140年ぶりの見直し! 2022年から18歳で成人

日本の成人年齢は、1876年以来の約140年間、20歳と定められていましたが、民法が改正されて2022年4月1日から18歳に変わります。
日本では、選挙権年齢や国民投票の投票権も2016年から18歳への引き下げが適用され、国として18〜19歳の若者にも国政の重要な判断に参加してもらう政策が進められてきました。こうした流れの中で、民法でも18歳以上を大人として扱うのが適当ではないかという議論がなされ、成人年齢が18歳に引き下げられることになったのです。これは、18〜19歳の若者の自己決定権を尊重し、積極的な社会参加を促すことにもつながります。
成人年齢が引き下げになる認知度は高く、内閣府の調査では18歳に引き下げられることを「知っていた」と答えたのは、成人を意識する年代の16〜22歳で87.4%、その親世代の40〜59歳では93.2%でした。ただし、「成人年齢が父母の同意なく契約できる年齢であること」など、具体的にどう変わるのかまで把握している人は多くないようです。親子でしっかり確認しておきましょう。
成人年齢の引下げの認知度のグラフ
成人年齢が父母の同意なく契約できる年齢であることの認知度のグラフ
  • 内閣府「成年年齢の引下げによる世論調査」(平成30年度調査)を基に筆者作成。
なお、2022年4月の移行前後の期間は、新成人となる日が生年月日によって下表のように決まっています。
生年月日別の新成人となる日
  • 政府広報オンラインを基に筆者作成。
「成人式」については、各自治体の判断で実施されます。多くの自治体で1月の「成人の日」前後に開催されますが、成人年齢が18歳に引き下げられた後は高校3年の1月という受験シーズンに実施するかなど、まだ明らかになっていません。特に、2023年1月の成人式は、18〜20歳の3世代で同時に実施するかどうか気になるところですが、各自治体の発表を待つほかないようです。

成人年齢の引き下げで変わるもの・変わらないもの

成人年齢の引き下げにより、2022年以降は18歳になると自分で契約ができるようになります。たとえば、携帯電話を契約する、部屋を借りる、クレジットカードを作る、ローンを組むといった契約が子どもの本人名義で可能になるわけです。また、成人になると親権が適用されなくなるため、自分の住む場所や進学、就職などの進路も自由に決定できます。
ほかにも、10年有効のパスポートを取得したり、公認会計士や司法書士、行政書士などの国家資格に基づく職業に就いたりすることも可能になります。
今回の成人年齢の変更とあわせて、女性の結婚年齢も見直しに。これまでの最低年齢16歳から18歳に引き上げられ、結婚できるのは男女ともに18歳以上となります。
一方で、成人年齢が18歳になっても、飲酒や喫煙、公営競技(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)に関する年齢制限は20歳のままです。健康被害やギャンブル依存症対策などの観点から現状維持となっています。
成年年齢の引き下げで変わるもの・変わらないものの表
  • 政府広報オンラインを基に筆者作成。

家庭で、お金や契約についての学習を

未成年者が何かの契約をするには、親の同意が必要です。親の同意を得ずに契約した場合、民法で定められた「未成年者取消権」によって取り消すことができます。これは、未成年者を保護し、未成年者の消費者被害を抑止するためのものです。
一方、18歳で成人になると、これまで保護されていた18〜19歳でも「未成年者取消権」が使えなくなり、契約に責任を負うことになります。
そのため、十分な知識もなく安易に契約を交わすトラブルに巻き込まれる可能性も。成人したばかりの若者を狙い打ちにする悪質な業者が出てくることも予想されます。消費者トラブルに遭わないよう、家庭での金融教育を行うことは非常に重要です。
18歳の成人を迎えるまでに、契約に関する知識やクレジットカードやローンとの付き合い方などを学んでおきたいもの。消費者庁「消費者教育ポータルサイト」に高校生向け教材「社会への扉」があるので、親子で学ぶツールにしてはいかがでしょう。
また、金融庁でも、子ども向けに暮らしと金融について学べるコンテンツを紹介しています。「お金ってなに?」から学べる小学生向けのものから、クレジットカードの使い方や株式の経済的な意義について学べる中学・高校生向けのものまで、幅広く揃っています。
消費者教育は小学校から学校教育でも取り入れられ、中学や高校ではクレジットカードの契約や消費者保護の仕組みについて、技術・家庭科で学ぶようになっています。2022年度からは、高校の家庭科の授業で資産運用などの金融教育も行われるようになる予定です。

成人までに伝えておきたい、お金と上手に付き合うポイントとは?

筆者自身も長く学生向けの金融教育に携わっていますが、子どもたちには、「入ってくるお金の範囲で支出すること」、そして「貯蓄をする習慣づけ」が何より重要だと伝えています。
また、キャッシュレス決済は使いすぎる可能性があることも頭に置いておくのも大事です。日本クレジットカード協会の調査では、1度の買い物で支払う単価が現金に比べ、クレジットカード決済の場合は平均約1.7倍というデータもあります。
家計管理に自信が持てるようになるまでは、銀行口座から即時に支払われるデビットカードを使用するのも1つの方法です。クレジットカードを使用する場合もキャッシングやリボ払いは避けることなどを伝えています。
子どもたちと「お金」についての話はあまりしないというご家庭でも、成人を迎える前に親子で金融について学び、話し合ってみてはいかがでしょうか。
  • 2021年1月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)

豊田 眞弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相談診断士。FPラウンジ代表。マネー誌ライター等を経て、94年より独立系FP。現在は、個人相談のほか、講演や研修講師、マネーコラムの寄稿などを行う。大学・短大で非常勤講師も務める。「親の入院・介護が必要になったときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。

webサイト:https://happy-fp.com/backstagemezasu/toyoda.htm

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