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2020.4.22 くらしのマネー辞典
人生100年時代、スキルを磨いたり、資格をとったり、キャリアを開拓する重要度が増しています。
そこで活用したいのが、雇用保険の給付制度。条件が合えば、厚生労働大臣の指定を受けた講座の受講料に対して、20〜70%の補助が受けられます。
活用しないと損とも言えるこの制度、ぜひチェックして、今後のキャリアプランを考えてみてはいかがでしょう。
「雇用保険制度」とは、雇用保険法に基づく失業・雇用継続などに関わる保険の制度。働く人が失業したときに失業給付するほか、再就職の援助を行うことも目的としています。
雇用保険には、正社員だけでなく、パートタイム労働者も加入できます。31日以上雇用されることが見込まれ、さらに1週間の所定労働時間が20時間以上であれば加入条件をクリア。つまり、働く人の多くは加入しています。
この雇用保険制度の1つの柱が、対象となる教育訓練を受けた場合に講座費用の一部(20%〜最大70%)が支給される「教育訓練給付制度」です。
「教育訓練給付制度」には、2つの給付制度があります。1つは1998年12月にスタートした「一般教育訓練給付」。もう1つが、2014年10月にスタートした、より専門的・実践的な訓練が対象となる「専門実践教育訓練給付」です。
対象講座は、厚生労働大臣が指定した約1万4,000講座で、2017年度までで、のべ約350万人が利用(初回受講者)。「専門実践教育訓練給付」が登場してからは、その受給者数や支給金額が急上昇しています。
「一般教育訓練給付」は、社労士やプログラミング、簿記をはじめ、国家・民間の資格をとるための幅広い講座が対象で、受講費用の20〜40%が給付されます。
一方、「専門実践教育訓練給付」は、看護師、社会福祉士、専門職大学院(MBAほか)などの中長期的キャリア形成を目的とする特定の講座が対象となり、受講費用の最大70%が給付されます。
対象となるのは、3年以上雇用保険に入っている(はじめて支給を受ける場合は、「一般教育訓練給付」では1年以上、「専門実践教育訓練給付」では2年以上)などの条件を満たす人です。条件を満たせば、仕事を辞めて1年以内(妊娠、出産、育児、疾病などで教育訓練を受講できなかった場合は20年以内)の人も対象となります。
「一般教育訓練給付」は、主に国家・民間資格の取得を目標とした約11,701講座が対象です(2019年4月時点)。
2019年10月1日から、その中で、特にキャリアアップ効果の高い計150講座が「特定一般教育訓練」に指定され、受講費用の40%(上限20万円)が給付されるようになりました。それ以外は、受講費用の20%(上限10万円)の給付です。
受講開始日前1年以内に所定のキャリアコンサルティングを受けた場合には、その費用を教育訓練経費に加えることができます(上限2万円。2017年1月1日以降)。
通学だけでなく通信の講座もあり、ハローワーク窓口で閲覧できるほか、厚生労働省「講座検索サイト」でも検索可能です。自宅から訓練期間や費用など各講座の詳細情報も確認できます。
「専門実践教育訓練給付」は、教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が支給される制度。訓練期間は最大3年間のため、3年間の上限は120万円です。
さらに、修了日の翌日から1年以内に雇用された、またはすでに雇用されている場合は20%が上乗せされ、合計70%(3年間で最大168万円)が給付されます。
*2016年12月31日以前に受講開始した場合は、専門実践教育訓練の支給額が40%のため、20%を合わせて60%(年間上限48万円)。
なお、資格取得を目標とする所定の4年課程の教育訓練を受けた場合には、4年間で最大160万円、資格を取得して条件を満たせば上乗せ分も含め最大224万円の給付を受けることが可能です。
「専門実践教育訓練給付」は複数回の受講も可能です。ただし、最初の受講開始日から10年経過するまでに受講開始した教育訓練給付金の合計額は168万円が限度です(4年課程を除く)。
また、2022年3月31日までの時限措置として、45歳未満の一定条件を満たす失業者が「専門実践教育訓練給付」を受講する場合、「教育訓練支援給付金」も基本手当の80%を受け取ることができます。
対象講座は、厚生労働省「講座検索サイト」で検索できるほか、ハローワークの窓口でも確認できます。
教育訓練給付は、すでに仕事を辞めた人でも要件を満たしていて、被保険者資格を喪失した日以降1年以内の受講開始であれば利用できます。
特に、妊娠、出産、育児、疾病などの理由で教育訓練給付の適用対象期間の延長をした人は、最長20年以内であれば利用可能。育児の合間や子育て期間中にも、教育訓練を受けることができます。
給付の申請手続きについても確認しておきましょう。
「一般教育訓練給付」は受講修了日の翌日から起算して1ヵ月以内に行います。
ただし、「特定一般教育訓練給付」の場合は、事前申請も必要。キャリアコンサルティングを受け、就業の目標、職業能力の開発・向上に関する事項を記載したジョブ・カードの交付を受け、受講開始1ヵ月前までに手続きを行います。
「専門実践教育訓練給付」についても、事前にジョブ・カードの交付を受け、受講開始1ヵ月前までに所定の手続きが必要です。支給申請は、受講開始日から6ヵ月ごとの末日の翌日から1ヵ月以内に行います。
受講修了したらは、修了日の翌日から1ヵ月以内が支給申請の期間です。教育訓練支援給付が受けられる場合は専門実践教育訓練給付と一緒に手続きを行うことを忘れずに。
最後に注意点です。自分は教育訓練給付の対象になるかどうかや、申請に必要な書類などはハローワークで確認しておくこと。そして、きちんと修了して、スキルや資格とともに給付金を受け取りましょう。
また、「一般教育訓練給付」では受講後の後払い、「専門実践教育訓練給付」では6ヵ月ごとの後払いとなるので、ある程度の受講料は自分で準備しておく必要があります。マネープランを計画的に立てておくことも大事です。
こうした制度を上手に活用して、人生100年時代の武器を手に入れたいものですね。
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相談診断士。FPラウンジ代表。マネー誌ライター等を経て、94年より独立系FP。現在は、個人相談のほか、講演や研修講師、マネーコラムの寄稿などを行う。大学・短大で非常勤講師も務める。「親の入院・介護が必要になったときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。