住宅ローン審査には事前審査と本審査がある

住宅ローン審査は、「事前審査(仮審査)」と「本審査」の2段階で実施されるのが一般的です。

最初の段階である「事前審査」は、借入可能額の目安を確認するための予備審査です。金融機関は住宅ローンを組む基準を満たしているか審査します。本人確認書類などの基本的な書類や申告内容に基づき、申込者の属性や個人信用情報の確認といった簡易審査が実施され、比較的スムーズに結果が出ます。審査結果は、通常は申し込みから数日、遅くとも1週間程度で判明します。

一方、本審査は事前審査よりも厳密な審査が行われます。事前審査時の申告内容と提出書類を精査して、本人確認や勤務先への在籍確認、不動産の担保評価、健康状態、返済能力の確認など、住宅ローン申込者について詳しくチェックされます。融資承認までの流れは金融機関によっても異なり、審査期間としては申し込みから1〜4週間ほどかかります。本審査では、事前審査では確認されなかった要素も含めて総合的な審査が行われます。

事前審査で承認されると通常であれば本審査はそのまま通過しますが、本審査で否決されることもある点には注意が必要です。不動産の売買契約締結後に本審査を申し込むのが住宅ローンの通常の流れですので、本審査で否決された場合は「ローン特約」によって売買契約を無条件で解除できるのが一般的です。

住宅ローン審査の流れ

住宅ローンの審査から融資実行までの流れは、主に以下の5つのステップで進行します。

  • 1.事前審査を受ける
  • 2.本審査を受ける
  • 3.住宅ローンの契約を締結する
  • 4.団体信用生命保険(団信)や各種保険に加入する
  • 5.融資実行と引き渡しを同時に行う

それぞれについて詳しく見ていきましょう。なお、必要書類の詳細については次の章でご紹介します。

1.事前審査を受ける

事前審査は、本格的な審査の前に融資可能性を確認する仮審査です。この段階では本人確認書類など基本的な書類と申告内容に基づいて審査が行われ、比較的短期間で結果を得られます。また、複数の金融機関に同時に事前審査を申し込めるため、条件比較も容易です。

必要書類は本審査と比べて少なく、申込者の属性を確認できる基本的な書類が中心となります。

2.本審査を受ける

事前審査通過後は本審査へと進みます。本審査では返済能力の確認に加えて、申込者の健康状態や物件の詳細な担保価値まで、細かい部分が審査対象となります。事前審査と比べてより詳細な確認が行われるため、申告内容の不備や提出書類に不足があると審査手続きに遅れが生じます。

本審査時の必要書類として、不動産売買契約書、重要事項説明書、工事請負契約書など物件関係書類の提出も求められます。

3.住宅ローンの契約を締結する

本審査通過後、金融機関から正式な承認通知を受け取り、契約へと進みます。契約前には契約書や融資条件(融資額、金利、返済期間、返済方法)の最終確認を行い、必要に応じて条件の調整や交渉を行いましょう。

金融機関と取り決めた融資条件が契約書に反映され、引き渡し日の約1〜2週間前に「金銭消費貸借契約書」「抵当権設定契約書」「保証委託契約書」などの契約書を締結します。

住宅ローンの電子契約を活用する金融機関も増えていますが、契約締結後は契約書・関連書類の控えを確実に保管しておきましょう。

4.団体信用生命保険(団信)や各種保険に加入する

住宅ローンを契約する際は、ほとんどの金融機関で「団体信用生命保険(団信)」への加入を必須条件にしています。団体信用生命保険に加入するには、健康状態が一定の基準を満たしていることが求められ、健康状態の告知を行い審査に通る必要があります。

団体信用生命保険の補償内容は金融機関によっても異なり、審査の結果、一般団信に加入できない場合に備えワイド団信を提供している金融機関もあります。以下の3つが代表的です。

  • 一般団信:死亡または所定の高度障害状態となった場合に、住宅ローン残債を保障する最も一般的なタイプ
  • ワイド団信:健康状態などにより一般団信への加入が難しい方向けに、加入基準を緩和したタイプ
  • 疾病保障付き団信:死亡・高度障害の保障に加えて、がんや3大疾病などの特定疾病の保障が付加されたタイプ

疾病保障付き住宅ローンの一例として、三井住友銀行は8大疾病に対応した「8大疾病保障付住宅ローン」を取り扱っています。

また、民間金融機関の住宅ローンを利用する場合、団体信用生命保険に加えて火災保険の加入が必須になります。地震保険の加入は任意ですが、必要に応じて加入するとよいでしょう。

5.融資実行と引き渡しを同時に行う

住宅ローン契約後、金融機関は1週間程度で融資が可能になり、融資実行と引き渡しは原則同じタイミングで行われます。引き渡し当日には次のことが実施されます。

  • 住宅ローンの融資実行
  • 銀行口座に融資金が入金
  • 売主への残金決済
  • 諸費用などの支払い
  • 所有権移転登記
  • 抵当権設定登記
  • 書類や鍵の受け取り(引き渡し)

引き渡しは司法書士が同席した上で、住宅ローンを契約した金融機関で行われることが一般的です。登記に関わる手続きを司法書士に依頼して、物件の引き渡しが完了します。

住宅ローン審査の必要書類

住宅ローンの審査では、事前審査と本審査の2段階で書類の提出が必要です。それぞれの段階で必要となる書類や注意点について、詳しく見ていきましょう。なお、必要書類は金融機関によっても異なります。

事前審査

事前審査の主な必要書類は、本人確認書類です。運転免許証またはマイナンバーカード、もしくはパスポート(住所の記載のあるもの)を準備します。必ず有効期限内であることを確認しておきましょう。

金融機関によっては、源泉徴収票など収入を証明する書類、購入予定の物件概要が確認できる資料の提出を求められます。外国籍の方の場合は、在留カードや特別永住者証明書、もしくは住民票謄本(マイナンバー記載なし)の提出が必須となります。

本審査

本審査では、申込者の属性(年齢、年収、勤務先、勤続年数、勤務形態)から返済能力(完済年齢、返済負担率など)について詳細な審査が実施されます。また、不動産の担保評価についても細かく精査します。そのため、収入に関する書類と物件に関する書類が中心となります。

三井住友銀行では、本審査時点で住民票謄本(マイナンバー記載なし)を提出します。収入証明書類としては、会社員であれば直近の源泉徴収票や給与明細(直近3か月分)、賞与明細(直近2回分)が必要です。確定申告をしている方は、確定申告書と納税証明書(発行から3か月以内)の提出が求められます。

物件関連書類では、不動産売買契約書や重要事項説明書、工事請負契約書などが必要です。また、住宅ローン以外にも借り入れがある場合、借入明細書や返済予定明細表の提出も求められます。

提出書類の不備がないように、金融機関の指示に従って準備することが重要です。有効期限が指定されている書類は、提出前に期限切れとなっていないか確認しましょう。

住宅ローン審査を受ける前に確認すべきこと

住宅ローン審査を円滑に進めるために、確認しておくべきポイントを以下の観点から紹介します。

  • 事前審査前に確認しておくべきこと
  • 本審査前に確認しておくべきこと

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

事前審査前に確認しておくべきこと

住宅ローンの審査では、以下の3つの観点から確認が必要です。

  • 返済能力は問題ないか
  • 他の借入状況は問題ないか
  • 頭金は確保できているか

それぞれの要素が審査結果に大きく影響するため、順を追って詳しく解説します。

返済能力は問題ないか

返済能力は住宅ローン審査における最重要項目です。金融機関は「返済負担率」を重視しますが、返済負担率とは年収に占める年間返済額の割合のことで、一般的な審査基準では年収の30〜35%が目安とされています。返済負担率が高すぎると、家計を圧迫しローンの滞納リスクが高まるため、審査に通りにくくなります。

また、安定した収入が見込めるかといったことも重要な判断材料となります。具体的には、勤務先や勤続年数、勤務形態が審査の対象となります。正社員として長期間勤務している場合は、収入の安定性が高く評価されます。住宅ローン完済年齢も重要な審査項目であり、多くの金融機関では完済時年齢を80歳未満に設定しています。

他の借入状況は問題ないか

返済能力を判断する際は、既存の借入状況も重要な要素となります。カードローンや自動車ローンなど、住宅ローン以外の借り入れを含め、返済負担率は計算されます。クレジットカードのキャッシング枠については、利用していない場合であっても限度額が借入残高に含められます。

希望額の住宅ローンを借りられないケースでは、他社借り入れやクレジットカードが原因となっている事例が見受けられます。そのため、事前に借入状況を整理し、利用機会のないカードは解約するなど、審査に悪影響を与えないよう準備しておくことが望ましいでしょう。

また、信用情報機関には借入残高やクレジットカード返済履歴が登録されています。個人信用情報もローン審査の対象となり、数年前の延滞記録が残っていることで審査に通過できない可能性があります。返済の遅延がないかどうかも重要なチェックポイントです。

頭金は確保できているか

頭金の確保は、希望額の住宅ローンを借りる上で重要です。一般的な目安としては、住宅購入価格の2割程度を頭金として用意することが多いようです。

頭金を多く用意することで、借入額を抑えられ毎月の返済負担を軽減できます。また、諸費用(仲介手数料、事務手数料、登記費用など)も現金での支払いが必要となるため、これらを含めた資金計画を立てる必要があります。

本審査前に確認しておくべきこと

本審査では、事前審査よりもさらに詳細な審査が行われます。申込内容の誤りや提出書類に不備がないか、以下の2つのポイントについて確認しましょう。

  • 事前審査と整合性はとれているか
  • 連帯保証人が必要な場合は承諾を得ているか

それぞれについて解説します。

事前審査と整合性はとれているか

事前審査時の申告内容と本審査時の情報に相違がないことが重要です。金融機関が事前審査で承認した内容に変更がある場合は、審査担当から申込者へ聞き取り調査が行われるなど、本審査手続きに遅れが生じます。

事前審査後の新たな借り入れや返済遅延、転職・退職などで収入に変化がある場合は要注意です。これらは審査結果に大きく影響を及ぼし、事前審査からの再申し込みや最悪の場合は本審査で否決される可能性があります。事前審査通過後も本審査までの期間は、できるだけ現状を維持することが望ましいでしょう。

連帯保証人が必要な場合は承諾を得ているか

通常、住宅ローンでは保証会社を利用するため連帯保証人は不要です。ただし、以下のようなケースでは必要となることがあります。

  • ペアローンを組む場合
  • 収入合算で住宅ローンを組む場合
  • 保証会社だけでは担保不十分と判断された場合

連帯保証人が必要なケースでは、年齢や収入などの資格要件を満たす人を事前に確保しておく必要があります。一般的には配偶者または親に依頼しますが、住宅ローンのような高額債務の連帯保証人はリスクが大きいため、誰に頼むのかは慎重かつ総合的に判断しましょう。連帯保証人に迷惑をかけることがないよう、住宅ローンの確実な返済が求められます。

住宅ローン審査通過後の流れで気を付けるべきこと

住宅ローンの審査に通過した後も、すぐに融資が実行されるわけではありません。住宅ローン審査承認後には主に以下の2点に注意しましょう。

  • 融資実行までに条件変更がないようにする
  • 返済に向けた準備を整える

融資実行までの期間に審査時と状況が変わると、再審査や審査結果無効で融資実行不可となる可能性があります。以下では、気を付けるべき2点の詳細を解説します。

融資実行までに条件変更がないようにする

審査通過後から融資実行までの期間は、現状維持が重要です。とくに、転職や退職などで勤務先が変わることは、複数の審査項目に影響を及ぼします。年収が変わらない関連会社への出向など一部除外されるケースはありますが、転職すれば勤続年数がリセットされるため、本審査通過後でも再審査の結果によっては融資実行不可となる可能性があります。勤務先の変更は極力避けましょう。

また、この期間中は新たな借り入れを控えることも重要です。借り入れやキャッシング枠付きクレジットカードの新規申し込みは債務とみなされ、返済負担率の審査結果が変わる原因になります。カードローンや自動車ローンといった新規のローン契約はもちろん、スマホ購入代金の分割払いも対象です。

個人信用情報に影響がある延滞があれば、融資実行不可とされ再審査も通過できない可能性が高まります。融資実行前は審査に悪影響を及ぼさないように注意しましょう。

返済に向けた準備を整える

住宅ローンの返済は長期間にわたります。毎月の返済スケジュールをしっかりと確認し、返済遅れがないように家計状況を把握することが大切です。返済口座には必要な金額を確実に入金し、引き落とし日に向けて十分な資金を確保しておく必要があります。また、返済予定表はしっかりと保管し、定期的に返済状況をチェックするようにしましょう。

返済が遅延してしまうと遅延損害金が発生し、住宅ローンを滞納し続ければ最終的には競売にかけられマイホームを失ってしまいます。信用情報機関に延滞・遅延等の記録が残ってしまう点も問題で、それにより将来的な契約場面では記録が残る5年以上もの間、悪影響を及ぼす可能性があります。住宅ローンの返済が開始された後も、計画的な返済管理を心がけましょう。

まとめ

住宅ローン審査は、事前審査と本審査の2段階で行われ、それぞれの段階で適切な準備と対応が必要です。審査を円滑に進めるためには、事前に返済能力や借入状況、頭金の確保などをしっかりと確認しておくようにしましょう。

審査通過後も油断は禁物です。融資実行までの期間は勤務先や借入状況を変更しないよう注意を払い、返済に向けた準備も計画的に進めることが重要です。

ほかにも、住宅ローンの借り入れに向けて、新規のローンやクレジットカードの利用を日ごろから控えめにするなど、審査を通りやすくする工夫も忘れずに行いましょう。多面的に住宅ローン審査の対策をすることで、家計にゆとりを持ちながらマイホーム購入の目標に近づきやすくなります。

  • 2025年1月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

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