さおだけ屋は実はリスクが少ない副業!?
会計学の考え方は、日常生活に生かせる!
「たーけーやーさおだけー」のメロディーを一度は耳にしたことがある人は多いはずです。この音楽を流しながらトラックを走らせるさおだけ屋は果たしてどのくらい儲かっているのだろう?
こうした日常の出来事から生まれる疑問を会計学の視点で捉え、会計学の基礎的な知識を読者にやさしく解説してくれるのが、本書の内容です。
会計を学ぶうえで、数字に強い必要はまったくなく、むしろ必要なのは「数字のセンス」、とこの本の著者は強調しています。その例としてあげているのが「50人に1人が無料」キャンペーン。実際に飛行機会社であったプロモーションですが、すごくインパクトのある言葉で大成功しました。しかし、会計学的に考えれば、期待値としてはたかだか2%引きだということがわかります。また、1,000円の50%OFFといわれるとついつい手が伸びます。もちろん本当に必要があれば良いのですが、実際にはたった500円の割引で、不要なものを買ってしまったことはないでしょうか。それなら、101万円のものを買う場合に100万円に値引きしてもらったほうがはるかに良いと著者は解説しています。このように日常生活でも会計の考え方が役に立つと教えてくれている点が、この本が普遍的な人気を得ている理由といえます。
ちなみに、さおだけ屋は金物屋さんが配達のついでに音楽を流しているだけで、売れば売るだけ儲かる賢い副業なのだそうです。
本業と副業をうまく組み合わせれば
相乗効果が生み出せる。日常生活でも然り
長年、企業取材をしてきた立場として、すごくおもしろく読めたのが、ベッドタウンにある高級フランス料理店がなぜ潰れないのかという項目。その理由は、主婦層をターゲットに昼過ぎから開催している「料理教室」で利益を得ているから。要するに、このフランス料理店というのは教室で利益をあげるためのショールームのようなものだったということがわかります。
会計学の言葉でいうと「連結経営」という考え方で、本業(ここではレストラン経営)と密接に関わる副業(ここでは料理教室)で儲けることは商売を成り立たせる上で重要だと説いています。
経営者にとってこの「連結経営」というのは重要なキーワードです。なぜソニーが映画会社を買収しているのか、なぜ阪急電鉄が宝塚歌劇団を始めたのかなど、全部この本を読めば謎がとけていくわけです。つまり本業と新規事業の相乗効果というのが、連結経営のメリット。それがまさに高級フランス店で料理教室をやるという例で、うまく説明されています。
また個人では、家電量販店で働いていたとすれば、家電に関する文章を書いてみたり、自分の本業で関わりのある詳しい分野の会社に株式投資したりすることなどが、賢い「連結経営」と言えるそうです。
在庫のリスクやフリーキャッシュフローの重要性など
お金の流れを時間軸でとらえて、賢い選択をしよう
これ以外にも、ファッション業界がセールをするのは、倉庫の費用、流行が変わるリスクなどを懸念し、在庫を恐れているからですが、何年も着ていないスーツにカビが生えてしまって、隣のお気に入りの服までダメにしてしまった例を挙げて、家庭でも在庫を減らす必要性について考察するなど、様々な事例を紹介しています。
会計学というと一見難しそうだけれど、その考え方は企業経営でも家計でも同じで、今の時代にすごく必要な概念だということです。
また、「フリーキャッシュフロー」、つまり自由に使えるお金が企業経営上いかに重要かが何度も出てきますが、これは家計についてもいえることです。収入からローンや生活費を差し引き、将来に向けての蓄えも差し引いた残りがフリーキャッシュフローです。これが多すぎるのは、将来への投資ができていないと見ることができますし、少なすぎるのも生活のゆとりがなくて問題ということになります。お金の流れを、1カ月、1年、10年など、どういった時間軸でとらえていくのか、会計学の視点を持って考えれば、節約や貯蓄にがんじがらめになる従来の家計管理とは違う世界が広がります。本書を参考に、長い目で見て、賢い"お金の主人"を目指しましょう。