅ローン契約者が死亡もしくは高度障害状態となった場合、保険会社から金融機関に対して保険金が支払われ、返済中のローン残高がゼロになる仕組みです。現在の健康状態や過去の病歴についてローン契約時に告知し、審査に通る必要があります。
告知書にはありのままの事実を記載しなければなりませんが、借り換え時は最初の契約時よりも年齢が高くなっているため、新たな団体信用生命保険に加入するハードルが上がります。そのため、借り換え時の健康状態にも注意しましょう。
住宅ローン控除は本来、新築・中古物件の購入やマイホームの増改築のための住宅ローンが対象ですので、借り換えによる新規ローンが現在借り入れしている住宅ローンの返済目的であることを証明する必要があります。証明できない場合、原則として住宅ローン控除の対象とはなりません。
ただし、以下の条件を満たすことで、借り換え後も住宅ローン控除の適用を受けられます。
住宅ローン借り換え後の借入残高や返済期間によっては、控除額が少なくなる可能性があります。また、ローン返済期間が10年未満に短縮されると、住宅ローン控除そのものが適用されません。住宅ローン控除は税制改正が定期的におこなわれています。借り換え後も引き続き控除を受けるためには、最新の税制にもとづく一定の要件を満たしている必要があります。
借り換えをおこなう際は、総返済額の事前シミュレーション以外にも、住宅ローン控除を受けられるかについても必ず確認しましょう。
変動金利から固定金利への住宅ローン借り換えを検討する際は、金利状況を慎重に見極めることが重要です。変動金利と固定金利の利率がほぼ同水準の場合や、過去の変動金利と比べ現在の固定金利のほうが低い場合は、借り換えを検討するタイミングとして適切です。
借り換え方法としては、同一金融機関での金利タイプ変更と、別の金融機関への借り換えの2つの選択肢があります。借り換えは金利差のみならず、諸費用を含めた総返済額のシミュレーションが欠かせません。残りの返済期間やローン残高によっては、借り換えメリットが期待できない場合もあります。
本記事で紹介した内容を総合的に判断し、ご自身の家計状況や将来のライフプランに合わせて、最適な借り換え方法を検討しましょう。