前の記事
iDeCo、NISA、つみたてNISA、どれを始めるとお得? 制度の違いや併用についても解説
2022.12.21 iDeCoの疑問
iDeCoを利用する公務員が増えているのはなぜ?
公務員の年金が退職金が減っているからです。
公務員のiDeCo加入者は年々増加傾向にあります。
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のことで、老後の年金を自分自身で運用して積み立てていく私的年金制度です。
iDeCoは2001年からはじまった制度ですが、公務員が加入できるようになったのは、2017年1月からです。それから3年も経たない2019年6月には、公務員のiDeCo利用者は約296,000人に、2020年10月には約384,000人になりました。さらに、2022年9月には約564,000人と増加しています。
公務員がiDeCoに加入できるようになり、利用者が増え続けているのはどうしてなのでしょうか。その背景には、公務員の「年金制度の改定」と、「退職金の減額」が挙げられます。
公務員の年金制度はもともと「共済年金」と呼ばれるものでしたが、2015年10月の改正で共済年金はなくなり、会社員と同じ厚生年金へと一元化されています。
年金制度が変わった理由は、公務員と民間企業で働く会社員との格差をなくすためです。共済年金には「職域加算」という上乗せ部分の年金があるだけでなく、保険料率も厚生年金より低く設定されており、公務員の方が優遇されていました。
そこで、共済年金を厚生年金に一元化して公務員が支払う保険料率を上げるだけでなく、職域加算を廃止し「年金払い退職給付」を新しく導入することとなりました。年金払い退職給付は、職域加算よりも支給額が1割ほど下がるため、老後の年金額が減ってしまったのです。
公務員と会社員の格差をなくす動きは年金だけにとどまらず、退職金額も年々低下しています。以下は、地方公務員と国家公務員の定年退職金の平均額を年度別にまとめたものです。
2016年と2020年を比較すると、地方公務員で約87万円、国家公務員で約39万円も減っていることがわかりますね。ただ、国家公務員については、2016年と比較した際には減少していますが、2019年と比較した2020年の退職金は上昇傾向にあるようです。
退職金は、会社員も減少傾向です。公務員と会社員の格差をなくす動きが今後も続くのであれば、公務員の退職金額はさらに低下する可能性もあります。
「公務員であれば老後も安泰」という時代ではなくなっているため、iDeCoに加入して老後資金を自分で積み立てる公務員が増えているのです。
iDeCoの特徴は、加入が任意で、掛金の拠出や運用を自身で行えることです。公務員の場合、拠出限度額は月12,000円で、5,000円∼12,000円の間ならば1,000円単位で自由に拠出額を選択できます。
運用した掛金は、原則60歳まで引き出せず、60歳以降は一時金または老齢給付金として受給できる仕組みです。資産運用により得られた利益は非課税のため、公的年金以外に老後資金を積み立てたい人に向いています。
▼iDeCoの基本をもっと知りたい方へ
iDeCo(イデコ)って何? 〜基本の運用方法をイラストで理解しよう〜
▼さっそくiDeCoをはじめるなら三井住友銀行
iDeCoのお申込みはこちらから
参考:iDeCoの概要
公務員がiDeCoに加入するメリット・デメリットはなに?
メリットは税金の優遇を受けながら老後に備えられること、デメリットは掛金の上限額が低いことです。
ここでは、公務員がiDeCoに加入するメリット・デメリットをくわしく解説していきます。
公務員がiDeCoに加入すると、以下の3つの税金優遇を受けて手元に残るお金を増やし、減ってしまった年金や退職金をカバーできます。
上記のメリットをもう少し詳しくみていきましょう。
iDeCoの掛金は、全額所得控除となります。例えば、公務員が毎月12,000円ずつiDeCoで積み立てた場合、年間積立額の144,000円が所得控除となる仕組みです。
所得控除額が増えると、結果的に所得税や住民税も減るため、毎月の負担が軽くなります。
iDeCoで運用して得られた利益は、全額非課税となります。
課税口座で運用して得た利益には、通常20.315%の税金(復興特別所得税を含む)がかかります。(2022年12月時点)
つまり、100万円の利益が出た場合、課税されると約80万円しか手元に残りません。しかし、iDeCoで運用した利益であれば非課税なので、100万円全額が手元に残ります。
ここまで、掛金は全額所得控除となり、運用中に増えた利益も非課税になると説明しました。では受け取るときはどのような仕組みになっているのかというと、実は受け取るときも控除を受けられます。
iDeCoは、年金として受け取る方法と、一時金として受け取る方法があります。年金として受給する場合は公的年金等控除、一時金として受給する場合は退職所得控除を受けられるため、課税口座で資産運用をするより課税される金額が少なくなるのがメリットです。
特に公務員は、一部の自治体を除き副業が禁止されており、収入を得る手段が限られているため、手元に残せるお金が増える節税効果のメリットは大きいと言えますね。
公務員がiDeCoに加入することにはメリットが多いものの、反対にデメリットもあります。デメリットを理解しておくことで、iDeCoをより活用しやすくなるでしょう。
公務員がiDeCoに加入する際のデメリットは、公務員は掛金の上限が低いことです。デメリットについて、詳しくみていきましょう。
公務員の場合、iDeCoの掛金は毎月12,000円(年間144,000円)※までです。自営業の方や会社員と比較して掛金の上限が低いのは、まだまだ退職金や年金などが恵まれていると考えられているからです。
掛金の上限が低いということは、他の職業の方に比べて、老後までに積み立てられる額や、所得控除による節税効果が少ないということです。しかし掛金の上限が低い公務員でも、節税効果が低いわけではないことを次で説明していきます。
また、原則60歳になるまで資産を引き出せないなどといったiDeCo全体のメリット・デメリットについては、こちらの記事でくわしく説明しています。
【関連記事】 iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットはなに? どんな人が得する?
iDeCoの具体的な節税効果は?
年収650円の方が毎月12,000円の掛金を支払うと、税金が34,370円戻ってきます!
公務員がiDeCoに加入した場合、具体的にどのくらいの節税効果があるのでしょうか。
年収650万円の地方公務員がiDeCoに加入した場合の節税効果を確認しましょう。
年収650万円の公務員がiDeCoに加入し、毎月12,000円掛金を支払ったときの節税効果は以下のとおりです。
iDeCOなし | iDeCOあり | 差額(節税額) | |
---|---|---|---|
所得税 | 243,640円 | 223,670円 | 19,970円 |
住民税額 | 335,570円 | 321,170円 | 14,400円 |
合計 | 579,210円 | 544,840円 | 34,370円 |
このように、1年で34,370円の節税効果が期待できます。5年で171,850円、10年で343,700円ですので、積み重ねると大きな金額になりますね。
ただしiDeCoの節税効果は、収入や家族の人数などの状況によって変わります。住宅ローン控除のような、所得税や住民税の額を大きく減額できる制度を使える方は、iDeCoに加入しても節税効果が得られない場合もあるため注意しましょう。
▼自分はiDeCoでいくら節税効果を得られるのか知りたい方へ
iDeCo・つみたてNISAシミュレーション: 三井住友銀行
公務員の方は、iDeCoの所得控除は年末調整で申告しましょう。年末調整とは、給与からあらかじめ天引きされた所得税を正しい金額に計算し直し、精算する手続きです。
年末調整は、以下の3ステップで簡単に終わります。
年末調整の時期は、毎年11月ごろです。職場によって申告期限が異なるため、事前に確認の上、余裕を持って申告しましょう。
年末調整の方法や仕組みについては、こちらの記事でくわしく説明しています。
【関連記事】 iDeCo(イデコ)は年末調整が必要? 控除を受けるといくら戻るのかを解説
iDeCoの金融機関や商品はどう選ぶ?
まずは金融機関を選び、次に商品を選びましょう。
公務員は掛金の上限が低いため、商品選びは特に重要です。まずは簡単に商品と金融機関の選び方のポイントをお伝えし、公務員のための具体的な商品選びについて解説します。
iDeCoを始めるときは、まず金融機関を選ぶのがおすすめです。
自分は手数料重視なのか、商品選びや金額設定などを適宜相談できることがいいのかを整理してみてください。iDeCoの仕組みは複雑な部分もあるため、特に投資初心者の方は、相談しやすい金融機関を選ぶと簡単に疑問点を解決でき、安心して始めやすいでしょう。
ネットや電話で素早く相談できるところも良いですし、最近は土日にも窓口で気軽に相談できる銀行も多くあります。
金融機関が決まったら、次に商品を選びましょう。
iDeCoでは、定期預金や保険といった元本確保型の商品だけでなく、投資信託のような元本変動型の商品を選べます。
投資信託は、投資家から集めたお金を、運用の専門家(プロ)が日本または海外の株式・債券等の投資先を複数選んで運用(分散投資)し、得た利益を投資家に配分する金融商品です。
もし投資信託で運用するのであれば、「信託報酬」という手数料を支払わなければなりません。信託報酬は、投資信託の管理・運営のために支払う手数料です。
「高い手数料を支払ってでもここに預けたい!」という希望がない限りは、できるだけ信託報酬が低い商品を探してみましょう。iDeCoの加入期間は、20年や30年など長期間にわたることが多く、手数料が高いと効率よく積み立てられないからです。
iDeCoでおすすめの金融機関や商品の選び方については、こちらの記事でくわしく説明しています。
【関連記事】 iDeCo(イデコ)でおすすめの金融機関・商品はどれ? 具体的な選び方を解説
iDeCoで老後資金を積極的に増やしたい場合は、投資信託を取り入れてみましょう。
一般的に、債券はローリスク・ローリターン、株式はハイリスク・ハイリターンと言われています。ただ投資信託の場合、株式型と言っても1つの企業でなく、プロが選んだ複数企業の株式に分散されており、さらに国も分散されていることが多く、その分リスクが分散されます。債券型は期待できる利回りが1%〜3%程度、株式型は2%〜10%を超えるものもあります。
積極的に運用するのであれば、5%以上の利回りが期待できる投資信託を選びたいところです。例えば毎月12,000円の掛金を30年間、利回り5%の投資信託で運用できたとすると、約982万円になり、運用益は約550万円です。
自分は「どれだけのリスクならストレスにならないか」「どれだけのリターンを狙いたいか」といった目安を立てて、商品を決めましょう。
そうは言っても、「なかなか自分では決められない」という方も多いでしょう。
金融機関によっては、商品が厳選されていたり、複数のコースが用意されている場合があります。
例えば三井住友銀行では、初心者でも選びやすい2つのコースを用意しています。
申し込みはWebで簡単に完結させることが可能ですので、この機会に検討してみてください。
公務員の方にとってiDeCoは、減少してしまった年金や退職金を補う有効な手段です。掛金は毎月12,000円※までですが、節税効果は高く、非課税で運用しながら老後資金を積み立てられます。
老後に十分なお金があると、豊かな生活を送ることができますね。
ただしiDeCoの掛金によって、現在の生活が圧迫されてしまっては本末転倒です。家族ともよく相談した上で、無理のない範囲ではじめてみてください。
大木 千夏(おおき ちなつ)
独立系FP、金融ライター。もともとは臨床検査技師として病院に勤務、その後フリーランスライターとして独立した。ライターとして活動するうち、金融業界に興味を持ちAFP取得後、独立して横浜に事務所開設。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP。
iDeCoの疑問
iDeCo(イデコ)の掛金、月々いくらまで? 上限額は職業(加入状況)で変わる! 掛金の平均や目安を解説
iDeCoの疑問
iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットはなに? 節税効果は? どんな人が得する? 個人型確定拠出年金の解説
iDeCoの疑問
iDeCo、NISA、つみたてNISA、どれを始めるとお得? 制度の違いや併用についても解説
iDeCoの疑問
iDeCo(イデコ)は途中で解約できない? 解約できる3ケースを解説! 減額か支払い停止は?
iDeCoの疑問
会社員のiDeCo(イデコ)活用法! 企業型DCの有無、加入条件や掛金の上限額、メリットは?
iDeCoの疑問
専業主婦(主夫)もiDeCo(イデコ)を始めるべき? メリット・デメリットお勧めの運用方法を解説!