前の記事
どんなカタチで介護をする? 費用はどれくらい違う?
2021.8.4 今から親子で話したい「介護とお金」
親の介護経験者を対象にした調査で、介護のために自分や配偶者の仕事の変化について聞いてみました。「離職をした」経験者が1割以上いたほか、「時短勤務」や「雇用形態の変化」、「転職」なども一定数見られました。介護を機に働き方に変化が起こる可能性を想定しておく必要があります。
介護と仕事を両立するための制度は、国や自治体ごとにあります。制度を事前に調べておくと、金銭的・肉体的・精神的な負担を軽減することができるかもしれません。
介護は終わりの時期が見えにくいことから、産前産後休暇や育児休暇と違って長期休暇が取りづらく、結果として離職するケースもあります。しかし、離職にはリスクがつきもの。そのリスクを十分に把握しておくことが必要です。
実際に介護離職をした人のデータを見てみましょう。介護離職をした人を世帯年収別に見ると、「200〜400万円未満」の人が多いことがわかりました。そして、介護離職をした人の中の過半数は「在宅介護」をベースにした介護方法でした。デイサービスや介護施設を利用する余裕がなく、夫婦で年収の低い方が介護に専念するために離職するケースが多いように思われます。
介護費用を抑えるために選びがちな在宅介護ですが、介護をする家族や親族の時間的・精神的負荷は大きく、現状の生活や仕事を続ける上で少なからず影響が出ることも忘れてはいけません。
現在は医療制度などの進歩により長寿化が進み、介護が長期化傾向にあります。そのため、働き盛りの40〜50代が終わりの見えない介護に携わるケースも多く見られるようになりました。40〜50代といえば、住宅ローンや教育費などさまざまな出費がかさむ世代でもあります。そのようなタイミングで離職をすることは、ハイリスクだといえるでしょう。具体的には、次のようなリスクがあります。
働きながら介護をしてきた経験者たちは、実際どのような対策を講じたのでしょうか。
介護をはじめることになっても、働き方を変えることなく無理のない介護を行うことができたという声もありました。その秘訣とはどのようなものでしょうか。
介護経験者の声にもあるように、自身が介護しているという状況を会社の上司や同僚に相談して協力を仰ぐことは、有益な行動といえるでしょう。また、介護施設は大いに利用するべきでしょう。介護のプロに任せる時間が増えれば、自分のために使える時間が確保でき、肉体的・精神的な負荷が軽減できます。
介護は長期戦ですから、気負わずに“続けられる介護”を目指すことがポイントです。@介護にかけられる「予算」を家族で話し合っておき、A時間をつくるための介護サービスや支援制度について確認しておくことがカギになります。
介護離職は、介護を終えた後の自分自身の生活に大きなリスクを残す可能性があり、まずは介護離職をしないための方法を探しておくことが大切です。
【アンケート調査概要】
井豪(たかいつよし)
ファイナンシャルプランナー/終活アドバイザー。終活の専門家集団である「NPO法人 ら・し・さ(終活アドバイザー協会)」の理事。スイス系金融機関に在籍後、1994年にファイナンシャルプランナーとして独立。マネープランから、年金・介護、葬儀など、老後に向けて中立的な立場からのアドバイスを行う。