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仕事と介護の両立を実現するためには?
2021.10.6 今から親子で話したい「介護とお金」
一般的に負担ばかりがクローズアップされがちな遠距離介護ですが、頻繁に通うことでお互いに安心感が得られるなどのメリットもあります。
遠距離介護経験者への調査では、遠距離介護に対しての意見が二分されました。
ポジティブな回答理由では「できるだけのことをしてあげられた」など自分なりにしっかりできたという意見がある一方、ネガティブな回答理由では「体力的、金銭的に辛い」というシビアな声がありました。
介護のために帰省する頻度を聞いたところ、「月1回以上帰省している人」は8割以上、「月3回以上帰省している人」も半数以上いました。また、1回の帰省にかかる交通費は「往復1万円未満」が最多ですが、帰省の頻度が多ければ交通費の負担は大きくなり、家計を圧迫することが予想されます。
遠距離介護はお互い普段の生活を大きく変えずに済みますが、移動時間や交通費などが増えます。家族が離れて暮らしていて、いずれ遠距離介護が必要になりそうな場合は、帰省した際に毎月どのくらいの交通費がかかるのかなどを把握しておきましょう。
遠距離介護の経験者は、どのように負担を軽減していたのでしょうか。
調査では、「介護サービスや高齢者サービスを活用している」、「兄弟姉妹や親戚と協力している」という回答が4割以上を占めました。
遠距離介護を続けるためには、「時間と労力、そして金銭的負担をいかにセーブするか」が大切です。たとえば、特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設でデイサービスやショートステイを利用することは、労力を抑え、自分の時間を確保することにつながります。さらに、「ここにいるから、この時間は安心できる」と思えることで、心の負担も軽くなります。
また、帰省するタイミングを前もって決めておけば、交通機関の早期割引プランを利用できることもあります。
特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設で、デイサービスやショートステイを利用することもおすすめです。「ここにいるから、この時間は安心できる」と思えることで、心の負担が軽くなります。
「もしもの時にすぐに駆けつけることができない」という不安を解消することも大事なポイント。Q4で遠距離介護の負担を減らす工夫として多くの回答を得た「兄弟姉妹や親戚と協力」は、まさにこの点を解消する方法です。まずは、家族間でこまめに連絡を取ることを意識しましょう。また、身内に限らず地域の人(ケアマネージャーや近所の住人)とも連携しながら、親の状態を常に把握できる状況を作り出せると安心ですね。
自治体による安否確認サービスを利用するのも有効です。定期訪問や緊急通報システムのほか、手渡しを原則とする配食サービスなどを活用すると、安否確認を兼ねることができます。また、経験者からは「見守りカメラを設置した(31歳/女性/会社員)」という声も寄せられました。このような補助ツールを活用することで、手軽に“目が届く状況”を作ることもできます。
時間と労力、そして金銭的な負担が大きい遠距離介護は、上手にこなすためのポイントをふまえて、自分自身の負担を軽減することを意識しましょう。
また、介護が長期化することも想定し、事前に対策を練っておくと安心です。
自分ひとりの考えだけで遠距離介護をシミュレーションすると、状況が変化した時に身動きが取れなくなる可能性があります。チェックリストを参考に、親子で話し合ったり情報を集めたりすることで、柔軟な姿勢が生まれ、周囲に協力をあおぐことの大切さに気づかされます。
親子双方が暮らしやすい生き方を叶えるために、まずは話し合いから始めてみましょう。
【アンケート調査概要】
井豪(たかいつよし)
ファイナンシャルプランナー/終活アドバイザー。終活の専門家集団である「NPO法人 ら・し・さ(終活アドバイザー協会)」の理事。スイス系金融機関に在籍後、1994年にファイナンシャルプランナーとして独立。マネープランから、年金・介護、葬儀など、老後に向けて中立的な立場からのアドバイスを行う。