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2020.3.12 くらしのマネー辞典
医療技術の進歩に加え、健康意識の高まりによって「元気に、長生き」が当たり前の時代に。
図1は厚生労働省が発表した平均寿命と健康寿命を表した図です。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活を送れる年齢のこと。平均寿命と比べて、男性が8.8年、女性は12.4年の差があることが分かります。これからは平均寿命だけでなく、健康寿命も延ばしていくことが重要となります。
総務省統計局の2019年7月の統計によると、100歳以上の方は7万人です。これを80歳以上にまで広げると、1,100万人に上ります。日本の高齢化は、我々の予想を超えたスピードで進んでいるのです。
こうした超高齢化時代において重要になってくるのが、健康寿命という考え方です。健康寿命を延ばすために、自分の健康についていろいろな関心を払っていかなければなりません。
弘前大学では、2005年から産・官・学・民の協力でイノベーションの創出を目指す「岩木健康増進プロジェクト」という地域健康増進活動を行っています。毎年1,000人を対象とし、2,000項目という多岐にわたる健康調査を行います。
それらのデータから、病気にならないためにはどうすれば良いかということをひも解いていきたいと思っています。
村下 公一 氏
弘前大学 教授・COI研究推進機構機構長補佐/COI副拠点長
出産や子育て、介助や介護を社会制度で支え家族のあり方を社会全体で考える時代に。
総人口における高齢者人口の比率が高まる中、平成30年に厚生労働省が発表した調査では、高齢者の「単独世帯」はこの30年間で2倍になる一方、「3世代世帯(高齢者と子世代家族との同居)」が4分の1以下に減少しました。
家族のあり方の多様化が進んでいます。それに伴い、制度や民間のサービスも画一的なモデル世帯といった考え方では対応できなくなってきました。多様化といっても単に人の組み合わせだけではありません。働き方や住み方などの関わりがバリエーションをより多彩にしています。
その中でも最も大きく変化してきたのは、同居家族だけで高齢者を支えられなくなったという点でしょう。さらに言えば「支える」という発想では行き詰ってしまうので、高齢者本人が「自分でできることは自分でやれる」ように環境を整える必要があります。
そこで注目すべきなのは、人手に頼らない知恵やサービスではないでしょうか。I Tや環境技術を活用して、体格や状況に合わせ、「やりたいこと」をできる環境を整える。今の技術を考えれば、もっといろいろなことができると思います。ただし、ニーズは捉えきれません。ですから、現場の人や家族と一緒に試行錯誤していく。そのサイクルのスピードアップが必要だと考えます。
齊木 大 氏
日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
IoTの進展や自動運転の実用化が進み、より質が高く、より多彩なくらしが実現する時代に。
あらゆるものがネットにつながる「IoT(Internet of Things)」の普及が急速に進んでいます。平成30年の総務省の発表によると、世界のIoTのデバイス数は2017年に約270億に達し、2020年には約400億になる見込みです。導入は医療や自動車など幅広い分野に広がっています。
「IoTが暮らしを変える」とよく言われます。スマートフォンの普及により、データを集めるセンサーとそれを分析するコンピューターがネットワークでつながる時代になりました。
その集めたデータを利用し、様々な改善に利用しようというのがIoTの基本です。暮らしにおけるIoTには、3つの活躍の場が考えられます。1つは、スマートハウスと呼ばれる家の中。2つ目はスマートシティーやスマートインフラと呼ばれる家の外。そして3つ目が人に対するサービスになります。IoTは、この3つを対象に課題の改善に取り組みます。
ここで重要なのは、改善が単なる効率化で終わったのではあまり意味がないということです。いかに新しい付加価値を生み出すか。価値がないと思われていたものに、新たな価値を見出していく。そこから生み出されたものが豊かな暮らしにつながっていくのです。
木通 秀樹 氏
日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
「学び直し」を通じ、長い人生におけるキャリアアップ・キャリアチェンジを図る時代に。
高齢化が進む中、60歳以上の就業率が年々高まっています。図4の年齢別の就業率の推移からもわかるように、長くなる人生、働く期間も年々長くなっていることがわかります。
働き方改革は、長時間労働の是正と生産性の向上が車の両輪にならなければなりません。労働時間の短縮だけでは企業の売り上げが落ちてしまいます。ですから、この2つをセットにして初めてメリットが生まれるのです。働き方改革に取り組み、その成果を出している企業を見ると、多様で柔軟な働き方を採り入れている企業が多いようです。
高齢者は生活の保障よりも自分のやりがいや社会貢献への意欲をより強く感じています。重要なのは働き方の自由度です。長年培ってきたスキルや専門性を生かすことができれば、生き生きと働くことができるでしょう。
鶴 光太郎 氏
慶應義塾大学大学院 商学研究科 教授
自分の生きがいとして、社会貢献につながるボランティアや地域活動に取り組む時代に。
長くなる人生において社会との接点を持つことが大切になっています。2018年に行われた調査によると、友人との交流、地域のグループ活動などに積極的に参画している人は認知症の発症リスクが低いことがわかっています。
地域にはそれぞれに課題があり、それらの課題を解決する人を必要としています。従来、課題解決は自治体の仕事でしたが、最近は自治体任せではなく、課題に自ら取り組む人が増えてきました。地域の資質や歴史・文化を組み合わせたコミュニティーデザインという考え方を実践する人もいます。
社会の姿は刻々と変化していきます。55歳定年の時代と現在が違うように、20年後には今あるモデルは通用しなくなっているでしょう。どうやって新しい壁を乗り越えていくか。そのためにはいち早く課題に気づく必要があります。それができれば解決のヒントも見つけやすいはずです。働き方改革が叫ばれる今、中高年はぜひ地域に貢献していただきたいですね。
近藤 克則 氏
千葉大学 予防医学センター 社会予防医学研究部門 教授
最高の人生、そして大切な資産と家族のこと。守りつづけていきたい人生の時間が、今転機を迎えています。学び、働き、余暇を楽しむ。人生100年時代に、自分らしさとは何かを問い、思いを叶えていくために。
これから起こりうる様々な変化を、専門的な見地より各界の有識者のご意見も含め
ご紹介させて頂きました。