確定拠出年金の「企業型」(企業型DC)とは?

どれみさん どれみさん

企業型の確定拠出年金ってどんなもの?

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企業が掛金を積み立て、従業員が運用する制度のことです。

掛金を拠出し、加入者自らが資産を運用して年金(運用益)を受け取る確定拠出年金には、「個人型」と「企業型」の2種類があります。

個人型確定拠出年金、通称「iDeCo」は、加入者自身がコツコツとお金を積み立て、60歳まで運用する制度のことです。

60歳以降に受け取る年金額は、運用商品の選択や掛金の配分によって異なる運用成果で決まる仕組みになっています(iDeCoは2022年10月に改正をし、最大65歳になるまで加入可能年齢と運用期間が延長されました)。

iDeCoについて、くわしくはこちらの記事で解説しているのでぜひご覧ください。

【関連記事】 iDeCo(イデコ)ってなに? 〜基本をイラストで理解しよう〜

一方、企業型確定拠出年金は、毎月一定の掛金を企業が積み立て、加入者(従業員)が運用する企業年金制度のことです。

iDeCoに対して「企業型DC」とも呼ばれており、掛金の積み立ては企業(事業主)が行いますが、運用の責任は加入者が負う仕組みになっています。

iDeCoと同様、最終的に受け取る年金(給付額)は運用成果によって増減するので、加入者は複数ある商品の中から自分に合ったものを選んだり、どの商品にどれだけ掛金を配分するかを決定したりして、資産を増やすための運用を行います。

積み立てられるのは60歳までで、原則60歳以降に運用してきた資産を一時金または年金として受け取ることができます。

くわしい内容については、次に掲載する比較表をもとに解説します。

「iDeCo」(イデコ)(個人型確定拠出年金)と「企業型DC」(企業型確定拠出年金)の違い

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個人型と企業型は何が違うの?

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最も大きな違いは、掛金を加入者が出すか、企業が出すか、という点です。

iDeCoと企業型DCは、どちらも老後の資産づくりに活用できる年金制度で、掛金の負担者や、拠出限度額、手数料などに違いがあります。iDeCoと企業型DCの違いや共通点について、わかりやすく以下の比較表にまとめました。

iDeCo 企業型DC
加入対象者 20歳〜60歳の方※1※3 企業型DCを導入している会社に勤める会社員
加入手続き 加入者が選んだ金融機関に自身で加入手続きを行う 会社に加入手続きを行う
掛金を出す人 加入者 会社※加入者が任意で掛金を上乗せすることも可能(マッチング拠出)
拠出限度額(月額) 自営業者 68,000円 27,500円〜55,000円
(他の企業年金等※2の加入状況によって変動)
会社員 12,000円〜23,000円
(他の企業年金等※2の加入状況によって変動)
公務員 12,000円
専業主婦(主夫) 23,000円
積立期間 最長60歳まで※3 会社の規定により最長65歳まで
掛金に対する節税効果 全額所得控除の対象 マッチング拠出の場合、加入者掛金は全額所得控除の対象
運用にかかる費用(手数料等) 個人が負担 会社が負担
運用方法 加入者が決める
掛金の支払方法 加入者の給与天引きまたは口座振替 マッチング拠出の場合、加入者の負担分が給与から天引き
年金の受取方法 一時金受取または年金受取から選択
  • 企業型確定拠出年金を導入している企業にお勤めの場合は、企業がマッチング拠出を選択していないことや、企業型確定拠出年金の事業主掛金とiDeCoの掛金が各月拠出限度額の範囲内である必要があります
    自営業者の場合、国民年金に加入しており、障害基礎年金の受給者を除いて全額免除・半額免除などを受けていないことが条件です
  • 「他の企業年金等」とは、確定給付企業年金や厚生年金基金を指します
  • 2022年の改正後は加入対象者及び積立期間の上限が65歳になるまでに変更されました

iDeCoと企業型DCの主な違いについて詳しく解説します。

掛け金を出す人

iDeCoは掛金を自分で出しますが、企業型DCは勤め先の会社が掛金を出す点です。ただし、給与の一部を「ライフプラン手当」などとし、ライフプラン手当の範囲内で掛金額を従業員が選べる「選択制」を採用している企業など、異なる方式を採用している場合もあります。

拠出限度額

企業型DCは勤務先が用意している企業年金への加入状況によって、拠出限度額が決まりますが、iDeCoは企業型DCの要件に加えて、職業も拠出限度額に影響します。なお、拠出限度額(月額)は、企業型DCが2万7,500円〜5万5,000円で、iDeCoが1万2,000円〜6万8,000円です。

手数料を負担する人

iDeCoは加入時に2,829円と、運用中に金融機関によって異なりますが、数百円程度の手数料がかかります。しかし、企業型DCはこれらの手数料は企業が負担をするため、従業員が支払う必要はありません。ただし、信託報酬は企業型DCでもかかります。

会社員のiDeCo掛金上限等ついてはこちらの記事でもくわしく解説しています。

【関連記事】 会社員のiDeCo(イデコ)活用法! 加入条件や上限額、メリットは?

企業型DCの場合、掛金の管理を自分で行う必要はありませんが、運用自体は加入者自身が行いますので、商品の選択や掛金の配分(どこにどのくらい積み立てるか)をしっかり考える必要があることを覚えておきましょう。

「iDeCo」と「企業型DC」は併用できる?

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企業型に加入していたら、個人型には加入できないの?

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2017年1月の法改正から、個人型と企業型の併用が可能になりました。

確定拠出年金がスタートした2001年当初は、iDeCoと企業型DCの併用は認められていませんでしたが、2017年1月の法改正により、一定の要件をクリアした場合はiDeCoと企業型DCを併用できるようになりました。

さらに、企業型DCとiDeCoが併用できるのは、規約でiDeCo加入に関する定めがある場合に限られていましたが、2022年10月以降から、会社が規約を定めなくても、企業型DCのある会社に勤務している従業員はiDeCoに加入できるようになりました。

「iDeCo」と企業型DCの併用条件

iDeCoと企業型DCの併用が認められる要件は以下の通りです。

iDeCoと企業型DCの併用が認められる要件
  1. 勤め先が企業型DCに加入していること
  2. マッチング拠出を利用していないこと

2022年10月以降は会社が規約を定めなくても、iDeCoに加入できるようになりましたが、iDeCoに加入できる金額は、月額5万5,000円から企業型DCの会社掛金を控除した金額が上限で、2万円を超える場合は2万円がiDeCo加入額の上限になります。

2024年12月からは月額5万5,000円から、企業型DCの会社掛金と確定給付型ごとの掛金相当額の合計を控除した金額が上限になります。(2万円を超える場合は、2万円が上限)。これによって会社の掛金額次第では、iDeCoの掛金上限が減少したり、掛金が拠出できなくなったりする可能性があります。

マッチング拠出とは

マッチング拠出とは、加入者が任意で会社が拠出する金額の範囲内で企業型DCの掛金に上乗せすることです。
マッチング拠出で加入者が上乗せした掛金は、全額所得控除の対象となり、所得税・住民税の支払いが軽減されます。

iDeCoと企業型DCの併用が認められる要件

上の図のように、加入者が拠出した掛金は全額所得控除されますので、節税しながら老後資金づくりに励めるところが特徴です。マッチング拠出を行う場合、法令で決められた限度額を超えて月々のお金を積み立てることができないこと、加入者の掛金は会社の掛金以下にしなければならない点は注意しましょう。

企業型DCで加入者が気を付けたいポイントは?

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企業型に加入するとき、気を付けたいポイントは?

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転職するとき、新しい勤め先に企業型がなければ、個人型に移換する必要があります。

企業型DCは掛金こそ企業が負担するものの、運用そのものは加入者に一任されます。

転職などで勤め先が変わった場合は、新しい勤め先の企業型DCに資産を持ち越すことが可能です。

ただ、転職先に企業型DCがない場合は、積み立てた資産を個人型に移換する必要があります。転職・退職の際のiDeCoの手続きに関しては、こちらの記事でくわしく解説しています。

【関連記事】 転職・退職時には、iDeCo(確定拠出年金)の手続きを忘れずに!

企業型DCからiDeCoに資産を移換するには、所定の手続きが必要ですので、転職先に企業型DCがあるかどうか事前にチェックしておきましょう。

なお、2022年10月の法改正によって、企業型DCとiDeCoの同時加入要件が緩和されました。法改正の詳細については、こちらの記事でくわしく解説しています。

【関連記事】 法改正で変わるiDeCo(イデコ)! 2022年から何がどう変わる?

企業型DC加入者のiDeCo加入までの流れ

企業型DC加入者がiDeCoに加入する場合の方法は、一般的なiDeCo加入方法と基本的には変わりはありません。Web経由の申込みであれば、必要情報を入力して必要書類を提出するだけです。

申込みに必要な書類は、「基礎年金番号(年金手帳にて確認)」「掛金の引き落とし口座番号(通帳またはキャッシュカード)」「本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)」の3つです。ただし会社員や共済組合員は事業主の証明書の提出も必要になりますので、書類を準備し勤務先に記入してもらいましょう。

また金融機関のコールセンターに連絡をして申込書類を取り寄せ、郵送で申込むことも可能です。必要書類はWebで申込む場合と同様です。

「iDeCo」と「企業型DC」はどちらが向いている?

自分にはiDeCoと企業型DCはどちらが向いているのか、気になる人もいるのではないでしょうか。iDeCoが向いている人、企業型DCが向いている人、それぞれの特徴を紹介します。

iDeCoが向いている人

iDeCoが向いているのは、勤務先が企業型DCを導入していない、もしくは導入していても、会社掛金が少ないという人です。

企業型DCが向いている人

勤務先が企業型DCを導入していれば、企業型DCは運用に関する手数料が会社負担になるため、企業型DCを選択した方が有利なケースが多いでしょう。

また、企業型DCを導入している企業は、従業員への投資教育が努力義務として課されているため、定期的に投資教育を受けることができます。企業型DCで投資信託を選びたいけれど投資初心者なので不安という人も企業型DCに向いています。

企業型DCでマッチング拠出を導入している場合でも、マッチング拠出は会社掛金を超える拠出額にできないため、そもそもの会社掛金が少ないとマッチング拠出の拠出額も大きくできません。

マッチング拠出の拠出額では、老後の資産形成に不安を感じる人は、iDeCoを選択すれば、会社掛金が少なくても月額2万円までiDeCoに拠出ができます。

まとめ

企業型DCは、iDeCoとは異なり、企業が掛金や運用の費用を負担するところが特徴です。

ただ、運用そのものはiDeCo同様、加入者自身が行いますので、運用商品の選択や掛金の配分は自分で工夫する必要があります。

また、企業型DCに加入していても、一定要件を満たしていればiDeCoとの併用が可能です。

現行ではiDeCoと企業型DCの併用には複数の制限がありますが、2022年10月1日施行の改正で、企業型DC加入者のiDeCo加入要件が緩和されたため、会社員でもiDeCoに加入しやすくなりました。

これまで企業型DCとの併用を諦めていた会社員の方でも、iDeCoに加入できる可能性が高くなりますので、2つの確定拠出年金の併用を再検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、2024年12月からも再度iDeCoの掛金拠出限度額変更が予定されていますので注意が必要です。その他、iDeCoに加入するメリットや注意点について、くわしくはこちらの記事で解説しています。

【関連記事】 iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットはなに? どんな人が得する?

  • この記事は2021年6月30日に公開した内容を2023年3月1日に更新して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

金子 賢司

個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。

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