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iDeCo(イデコ)でおすすめの商品・金融機関選びのポイント! 投資先と手数料を確認
2022.12.14 iDeCoの疑問
iDeCoを活用することで、老後の生活資金を効率的に準備できます。iDeCoの特徴を3つ紹介します。
iDeCoは一般的に毎月一定額を積み立てて、あらかじめ用意されている金融商品の中から商品を選び、老後に向けて資産形成をする私的年金制度です。運用方法によっては、積み立てた元本から大きく増やせる可能性がありますが、元本割れする場合もあります。また、元本確保型の商品もあります。
積み立てて運用しているお金は、原則60歳まで引き出しができません。
iDeCoは原則60歳以降に、運用したお金を受け取れます。受取方法としては、一括受取の他、年金形式があり、公的年金に上乗せするかたちで老後の生活資金を手にすることができます。
iDeCoは3つの税制優遇が用意されています。1つ目は、掛金が全額所得控除になることです。会社員や公務員の方は年末調整で、自営業やフリーランスの方は確定申告をすることで税金が軽減されます。
2つ目は、運用期間中に増えた分(運用益)に税金がかからない、運用益非課税のメリットです。さらに3つ目として受け取り時のメリットがあります。iDeCoは原則60歳以降、受け取り可能ですが、年金として分割して受け取る場合、一括で受け取る場合、いずれの場合も税制優遇があります。
iDeCoに加入すると年末調整が必要ってどういうこと?
iDeCoの掛金を年末調整で申告すると、所得税や住民税が安くなります!
まずはiDeCoで支払った掛金で、所得税や住民税が安くなる仕組みについて解説します。
iDeCoの掛金は、所得控除の一種である「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。支払った掛金と同じ金額だけ、課税所得が減り、そのぶん所得税や住民税が安くなります。
所得税や住民税は、以下の計算式で求める「課税所得」に所定の税率をかけて計算します。
「課税所得 = 給与所得(給与収入 - 給与所得控除) - 所得控除」 |
所得控除の額は、配偶者・扶養家族の有無や生命保険の加入状況などによって変わります。つまり利用できる所得控除が多いほど課税所得が減り、所得税や住民税が安くなります。
たとえば、毎月23,000円のiDeCoの掛金として支払った場合は、年間で276,000円(23,000円×12ヵ月)が課税所得からさらに差し引かれます。
ポイントは、住民税の負担も軽減できるところです。iDeCoの掛金を拠出した年の所得税だけでなく、次年度の住民税も軽減されます。
それではここで、iDeCoに加入すると実際にどれくらいの節税効果があるのか確認していきましょう。以下の条件で試算します。
年収500万円の会社員がiDeCoに加入し、毎月23,000円掛金を支払ったときの節税効果は以下のとおりです。
下の表は横にスクロールできます
iDeCoなし | iDeCoあり | 差額(節税額) | |
---|---|---|---|
所得税 | 139,400円 | 111,800円 | 27,600円 |
住民税額 | 236,900円 | 209,300円 | 27,600円 |
合計 | 376,300円 | 321,100円 | 55,200円 |
結果は上の表のようになりました。モデルケースは会社員の方なので、12月の給与で27,600円分の所得税が戻り、翌年の住民税の額が27,600円減額されます。
所得税と住民税あわせて年間で約55,000円の税負担が減ります。単純計算ですが10年間でおよそ55万円節税でき、とても節税効果が高いと言えます。
自営業の方は、会社員よりも毎月の掛金の上限額が高いため、節税効果がより高くなりやすいです。たとえば課税所得が500万円の自営業の方が、毎月68,000円の掛金を支払ったとすると、所得税と住民税あわせて年間で約245,000円、10年間で約245万円節税できる計算になります。
ただしiDeCoに加入した際の節税効果は、個人の年収だけでなく配偶者・扶養家族の人数、生命保険の加入状況など、さまざまな要因で変化します。たとえば住宅ローン控除が使える方であれば、それだけで所得税が全額戻ってくる場合もあります。このように、iDeCoに加入しても思うように節税効果が得られない場合もあるため、注意しましょう。節税効果を正確に確認した場合は、税務署に相談してみましょう。
▼あなたの節税額を調べてみましょう
iDeCo・つみたてNISAシミュレーション: 三井住友銀行
会社員や公務員の方が、iDeCoの所得控除を受けるには、年末調整で申告をしなければなりません。
年末調整とは、従業員の所得税を精算する制度です。会社員や公務員は、本人の代わりに勤務先が所得税を国に納めます。そのため勤務先は、従業員の給料から毎月所得税を源泉徴収しています。
源泉徴収した所得税の金額は、年始時点での従業員の状況を元にした概算金額で、実際の所得税は、その人の年間の収入によって変わります。年末になるまで年収は確定しないため、源泉徴収した所得税の金額と実際の所得税の金額が一致しないことがあります。
また勤務先は、従業員が加入している生命保険や、1年の途中で起こった扶養家族の変更までは把握できません。正しい所得控除の金額を計算するために、年末時点での状況を従業員に申告してもらう必要があるのです。
そこで、年末調整を行って従業員に状況を報告してもらい、正しい所得税の金額を再計算します。所得税を多めに源泉徴収していた場合は、従業員に返します。
iDeCoへの加入状況や支払っている掛金の額などについても、従業員が申告しなければ勤務先は把握できないため年末調整時に申告をする必要があるのです。
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年末調整に必要な書類はどうやって揃えるの?
毎年10月〜11月に国民年金基金連合会から自動的に送られてきますよ
年末調整には「面倒」や「難しい」というイメージがあるかもしれませんが、iDeCoに関する申告は、とても簡単で3ステップでできます。
iDeCoの所得控除を利用するためには、年末調整時に以下の手順で申告をしましょう。
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、毎年10月から11月ごろに、国民年金基金連合会から送付されます。必ず送られてきた原本を添付してください。
小規模企業共済等掛金払込証明書は、iDeCoで年間いくら積み立てたのか、いくら控除を受けられるのかを証明する書類です。生命保険料控除を受けるときの控除証明書のような書類だと考えると分かりやすいでしょう。
「給与所得者の保険料控除申告書」を記入するとき、書類右下の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」と書かれている部分にiDeCoで積み立てた金額(年額)を記入します。
なお、「給与所得者の保険料控除申告書」は、年末調整の時期になると、勤務先の担当部署から配布されます。
「給与所得者の保険料控除申告書」に「小規模共済等掛金払込証明書」を添付し、期限内に担当部署に提出します。
年末調整で申告を行い勤務先での処理が無事完了すると、12月の給与支払時に余分に支払っていた所得税が戻り、翌年度の住民税が安くなります。
そして翌年1月ごろに、勤務先から支払われた給与の合計額と、勤務先が代わりに納めた所得税の金額が記載された「源泉徴収票」を受け取って、年末調整が完了します。
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、手紙やハガキのような形をしているため、誤って捨てないようにしましょう。年末調整の際にiDeCoの所得控除を申告するには、原則として原本を提出しなければなりません。
原本を紛失した場合は再発行の手続きが必要です。再発行には時間がかかるため、届いたらなくさずに手元に保管しておきましょう。
また、年末調整の方法は勤務先によって異なります。企業によっては、専用の人事システムに入力して年末調整を行い、「給与所得者の保険料控除申告書」を記入しなくても良いところもあります。
そして年末調整の期限は、勤務先によって異なるためあらかじめ確認しておきましょう。場合によっては申告期間が1週間しかないこともあります。
年に1度しかしない年末調整は、慣れない作業で思うように進みません。事前に期限や手順を確認しておくことで「仕事が忙しくて気付いたら期限が過ぎていた」という事態を避けられます。
年末調整に間に合わなかった…
確定申告をすれば、大丈夫です!
「気付いたら年末調整の期限が過ぎていた!」という方は、確定申告をしましょう。確定申告とは、源泉徴収や年末調整がない自営業やフリーランスの方が、1年間の収入と所得税の金額を計算して、所得税を国に納める手続きのことです。
確定申告は管轄の税務署への直接提出や郵送の他、e-Taxによるオンライン申請も可能です。税務署に直接訪問して提出する時間がない方は、郵送やe-Taxを活用すると良いでしょう。
会社員や公務員の方は、年末調整で申告し忘れた控除がある場合や、医療費控除のような年末調整では申告できない所得控除を受ける場合、確定申告を行うことができます。
給与収入のみの方が確定申告でiDeCoの所得控除を申告するためには、「確定申告書A」に必要事項を記入、そして「小規模企業共済等掛金払込証明書」の元本と、勤務先からもらう「源泉徴収票」を添付して税務署に提出します。
「確定申告書A」は第1表と第2表に分かれており、iDeCoについて記入する項目は以下の通りです。
その他の項目は、勤務先から配布される「源泉徴収票」を元に記入していきましょう。
自営業の方や2箇所以上から収入がある会社員の方がiDeCoの所得控除を申告するためには、「確定申告書B」を使用します。
自営業やフリーランスの方の場合、控除を受けるために必要な工程は以下の3つです。
確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロードして手書きで作成できますが、国税庁ホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成すると、金額を自動で計算してくれるため便利です。
確定申告の期間は、例年2月16日から3月15日前後です。税金が戻ってくる場合は、4月から5月ごろに指定の口座に振り込まれます。
iDeCoには、運用中や積み立てたお金を受け取るときにも税制上のメリットがあります。運用商品の選定をきちんと行うことで、老後の資金を効率よく貯められる可能性があります。
ただし、いくら税制上のメリットがあるからとはいえ、無理は禁物です。毎月の掛金は今の生活を圧迫しない範囲にとどめましょう。
また、正しく税制優遇を受けるためには手続きが必要です。
iDeCoは、掛金を支払って年末調整を行うことで、所得税や住民税が安くなります。
もし年末調整での申告を忘れてしまった場合でも、確定申告をすれば大丈夫です。
iDeCoの税制上のメリットや手続き方法を理解した上で、どれだけの掛金を支払っていけるのかを家族と相談して、iDeCoで老後の資金作りを始めてみてはいかがでしょうか。
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個人型確定拠出年金「iDeCo」:三井住友銀行
▼三井住友銀行でのiDeCoお申込にあたっての注意事項
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金子 賢司
個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。