介護ってどんなことをするの?

まずは、介護について親子でイメージすることからはじめてみましょう。親の介護が必要になったら、どんなサポートが必要になるのでしょうか。

健康状態や介護の認定区分(要支援1から要介護5)によっても異なりますが、主には食事の用意や、トイレ・入浴・歯磨きなどのサポート、衣服の着脱などを行うことになります。また、移動の介助や外出時の付き添いなども必要になります。

とはいえ、これらすべてを子どもが担うかというと、必ずしもそうではありません。介護を「誰が」「どこで」行うかによって大きく4つのケースに分かれます。

@施設に入居して介護サービスを受ける
A日帰りで施設に通所してサービスを受ける
Bホームヘルパーに自宅を訪問してもらってサービスを受ける
Cすべて家庭内で行う

今回、親の介護経験者に調査を行い、介護全体を10とした場合に自分の関与度がどの程度か聞きました。多くの場合は、自分の配偶者や兄弟姉妹と協力したり、介護士やケアマネージャーへお願いしたりして介護をされているのでしょう。

  • 介護サービスの計画書をつくってサポートする介護支援専門員。
「Q.1 介護全体を10とした場合、あなた自身の関与度は?(金銭的な負担は除く)」の回答のグラフ

自分たちの関与度がどれくらいになるかは、親子の住んでいる場所や家の周辺環境をもとに考えておくと良いでしょう。特に親と別居している場合、親の家の周辺にある施設を利用するのか、自分の家に親を呼び寄せるかという選択肢によってお互いに環境の変化を伴います。親を自分の住んでいる地へ呼び寄せるときは、住み慣れた環境から離れることに対する親の心理的な負担も考慮しておきたいところです。

また、兄弟姉妹や親族の協力を得られそうな場合、だれが中心になって介護をしていくかを話し合っておくことで、介護をスムーズに行うことができるでしょう。
どのような介護が良いか一概には言えませんが、介護にはさまざまな関わり方・選択肢があることを知っておくのが大事なポイントです。

では、いざ介護がはじまったらどのくらい続くものなのでしょうか。同調査で介護年数を聞いたところ、半数以上が3年未満でしたが、4年以上の長期間介護に携わる人も3割近くいることがわかりました。介護に必要な期間は、寿命と健康寿命の差だと言われています。医療の進歩とともに寿命が延びていることを考えると、介護期間が長引く可能性があることを念頭においておきましょう。

  • 心身ともに自立し、健康的に生活できる期間のこと。
「Q.2 あなたが介護に関わっている年数は?」の回答のグラフ
  • 断続的に介護をしている場合は、合計の年数を回答。

介護サービスや施設にかかる、費用はいくら?

介護サービスにかかるお金(自己負担額)は、要介護度が上がるほど増える傾向にあります。同調査では、5万円未満の人が3割超と多かったものの、10万円以上という人も3割程度いました。

「Q.3 介護サービスや介護施設にかかる月額費用は?」の回答のグラフ

介護費用として必要になる総額を「月額の介護費用×12ヵ月×介護年数」で試算してみましょう。たとえば月5万円の負担が10年続くと、総額で600万円必要になり、月の負担が10万円の場合は10年間で1,200万円にも! 介護費用が足りなくて入居している施設から退去しなくてはならない、というケースも実際にはあります。介護のためのお金は余裕をもって準備しておくことが大切です。

介護費用を誰が負担する?

介護費用は、介護を受ける親自身が負担するのが理想と言われています。子世代が親世代の介護費用を負担すると、今度は自身の介護費用が足りなくなる可能性があるからです。
しかし、同調査の結果では親の介護費用を子どもが負担しているケースが半数近くありました。

「Q.4 介護サービスや介護施設のお金は誰が払っている?」の回答のグラフ
  • 「あなた」にはあなたの配偶者を、「親」には親の配偶者を含む。
「Q.5 介護費用を毎月いくら負担している?」の回答のグラフ

自分を育ててくれた親に、より良い介護サービスを受けてもらいたいというのが、子どもが親の介護費用を負担する理由の1つでしょう。
ただ、実際には知識が少ないまま介護サービスを決めてしまい、親の資金だけでは足りなくなって子どもが介護費用を負担しているケースも多く見受けられます。「どんな介護を受けたいか」ではなく「どんな介護が受けられるか」という視点を持って、家族やケアマネージャーとよく話し合うことが重要です。

望む介護とかけられるお金について、家族で考えておこう

親の介護について話し合うときは、誰が中心になって・どこで・どのような介護を行うか、近所に協力し合える家族や親戚はいるのかなど、情報を共有することからはじめてみましょう。そうすると、在宅や通いで介護できるのか、施設の入居が必要なのかも見えてきます。また、介護が長引くことも念頭に費用が「いくらかかるか」ではなく「いくらかけられるか」という視点で話し合うことが重要です。

介護にかかるお金を子どもにも負担してもらうかどうかは、子どもの経済状況や年齢、親との関係性によっても変わります。子どもに経済的な余裕があればよいですが、子育てをしている世帯は教育費などにお金がかかりますし、晩婚化が進んだ現在では子育てをしながら自分の老後資金を貯めているという人も少なくありません。仮に毎月3万円の親の介護費用を負担しながら、教育費の準備、さらに自分たちの老後資金も準備するとなると、家計の負担はかなり大きくなることも覚えておきましょう。

介護にかかるお金の現実がみえてきたところで、次にどのような準備をしておくとよいのでしょうか。後編では、「介護にいくらかけられるか」を親子で話し合う際に知っておきたい、介護サービス以外にかかる費用や利用できる制度など、家族での話し合いをスムーズに進めるためのポイントを紹介します。

  • 2021年4月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
  • 【アンケート調査概要】
    • 調査時期期間:2020年11月20日(金)〜11月22日(日)
    • 調査方法:インターネット調査
    • 調査地域:全国
    • 有効回答数:1,030
井豪(たかいつよし)

井豪(たかいつよし)

ファイナンシャルプランナー/終活アドバイザー。終活の専門家集団である「NPO法人 ら・し・さ(終活アドバイザー協会)」の理事。スイス系金融機関に在籍後、1994年にファイナンシャルプランナーとして独立。マネープランから、年金・介護、葬儀など、老後に向けて中立的な立場からのアドバイスを行う。

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