人生の大きな買い物の1つ。大きな視野で見極めて

マイホーム購入費の総額

3,600万 〜 5,600万円程度

人生最大の買い物といえば、やはりマイホーム。1980年代頃までは、土地の値段や物価が上がっていたため、とにかく若いうちにローンを組んで、マイホームを買うという考え方が一般的でした。土地の値段は上がり、物価も上がっていたからです。自分の家を建てることが、人生の目標の1つとして語られることが多かったようです。

近年、こうした風潮は変わりつつあります。給与は以前ほど上がっていませんし、人口減少によって、住宅の供給が需要を上回ることが予想されています。すでに、空き家が問題となっている地域もありますね。一方、東京2020オリンピックを控え、ホテルとの用地取得競争や建築費の高騰などの影響を受け、首都圏の新築マンション価格は高止まりが続いています。

マイホームの購入を考えている人は、目先だけでなく将来のライフプランやマネープランを見すえて、慎重に選択をしていきたいものです。今後は、新築物件だけでなく、中古住宅もさらに有力な選択肢の1つになっていきそうです。政府も、中古住宅の流通を増やすため、物件にIDをつけて情報開示する仕組みを2019年度から実験的にはじめる予定です。

そこで、全国の住宅の平均価格をもとに、「新築マンション」「新築分譲戸建て」に加え、「中古マンンション(リフォーム含む)」を購入した場合のシミュレーションを行いました。

住宅ローン金利は地を這っている状態が続いていますし、消費増税を控え、マイホームの購入を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

●住宅購入費のシミュレーション

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新築マンション
(平均4,423万円)
新築 分譲戸建て
(平均3,810万円)
中古マンション
(平均2,656万円)
頭金 500万円 500万円 500万円
利息を含む
返済額
4,875万円(毎月返済額13.6万円) 4,113万円(毎月返済額11.5万円) 2,679万円(毎月返済額7.5万円)
リフォーム
資金
227万円※2
購入時にかかる諸費用※1 221.15万円 304.8万円 212.48万円
合計 5,596.15万円 4,917.8万円 3,618.48万円
  • 住宅購入費のシミュレーションは以下の資料を元に、頭金は500万円、住宅ローンは30年間かけて元利均等返済、金利は全期間固定の1.5%で計算。
  • ・国交省住宅局 「平成28年度 住宅市場動向調査 報告書
  • ※1新築マンションは物件価格の5%、新築分譲戸建て・中古マンションは物件価格の8%と仮定して計算。
  • ※2戸建住宅も含むリフォーム平均資金。 国交省住宅局 「平成28年度 住宅市場動向調査 報告書」より

住宅ローン減税を活用しながら、将来を見すえたマネープランを

シミュレーションからも分かるように、通常、マイホームを購入する際には物件価格以外にもさまざまな費用がかかります。

不動産購入取得に関わる費用(印紙税、不動産取得税、固定資産税、登記費用など)、住宅ローンに関わる費用(事務手数料、ローン保証料、団体信用生命保険料、火災保険料など)が代表的です。さらには引越し代金や家具・家電購入費など、さまざまな初期費用が必要になります。
また、今回のシミュレーションには入っていませんが、手に入れた後も毎年の固定資産税、火災保険料、マンションの場合は管理費・修繕積立金、戸建の場合は建物が古くなれば修繕費...なども必要になります。

これらを考慮すると、住宅ローンの返済額・返済期間には余裕を持ちたいところです。住宅ローンの限度額いっぱいで考えるのではなく、毎月返済できる金額から逆算して物件を探すのも手ですね。現在支払っている家賃が1つの目安になります。

住宅ローンを組む際には、頭金をできるだけ多く用意した方が総支払額を抑えることができます。また、どの金利タイプを選ぶかは悩ましいところですよね。金利タイプには、市場の金利に合わせて変動する可能性のある「変動金利型」、最初の数年は金利を抑えられる「固定金利特約型」、借入期間中の金利が一定の「超長期固定金利型」といった大きく3タイプに分かれ、それぞれにメリットとデメリットがあります。

●各金利タイプのメリット・デメリット

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金利タイプ 概要 メリット デメリット おすすめの方
変動金利型 4月1日と10月1日の年に2回見直し 返済中に金利水準が下がると、返済額も減少 借入時に将来の返済額が確定しない。返済中に金利水準が上がると返済額も増加 金利の動向をタイムリーに活かしたい方
固定金利特約型 2、3、5、10年など、一定期間だけ金利を固定 一定期間の金利が確定 借入時に固定金利特約期間終了後の返済額が確定できない 一定期間、安定した返済プランを立てながら、将来の金利動向を見きわめたい方
超長期固定金利型(全期間固定金利型) 完済まで金利は一定で変更なし 借入時に最終日までの返済額を確定 変動金利型に比べ、一般的に金利が高い 最後まで安定した返済プランを立てたい方

また、異なる金利タイプを組み合わせることで、メリットをバランスよく取り入れるミックスプランなども選択可能です。自分たちの考え方やマネープランに合ったものを選びましょう。

そして、ローンを組んだら、必ず活用したいのが「住宅ローン減税」です。住宅ローン減税は、年末の借入残高(上限4,000万円)の1%に相当する額を、所得税などから差し引ける制度。10年間で合計最大400万円の税額控除を受けることができます。

当初は2019年6月末までの予定でしたが、2019年10月の消費増税にあたり、1∼5年間程度延長される見込みです(2018年11月現在審議中)。会社員の場合は、初年度のみ自分で確定申告する必要がありますのでご注意ください(2年目以降は年末調整で行います)。

そのほかにも、収入に応じて10∼30万円の給付が受けられる「すまい給付金」という支援制度もあります。2014年の消費税引き上げ分を助成するために設けられた制度で、2021年12月まで実施される予定です。ただし、年間の課税所得が510万円以下の人のみが対象になります。消費税が10%になると、給付金も増額される予定です。入居後に「すまい給付金事務局」に申請する必要がありますので、お忘れなく。(「すまいの給付金」のウェブサイト)。

新築か中古か、マンションか戸建か。さらには、住宅ローンの金利タイプはどれを選ぶか。マイホーム購入に「これだ」という正解はありません。家族構成、働き方、考え方などによって、その答えは異なるでしょう。自分たち家族の今の暮らし、さらには将来のライフスタイルに合う選択肢を、ゆっくり考えてみてください。

  • 2018年11月現在の税制です。今後の税制改正にともない、変更されることもありますのでご留意ください。税金に関しては専門家にご相談ください。

ファイナンシャルライター 瀧 健

『PRESIDENT Online』などの経済系Webメディアでも多数の執筆協力経験をもつ。ライフプランや資産運用の提案が得意。自らも株式・債券・投資信託などの運用を行っている。社会保障にも詳しい。

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