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初心者のためのiDeCo(イデコ)の始め方〜かんたん解説〜
2023.3.1 iDeCoの疑問
iDeCoにはどんな節税効果があるの?
お金を積み立てたとき、運用で利益が出たとき、さらに受け取るときに税制上の優遇が適用されます。
まずはiDeCoの運用で得られる節税メリットを、時系列順におさらいしましょう。
iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、老後の生活資金を準備するための制度です。具体的には、自分で掛金を支払い、あらかじめ金融機関で用意されている商品の中から自分で選んで掛金を運用します。iDeCoで運用したお金は原則60歳以降、年金か一時金、あるいはその両方で受け取りが可能です。
iDeCoは掛金を拠出すると、原則60歳まで引き出しができないデメリットがある反面、老後の資産形成を後押しするために3つの節税メリットが用意されています。
iDeCoの節税メリットは、1.所得控除、2.運用益非課税、3.受け取り時のメリットの3つです。以下、詳しく解説していきます。
iDeCoでは月々5,000円から、1,000円単位で掛金を決め、積み立てていくことができますが、掛金の全額が所得控除の対象になります。
所得税や住民税は、課税される所得額に決まった税率を掛けて計算されます。そのため、所得額からiDeCoの掛金が控除されると、所得税と住民税の負担が減ります。
iDeCoは、運用の成果に応じて利益(運用益)が発生します。
定期預金や一般的な投資信託の場合、運用益は課税対象となり、20.315%の税金がかかります。そのため、利益が増えるほど税金の負担も大きくなります。
一方、iDeCoは運用によって得られた利益は非課税なので、税金の負担が重くなる心配はありません。
運用益はそのまま再投資されるので、税金の負担を抑えたまま、より効率的に積み立てていくことができます。
iDeCoは、60歳からそれまでの積立金を、年金または一時金として受け取ることができます。
受取時に適用される控除は受給方法によって異なり、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」がそれぞれ適用されます。
受け取り方 | 控除の種類 | 例 |
---|---|---|
年金として受け取る場合 | 公的年金等控除 | 60歳から年金を受け取る場合 →年間60万円まで非課税
|
一時金として受け取る場合 | 退職所得控除 | 勤続年数が30年の場合 →1,500万円まで非課税
|
年金として受け取る場合は、公的年金等控除が適応されます。公的年金等控除の計算方法は、受け取る方の年齢や、公的年金等の収入金額の合計額、それ以外の所得の合計金額などによって異なります。
公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合、公的年金等控除額は以下の通りです。
公的年金等の収入金額の合計額 | 割合 | 控除額 | |
---|---|---|---|
65歳未満 | 公的年金等の収入金額の合計額が60万円以下場合、所得税は0円 | ||
60万1円以上130万円未満 | 100% | 60万円 | |
130万円以上410万円未満 | 75% | 27万5,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 85% | 68万5,000円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 95% | 145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 100% | 195万5,000円 | |
65歳以上 | 公的年金等の収入金額の合計額が110万円以下場合、所得税は0円 | ||
110万1円以上330万円未満 | 100% | 110万円 | |
330万円以上410万円未満 | 75% | 27万5,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 85% | 68万5,000円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 95% | 145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 100% | 195万5,000円 |
公的年金等に係る雑所得を計算する場合の計算式は以下のようになります。
公的年金等に係る雑所得=公的年金等の収入金額の合計額×割合−控除額
例えば、公的年金等の収入金額合計が300万円の場合、65歳未満と65歳以上ではそれぞれ次のように「公的年金等に係る雑所得」が計算されます。
@ 65歳未満の場合
300万円×75%−27万5,000=197万5,000円
A 65歳以上の場合
300万円×100%−110万円=190万円
一方、一時金として受け取る場合は退職所得控除が適応されます。退職所得控除の計算式は以下の通りです。
勤続年数 | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
(80万円に満たない場合は80万円) | |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例えば、勤続年数15年と25年の場合、
それぞれ次のように「退職所得控除」が計算されます。
@勤続年数15年
40万円×15=600万円
A勤続年数25年
800万円+70万円×(25年-20年)=1150万円
iDeCoのメリット・デメリットについては、くわしくはこちらの記事で解説しています。
【関連記事】 iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットはなに? どんな人が得する?
▼あなたの節税効果はどれくらい?
iDeCo・つみたてNISAシミュレーション: 三井住友銀行
iDeCoは月5,000円以上で、1,000円単位なら、誰でもいくらでも掛金を増やせるわけではありません。iDeCoの掛金には上限があり、掛金の上限額は職業や、勤務先で導入されている企業年金制度によって異なります。
iDeCoの掛金上限は以下の通りです。※1
【iDeCoの掛金上限額】
職業 | 上限額 | |
公務員 | 月額1万2,000円 (年額14万4,000円) |
|
会社員 | 勤務先の確定給付企業年金に加入している | 月額1万2,000円 (年額14万4,000円) |
勤務先の企業型確定拠出年金のみ加入している | 月額2万円 (年額24万円) |
|
勤務先に企業年金がない | 月額2万3,000円 (年額27万6,000円) |
|
専業主婦(夫) | 月額2万3,000円 (年額27万6,000円) |
|
自営業 | 月額6万8,000円 (年額81万6,000円) |
iDeCoの節税効果はどの人も同じなの?
iDeCoの節税効果は職業によって異なります。
iDeCoで節税できる金額は、掛金による違いだけでなく、職業によっても差が出ます。
これは拠出できる上限額が職業によって異なるためです。
【関連記事】 iDeCo(イデコ)の掛金、月々いくら? 上限額は職業で変わる! 掛金の平均や目安を解説
以下では、会社員・公務員・自営業・専業主婦(主夫)の4つのモデルケースを使用して、iDeCoで節税できる金額をシミュレーションしてみましょう。
なお、当シミュレーションでは運用益を3%、積立金を一時金として受け取る場合を想定します。
@積立時の節税効果
60歳までの掛金に対する所得税・住民税の節税額
(所得税3,000円+住民税6,000円)×35年=31万5,000円
A運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間35年の運用益:1,586,409円
→(通常20.315%の税金がかかるので)節税額:32万2,279円
B受取時の節税効果(控除額)
積立金2,100,000円+運用益1,586,409円
=368万6,409円を全額非課税受取
【関連記事】 会社員のiDeCo(イデコ)活用法! 加入条件や上限額、メリットは?
@積立時の節税効果
(所得税7,200円+住民税1万4,400円)×30年=64万8,000円
A運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間30年の運用益:2,641,683円
→(通常20.315%の税金がかかるので)節税額:53万6,658円
B受取時の節税効果(控除額)
積立金4,320,000円+運用益2,641,683円
=6,961,683円を全額非課税受取
【関連記事】 公務員はiDeCo(イデコ)に加入すべき? 退職金のかわりになる?
@積立時の節税効果
(所得税13万8,000円+住民税6万円)×20年=396万円
A運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間20年の運用益:438万3,027円
→(通常20.315%の税金がかかるので)節税額:89万412円
B受取時の節税効果(控除額)
積立金12,000,000円+運用益4,383,027円
=16,383,027円を全額非課税受取
@積立時の節税効果
掛金に対する所得税・住民税の節税額:0円
(専業主婦・主夫は所得税・住民税がかからないため)
A運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間25年の運用益:積立金12,000,000円+運用益4,383,027円
→(通常20.315%の税金がかかるので)節税額:58万7,463円
B受取時の節税効果(控除額)
積立金60,000,000円+運用益2,891,772円
=8,891,772円を全額非課税受取
【関連記事】 主婦(主夫)もiDeCo(イデコ)を始めるべき? メリット・デメリットを解説!
▼自分の節税額を知りたい方へ
iDeCoの節税シミュレーション: 三井住友銀行
iDeCoに加入して掛金を拠出するだけでは節税効果は得られません。iDeCo加入者に国民年金基金から「小規模企業共済等掛金控除証明書」が届くので、お勤めの方の場合は、同書類と、必要事項を記入した給与所得者の保険料控除申告書を併せて、担当部署に提出します。
自営業の場合は、確定申告書に必要事項を記入し、小規模企業共済等掛金控除証明書を添付して確定申告をします。
お勤めの方の場合は、基本的に確定申告の必要はありませんが、iDeCoの加入時期が11月や12月の場合、勤務先で年末調整の手続きをする時期までに小規模企業共済等掛金控除証明書が手元に届かないことがあります。この場合、お勤めの方でも確定申告が必要です。
iDeCoを運用すると掛金が全額所得控除されるため、所得税や住民税が軽減される場合があります。また一般的に運用で利益がでると、利益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoは運用益に税金がかかりません。
さらにiDeCoは原則60歳以降、運用したお金を受ける時も、一時金・年金どちらの受け取り方でもそれぞれ税制優遇があります。
ただ、いくら節税できるかは年収や毎月の掛金などによって異なります。
掛金の上限額は職業によって異なるので、iDeCoでどのくらい節税できるか気になった方は、自分の職業や掛金、年収などから計算してみましょう。
iDeCoでどのくらいの節税につながるかは、こちらでシミュレーションが可能です。
▼自分の節税額はどれくらい?
メリットを確認!税軽減シミュレーション:三井住友銀行
なお、iDeCoによる節税効果を得るには年末調整を行う必要がありますので、会社員や公務員の方は忘れずに申請しましょう。
会社員や公務員の方の年末調整について、くわしくはこちらで説明していますので、気になった方はぜひご覧ください。
金子 賢司
個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。