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介護ってどんなことをするの? お金はどれくらいかかる? (後編)
2021.5.12 今から親子で話したい「介護とお金」
介護は、大きな費用と労力、長い時間がかかるものです。しっかりと臨むためにも、事前に話し合い、自分たち親子に合った「介護のカタチ」を具体化しておきたいところです。
介護は、在宅介護をベースに訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを組み合わせる方法、介護施設へ入居する方法の大きく2つに分かれます。「要支援」や「要介護」に認定されれば介護保険のサービスが利用できるようになりますので、事前に確認しておきましょう。
在宅介護をベースにするメリットは、住み慣れた家や地域社会の中で介護を受けることで、介護を受ける親が精神的に安心できることです。施設入居と比べて費用は比較的抑えられる傾向にありますが、在宅での介護はやはり介護する人にとって精神的・肉体的負担があります。介護サービスを組み合わせることで、負担を軽減させたいですね。
【主な介護サービス】
24時間体制の見守りや質の高いケアなどが提供されるため、介護を受ける人は手厚い介護を受けることができ、介護をする人にとっても負担を軽減することができます。ただし、在宅介護に比べて金銭的な負担が大きくなる傾向があり、施設によって入居条件や料金もさまざまです。
親の介護経験者への調査でも、在宅介護のみで介護をしている人も一定数いましたが、介護サービスを組み合わせたり、施設に入居したり、専門家のサポートを受けながら介護や機能訓練などを受ける場合が多いようです。
在宅をベースに介護をするか、施設に入居するかを選ぶときは、親がどのような介護を望んでいるか、どれくらいお金がかけられるかに加え、介護する子どもがどれくらい時間と手間をかけられるかも大きなポイントになります。
子どもの負担が大きくなりがちな在宅介護でも、訪問介護やデイサービスなどを利用すれば時間と手間を軽減することができます。一方、施設入居を選択すれば子供の負担は軽くなりますが、金銭的な負担は大きくなります。
介護経験者への調査では、月々にかかる介護費用は「在宅介護のみ」の場合は半数以上が5万円未満でしたが、「訪問介護やデイサービス、ショートステイ」を組み合わせると5万円以上かかるという人が増加。施設利用の場合は、公的施設で5〜10万円、民間施設で15〜20万円が最多でした。
介護施設へ入居する場合は高額になる傾向がありますが、在宅介護でも長引けばそれなりのお金がかかってしまいます。介護サービスの利用や施設への入居など、それぞれにどのような準備が必要で、どのくらいお金がかかるのか事前に調べておくと安心です。
在宅介護を選んだ場合、ケアマネージャー(介護支援専門員)やホームヘルパー(訪問介護員)のサポートを受けながら、介護をしていくのが一般的です。
「要支援」「要介護」の認定を受けて介護保険が適用されると、サービス利用金額(自己負担は原則1割)で介護サービスを受けることができます※。
また、市区町村が提供する生活支援サービスやNPOによる家事援助サービスもあります。親が住む自治体やエリアによって受けられるサービスが異なりますので、どのようなサービスがあるかは「地域包括支援センター」に聞いてみましょう。
在宅介護の場合は、家の中で安全に生活できるように、玄関やバスルーム、階段の手すりなどの「介護リフォーム」が必要になることも考えておきましょう。介助しやすい介護リフォームをすることは、結果として介護をする人の負担軽減にもつながります。
また、介護保険に「住宅改修費」の給付があり、「要支援」「要介護」の認定を受けて要件に当てはまれば、住宅改修にかかった費用の一部が支給されるため、ぜひ活用したいものです。また、車いすや電動ベッドなどの福祉用具のレンタルにも介護保険を使うことができます。
子どもと親とが遠距離で暮らしている場合や、近くにいても子どもの都合や親の認知症などの病状などにより家族が介護をできない場合は、施設への入居を検討することになります。また、親が自ら介護施設の入居を希望する場合もあるでしょう。
前出の調査「Q.1介護サービスや外部の施設を利用しましたか?」からも、4人に1人は施設に入居して介護を受けていることが分かります。
介護施設は、施設によって入居条件(要支援や要介護のレベル)やサービスの内容、費用などが異なります。公的施設は比較的入居条件が厳しく、費用が抑えられる一方、民間施設はレクリエーションやケアが充実している分、費用も高額になる傾向があります。
毎月の利用料だけで入居できる施設もあれば、入居する時に一時金(入居一時金)を収め、さらに毎月の利用料を払うような施設もあります。
事前にどれくらいのお金を施設にかけることができるのか確認しておきましょう。
自分たち親子に合った介護について話し合う際は、つい親が望む介護の話にスポットを当てがちですが、介護にかけられるお金、そして、介護をする子どもがかけられる時間と手間を明確にしておくことが大切です。理想だけではなく現実的な選択肢を具体的にイメージしておきましょう。
そして、いざというときにそなえ、準備できることからはじめておくと安心です。
次回は、「介護と仕事」がテーマです。介護経験者の声を交えながら、介護離職しないためにできること、親子で話し合っておくべきことをご紹介します。
【アンケート調査概要】
井豪(たかいつよし)
ファイナンシャルプランナー/終活アドバイザー。終活の専門家集団である「NPO法人 ら・し・さ(終活アドバイザー協会)」の理事。スイス系金融機関に在籍後、1994年にファイナンシャルプランナーとして独立。マネープランから、年金・介護、葬儀など、老後に向けて中立的な立場からのアドバイスを行う。