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2024.10.31マイホームの夢、叶えよう!住宅ローンの基礎知識
住宅ローン減税(控除)は、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローンを利用してマイホームを新築・購入または増改築等した場合に、一定条件を満たすことで年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税から最大13年間、税額控除される制度です。
所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税の一部(最大97,500円)から税額控除されます。
なお、2022年の税制改正によって、住宅ローン減税制度の控除率、控除期間などが大幅に変更されました。
それまでは2021年12月末をもって終了の予定でしたが、適用期間が4年間延長され、2025年12月31日までに入居した場合に、住宅ローン減税が利用可能となったのです。
適用条件は物件の種類などによって異なりますが、主な条件は以下のとおり、共通しています。
【原則満たさなければいけない共通条件】
住宅ローン減税は個人の住宅購入を促進し、家計の負担を軽減する目的でつくられた制度です。そのため、土地だけの購入や投資用物件の購入には適用されません。
床面積については、登記簿に記載された数値で判断されます。
新築住宅に関しては、「省エネ基準に適合した住宅」のみ、住宅ローン減税が適用できます。
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で基準を満たしていない住宅は、住宅ローン減税を受けられないため、物件を購入する際には注意しましょう。
また、先ほどの共通条件に加えて、「居住用とした年と、その年の前後2年ずつを合わせた計5年の間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと」という条件などを満たす必要もあります。
住宅ローン減税が適用となる建物の床面積は、原則50㎡です。
ただし、2024年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅に限っては条件が緩和され、合計所得金額が1,000万円以下、かつ床面積が40㎡以上5の住宅も減税の対象となります。
なお、新築住宅の借入限度額、控除期間、控除率は、以下のとおりです。
下の表は横にスクロールできます
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | ||
---|---|---|---|---|---|
2024年入居 | 2025年入居 | ||||
子育て世帯・ 若者夫婦世帯 (※) |
その他世帯 | すべての世帯 | |||
長期優良住宅・ 低炭素住宅 |
5,000万円 | 4,500万円 | 13年 | 0.7% | |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
新築住宅の場合は、省エネ性能が高いほど住宅ローン減税の借入限度額が高く設定され、1年間の最大控除額は大きくなります。
また、子育て世帯・若者夫婦世帯は、2024年までに入居すると借入限度額が優遇されます。
借入限度額以上に住宅ローンを借りられますが、借入限度額を超えた金額は住宅ローン減税の対象外です。
中古住宅の場合、共通条件に加えて以下の条件などを満たすことで、住宅ローン減税の適用対象となります。
【中古住宅の住宅ローン減税適用条件】
1981年以前の住宅の場合、地震が発生した際に建物が倒壊するリスクが高いため、耐震基準を示す「耐震基準適合証明書や既存住宅性能評価書」「既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書」などの書類の提出が必要です。
物件の引き渡し後に耐震基準適合証明書を取得した場合は、住宅ローン減税の適用対象外となるため、早めの対応を心がけましょう。
なお、中古住宅の借入限度額、控除期間、控除率は、以下のとおりです。
下の表は横にスクロールできます
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 |
---|---|---|---|
中古住宅 | 3,000万円 | 10年間 | 0.7% |
「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」など所定の省エネ基準を満たした中古住宅は借入限度額が3,000万円となり、一般の中古住宅の借入限度額は2,000万円です。
控除期間は新築住宅よりも短くなりますが、控除率は新築住宅と変わりません。
買取再販住宅とは、不動産会社などが中古住宅を買い取り、2年以内にリフォームやリノベーション(特定増改築等)をした上で、再度販売する住宅のことです。
買取再販住宅の場合、共通条件に加えて以下の条件などを満たすことで、住宅ローン減税の適用対象となります。
なお、買取再販住宅の借入限度額、控除期間、控除率は、以下のとおりです。
下の表は横にスクロールできます
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | ||
---|---|---|---|---|---|
2024年入居 | 2025年入居 | ||||
子育て世帯・ 若者夫婦世帯 (※) |
その他世帯 | すべての世帯 | |||
長期優良住宅・ 低炭素住宅 |
5,000万円 | 4,500万円 | 13年 | 0.7% | |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |||
一般の買取再販住宅 | 0円(2023年までに新築の建築確認:2,000万円) | 10年 |
買取再販住宅の住宅ローン減税は、リフォーム内容や工事費用に細かい条件が設けられているため、事前に控除の対象となるかを販売業者に確認しましょう。
リフォーム(増改築)の場合、共通条件に加えて以下の条件などを満たすことで、住宅ローン減税の適用対象となります。
また、以下いずれかの工事に該当しているかを確認しましょう。
なお、リフォームによる住宅ローン減税の借入限度額、控除期間、控除率は、以下のとおりです。
下の表は横にスクロールできます
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 |
---|---|---|---|
リフォーム | 2,000万円 | 10年間 | 0.7% |
このように、住宅の種類によって、条件や借入限度額、控除期間などに違いがあるため、注意が必要です。
住宅ローン減税は、給与所得以外に収入がない会社員の場合、1年目は自分で確定申告をして、2年目以降は勤務先の年末調整で申告するのが一般的です。
それぞれ、手続きをする時期が決められているため、必要な書類などの準備を早めにおこなうよう心がけましょう。
住宅ローン減税の適用になるかを確認したい、確定申告の方法がわからない場合などは、管轄の税務署に相談すると、安心して手続きを進められます。
それでは、住宅ローンを借りてから1年目と2年目以降におこなう手続きや必要書類について、詳しく見ていきましょう。
1年目に、住宅ローン減税(控除)を受ける場合の申請方法について、詳しく解説します。
住宅ローン減税を受けるためには、購入した物件に住み始めた翌年の2月16日〜3月15日に確定申告します。
確定申告書は提出時点の住所を管轄する税務署に提出し、税金の還付を受けましょう。
給与所得以外の収入がない会社員は、給与の年間収入金額が2,000万円以下であれば、個人で確定申告する必要はありません。
しかし、住宅ローンの1年目に限っては、年末調整で住宅ローン減税を申告できないため、給与所得者でも忘れずに確定申告しましょう。
【住宅ローン減税の確定申告時に必要な書類】
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書類名 | 入手先 | 補足事項 |
---|---|---|
確定申告書 | 国税庁のWebサイト、税務署 | e-TaxよりWeb申請可能 |
本人確認書類の写し | 市区町村役場 など |
|
源泉徴収票 | 勤務先 |
|
住宅ローンの年末残高等証明書 | 1年目は10月から翌年1月頃に借入先の金融機関より送付 | 年末時点での住宅ローン残高が記載された書類 |
建物や土地の不動産売買契約書(工事請負契約書)の写し | 不動産会社や工務店、ハウスメーカー | 住宅取得年月日や取得金額を確認するために必要 |
建物や土地の登記事項証明書(登記簿謄本) | 不動産を管轄する法務局の窓口またはオンライン |
|
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 国税庁のWebサイト、税務署 |
|
その他の証明書類 | 不動産会社 |
|
なお、住宅ローン減税のためだけに申告する場合は、確定申告期間(2月16日〜3月15日)を待たずに、居住した翌年の1月1日から還付申告できます。
住宅ローンの借り入れ後、2年目以降に住宅ローン減税(控除)を受ける場合の申請方法について、詳しく解説します。
住宅ローン減税の申告は毎年必要ですが、会社勤めなど給与所得者の場合、2年目以降は自身で確定申告をする必要はありません。
2年目以降は勤務先で年末調整する際に、必要書類を勤務先に提出し、手続きをしましょう。
【年末調整時に勤務先に提出する書類】
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書類名 | 入手先 | 補足事項 |
---|---|---|
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書 | 税務署より送付 | 住宅ローン借り入れ後2年目に、残りの住宅ローン控除年数分がまとめて送付される |
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 | 毎年10月〜11月頃、住宅ローン借入先の金融機関より送付 | 金融機関によって名称が異なる |
給与所得者以外の個人事業主などは、1年目と同様、2年目以降も確定申告で住宅ローン減税の申請が必要です。
万が一、住宅ローン減税(控除)の申請を忘れてしまったとしても、一定の条件を満たしていれば、還付申告することで税金の還付を受けられます。
【確定申告をしていない場合の対応方法】
1年目に住宅ローン減税を申請する際、確定申告の期間は原則、2月16日〜3月15日までの1か月間と定められています。
この期間内で「申告を忘れてしまった」「多忙で申告ができなかった」ということが、あるかもしれません。
しかし、期間内に申請できなかった場合でも、確定申告対象年の翌年1月1日から5年以内であれば、さかのぼって還付申告をおこなうことが可能です。
たとえば、2022年に住宅を購入したけれど、確定申告期間内に申請を忘れてしまっていた場合、2027年12月31日までに申請すれば、納めすぎた所得税が還付されます。
住宅ローン減税で控除された金額は、原則として所得税から控除されますが、所得税から控除しきれなかった場合は、翌年6月以降の住民税(最大97,500円)から控除されます。
なお、5年間の申告期限が過ぎてしまった場合、納めすぎた所得税は還付されません。
申請を忘れたことに気づいた場合には、早めに対応しましょう。
青色申告特別控除の適用を受ける個人事業主などは、確定申告したあとに住宅ローン減税の申請を失念していたことが発覚した場合、再度住宅ローン減税(控除)の申請をおこなっても認められる可能性は低いです。
【確定申告をした場合の対応方法】
確定申告の期限内(2月16日〜3月15日)に住宅ローン減税の申請を忘れていたことに気づいたのであれば、再申告はできます。
再申告する場合は、税務署にあらかじめ相談した上で、住宅ローン減税適用に関する正しい申告書を用意し、3月15日までの期限内に提出しましょう。
一方、申告期限の3月15日を過ぎてから住宅ローン減税の申請を忘れていたことに気づいた場合、訂正を求めることは非常に難しくなります。
確定申告後に税額を多く申告していたことに気付いたときには、「更正の請求」をすることで申告内容の修正ができると定められています。
一方、住宅ローン減税などの申請そのものを忘れていた人については、その申告の計算自体に誤りがあったわけではないため「更正の請求」の対象外であり、再申告しても認められることは難しいでしょう。
先述したように、住宅ローン減税の申請を忘れてしまったら「更正の請求」はできませんが、「更正の請求の嘆願」はできます。
「更正の請求の嘆願」とは、更正の請求期限である法定申告期限の5年を過ぎてから、税額の修正・変更の申し出をすることです。
しかしながら、申し出ることはできても、これまでの判例から、住宅ローン減税申請に関する「更正の請求の嘆願」が認められる可能性はかなり低いといえます。
還付を受けられない…という事態にならないためにも、住宅ローン減税の申請を忘れないよう注意が必要です。
また、住宅ローン減税に関する申請を忘れてしまったことに気づいた場合には、すぐに管轄の税務署へ相談しましょう。
2025年以降は、「省エネ基準適合住宅」のみが住宅ローン減税対象(2024年9月現在)となります。物件を購入する際には注意しましょう。
2022年の税制改正により、2024年以降に建築確認を受けた新築住宅については、省エネ基準を満たしていない場合、住宅ローン減税の対象外となることが決定されました。
つまり、2025年以降は、省エネ基準適合住宅のみが住宅ローン減税の対象となるということです。
これから新築住宅の購入を検討している場合には、住宅の性能基準を確認し、省エネ基準に適合した住宅を選びましょう。
「省エネ基準適合住宅」とは、現状の省エネ性能以上の基準(日本住宅性能表示基準)を満たしている住宅のことです。具体的には、以下のとおり基準が定められています。
【省エネ性能の基準】
なお、省エネ基準適合住宅には、住宅ローン減税の対象であるということ以外にも、毎月の光熱費を抑えられるほか、断熱性や気密性に優れ快適に暮らせるといったメリットがあります。
住宅ローン減税(控除)を適用するには、一定の条件を満たす必要があります。
とくに、1年目は確定申告が必要となるため、忘れないように申請しましょう。
本記事でもお伝えしたように、子育て世帯や若者夫婦世帯は、2024年までに入居する場合に限り、住宅ローン減税の借入限度額が引き上げられています。
また、住宅ローン減税は、2025年12月31日までに入居した場合に適用されます。
2026年以降に住宅ローン減税制度が延長されるかどうかは、2024年9月時点ではまだ発表されていません。
2022年におこなわれた税制改正では控除率が下がるなどの変更もあったため、今後延長されたとしても条件などが変更となる可能性もあります。
住宅ローン減税は、住宅ローンの負担を減らすことができる優遇制度ですので、仕組みや適用条件を正しく理解し、最大限有効に活用しましょう。
水野 崇(みずの たかし)
水野総合FP事務所代表。東京理科大学理学部卒業。
相談、執筆・記事監修、講師、取材協力など多方面で活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。日本FP協会「2021年FP広報センター」スタッフを務め、全国の1000名以上から寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。
月20本の執筆・監修案件に携わり、学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義を毎週行っている。
【資格】1級ファイナンシャル・プランニング技能士ΙCFP認定者Ι宅地建物取引士Ι証券外務員1種