<プランA> 持家を売却、23区内のコンパクトなマンションへ住み替え

タワーマンションの窓からの景色

夢の金額

持ち出し費用:約5万円〜1,500万円

  • 不動産価格が比較的高額になる都内や首都圏で住み替えた場合の目安(木造50坪の戸建を解体/土地は売却/引っ越しオフシーズンに200km以内の引越し)

国土交通省「平成30年度住宅市場動向調査報告書 ※1」によると、住宅を購入した人のうち約16%が「2回以上住宅を取得した人」、つまり「住み替え」経験者でした。

住み替えた人の平均年齢は、おおむね50歳以上。「子どもの独立などで家族構成が変化した」「退職して通勤の必要がなくなった」「住宅が古くなった」などをきっかけに、老後を見据えて住み替えている人が多いことが予想されます。

また、「平成25年度住宅市場動向調査報告書 ※2」によると、シニア世代が住宅や住環境で重視することのトップは、「買い物や医療・福祉・文化施設などの利便性」でした。

そこで、郊外の戸建から、利便性が高い都市部のコンパクトマンションへ住み替えた場合のシミュレーションを行いました。

「コンパクトマンション」とは、住戸専有面積が30u以上50u未満で、ワンルームマンションとファミリータイプマンションの中間に位置する物件のこと。1〜2人暮らしに適しており、退職を迎えた人や子どものいない共働き世帯に需要があります。

【シミュレーション@】
都下の戸建て(木造/50坪)を解体し、23区内のコンパクトマンションヘ住み替えた場合

支出

マンション価格 約4,600万円※3
家の解体費用 約100万円〜200万円
引越し費用 約10万円

収入

土地売却 約3,300万円

合計(持ち出し費用):約1,410万円〜1,510万円

【シミュレーションA】
都下の戸建て(木造/50坪)を解体し、千葉県のコンパクトマンションヘ住み替えた場合

支出

マンション価格 約3,194万円※3
家の解体費用 約100万円〜200万円
引越し費用 約10万円

収入

土地売却 約3,300万円

合計(持ち出し費用):約4〜104万円

築年数の古い戸建を売却する場合、建物部分に資産価値はなく、土地代のみの取引となるケースがほとんどです。坪単価の高い23区内の新築コンパクトマンションへ住み替える場合、持ち出しの費用が発生する可能性が高いでしょう。住み替えの資金を見越して予め資産形成しておけば、老後の拠点の選択肢が広がりそうですね。

一方、都内と比べて坪単価の低い千葉県のコンパクトマンションへ住み替える場合は、持ち出し金額は少なくなりそうです。

プランAでは、都下の土地がある程度の高値で売却できた場合を想定しているので、土地の売却価格が低ければ持ち出し費用は上がります。退職後は収入が減ることを考えると、できるだけ持ち出しの費用は少なくしたいところです。

また、「シニア世代の住まいに関する意識調査」(三井不動産リアルティ株式会社・2013年)によると、シニアライフに向けて住み替えた人の持ち出し平均費用は約2,500万円、中古マンションへの住み替えでは平均約1,600万円だそうです(首都圏、関西圏、中部圏での調査)。

現在の持ち家や新居の種類や立地によって持ち出し費用は大きく変わります。実際に住み替えを検討する場合は、ご自身のケースに合わせてシミュレーションすることが大切です。

<プランB> 憧れの土地へ!海の見える地方都市の戸建てに住み替え

海が見える街の景色

夢の金額

持ち出し費用:0円(約450万円の黒字)

  • 都内の3LDKのマンションを約3,500万円で売却し、神奈川県西部の2LDKの中古戸建てに住み替えた場合の目安(都内の3LDKのマンションを売却/引っ越しオフシーズンに200km以内の引越し)

老後は都会を離れて、のんびり暮らしたい人もいるのではないでしょうか。退職後は、現役時代のように勤務先に縛られることなく、自由に住む場所を選ぶことができます。

ある住宅情報サイトによると、「定年後に住みたい街(首都圏)」では、ランキング(首都圏版)では、1位が鎌倉、2位が横浜でした。交通の便や日常の買い物も便利、なおかつ自然豊かなことが人気の理由です。

そこで、都内のマンションから、海のある郊外の戸建に住み替える費用をシミュレーションしました。

【シミュレーション】
都内の3LDKのマンションから、神奈川県西部の地方都市の2LDKの中古戸建てに住み替えた場合

支出

戸建価格 約3,000万円
引越し費用 約10万円

収入

マンション売却 約3,475万円※4

合計(持ち出し費用):0円(約450万円の黒字)

  • 2019年8月に調査した大手不動産情報サイトの価格を参考にしたシミュレーションです。実際の価格とは異なる場合があります。
  • ※4仲介手数料を差し引いた価格

2019年現在、都内の中古マンションは需要があり、資産価値が大きく下落している物件は少ないでしょう。物件によって異なりますが、マンションを売却した資金で、郊外・地方都市の戸建を購入できるケースも多そうです。

定年は、住み替えタイミングの1つ。住み替え後のことも見据えて、地に足に付いた計画を

老後を見据えて、定年前後に住み替えを検討する場合のポイントをいくつかご紹介します。

・住む場所選びは慎重に

日本の人口は減少傾向にあるため、人口の少ない地域では、将来的に交通網などのインフラが保てなくなる可能性があります。郊外に移住する場合は、駅や病院などの施設が近くにあるエリアを選ぶ、という視点も大切でしょう。

また、国土地理院のサイトで「全国の地方公共団体のハザードマップ」が公開されています。これは、洪水や土砂災害などの自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもの。もしものときを考えて、自然災害の危険が予想される箇所は避けておくと無難です。

・買うより先に「売り」

住み替える際は、まず自宅を納得のできる金額で売却することを優先させましょう。先に新居を購入してしまうと、入居までに自宅を売却する必要があります。売り急いだ結果、安値で買いたたかれてしまう可能性も少なくありません。

・売却損が出そうなら退職前に

自宅の売却価格が取得時の価格を下回る、いわゆる「売却損」が発生した場合、損失分を最長4年間給与所得などから差し引くことができます(諸条件あり)。所得税や住民税が安くなるため、売却損が発生しそうな場合は、退職前に売却しておくと税制上有利になります。

・できるだけ赤字は出さない

退職して収入が減ることを考えると、住み替えの費用はできるだけ少なく抑えたいところ。自宅を売却した金額内での住み替えが理想的です。退職金はあくまで老後の生活費として考えてください。

また、先述しましたが、現役時代から住み替えの資金を準備しておけば選択肢は広がり、より理想に近い住み替えができるかもしれません。現役時代から資産運用も視野に入れて、計画的に資金を準備しておきましょう。

  • 2019年10月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

ファイナンシャルライター 瀧 健

『PRESIDENT Online』などの経済系Webメディアでも多数の執筆協力経験をもつ。ライフプランや資産運用の提案が得意。自らも株式・債券・投資信託などの運用を行っている。社会保障にも詳しい。

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