□お金と健康的に付き合うために、お金へのネガティブな呪縛を取り除くのがコツ □幸せな金持ちになるためのお金の知識5原則 □成功するために必要なのは、流れを読む力

お金と健康的に付き合うために、お金へのネガティブな呪縛を取り除くのがコツ

本書は、人生で成功するための秘訣を探す青年ケンが、留学先のアメリカでユダヤ系の老富豪ゲラー氏と出会い、ゲラー氏から試験を課されながら、「幸せな金持ちになる」ための17の秘訣を学んでいく小説仕立ての指南書です。

ゲラー氏はケンに、お金と上手に付き合うためにはお金についての「知性」と「感性」が必要だと教えます。

お金についての「知性」とは、お金に関する知識のことで、具体的には稼ぎ方や使い方、運用・投資などの技術的な手法を意味します。
一方、お金についての「感性」とは、お金と健康的に付き合うための気持ちの持ち方や姿勢、行動です。

ゲラー氏は、幸せな金持ちになるためには「知性」と「感性」をバランス良く磨かなければならないが、多くの人は無意識のうちに植え付けられたお金に対する偏った見方が邪魔をして、「感性」を磨けないと指摘します。

その最大の原因は、幼い頃の経験によって知らずに培われたお金に対するネガティブな感情だと言います。
「お金のことで両親や祖父母が言い合っていたのを見た」
「仲良しの友だちが親に買ってもらった玩具を、自分は買ってもらえず悔しい思いをした」
そんな経験が「お金には家族を仲違いさせたり、仲の良い友達への嫉妬をかき立てたりしてしまう強烈な力がある」といった考えを育み、「お金は面倒くさいもの」「怖いもの」という偏った見方を本人の知らないうちに植え付けてしまうと言うのです。

この指摘に対して、中には「ゲラー氏の考えには賛同できない」と思われた人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「お金に対してネガティブな感情など抱いていない」と言う人でも、給料や資産について話すのは「抵抗がある」「恥ずかしい」といった具合に、どこかお金に対して構えて接してしまっているのではないでしょうか。

ゲラー氏は、このようなお金への「ネガティブな感情」や「感情的なからまり」を自覚し、それを解くことが、お金と健康的に付き合う前提だと言います。

幸せな金持ちになるためのお金の知識5原則

では、幸せな金持ちになるための「お金との健康的な付き合い方」とは、具体的にはどのような姿勢や行動なのでしょうか。ゲラー氏は、次の「5原則」を披露します。

  • たくさん稼ぐ
  • 賢く使う(節約)
  • がっちり守る
  • 投資する
  • 分かち合う

1.「たくさん稼ぐ」

ゲラー氏は「まず稼がなければ、あとの4つの原則は意味をなさなくなる」と指摘します。
それほど重要な「稼ぐ」ですが、「それだけで幸せな金持ちになれるわけではない。5原則すべてを満たさなければならない」とゲラー氏は言います。

2.「賢く使う」(節約)

お金はただ稼ぐだけでなく、賢く使わなければなりません。そのためには「必要なもの」と「欲しいもの」の違いを知ることが大切だとゲラー氏は言います。
その際に重要なのは「自分がお金を使うことで何を得ようとしているのかを見極めること」です。それができれば必然的に「必要なもの」だけにお金を使い、「欲しいもの」を買うための無駄遣いをすることがなくなるからです。
「賢く使う」ことができれば、「たくさん稼ぐ」はさほど重要ではなくなるともゲラー氏は言います。

3.「がっちり守る」

たくさん稼いで、賢く使えるようになると、今度はお金を守る行動が重要になります。
せっかく稼いだお金を、詐欺に遭ったり、リスクの高い投資話にうっかり乗って大金を失ったりしないように守らないといけません。

4.「投資する」

ゲラー氏は「投資家の道を経ずして、金持ちになるのは難しい」と言います。投資・運用についての知識はお金持ちになるために必須なのです。いての知識はお金持ちになるために必須なのです。

5.「分かち合う」

「1から4までの原則を守れば、金持ちにはなれる。しかしそのようにして得た富を分かち合わなければ、幸せにはなれない」と言うのがゲラー氏の持論です。

ゲラー氏は、学校や市民団体への寄付を通じて、次世代を担う若手を育成したり、若手にチャンスを与えたりすることを「分かち合う」の念頭に置いています。

しかし「分かち合う」ことはそれだけにとどまらないでしょう。「環境問題の改善に熱心な企業に投資する」「有望な医療技術を持つベンチャー企業に投資する」といった行為も、富の有用な分かち合いにつながります。
それらを通して、より経済が活性化し、社会が豊かになれば、投資した本人もまたその恩恵を受けられるでしょう。

ゲラー氏は言います。「金持ちになる究極の目的は分かち合いにあると思っている。社会に才能を分かち合うことで得たお金を、社会に還元していく。このことで、初めてサイクルが完結する」と。
さらに幸せな金持ちの共通点をこう指摘します。「自分のところにくるお金の流れをポジティブな方向へと流す。そうすることで(中略)川の流れを大きくすることになることを体験的に知っている」

「稼ぐ」「使う」「貯める」「投資する」「分かち合う」──幸せなお金持ちになるにはこの流れを把握し、実践することが必要だと言うのです。

成功するのに必要なのは、流れを読む力

ゲラー氏はさらに「幸せな金持ちであり続ける」ためには、流れを読む力が必要だとケンを諭します。
「海に出ていく人間が最も気をつけるのが、潮の流れと風の流れだ」「お金にも同様に流れがあり、その流れを読む力は人生を成功させるために必要だ」。

そして、そのためには長期的な視点を持たなければいけないと強調します。「お金の流れを読むのに高等な経済学はいらない。常識と直観を頼りなさい。細かい流れに意識を奪われてはいけない。少なくとも五年、十年の流れで、ものを見なさい」。

ゲラー氏は流れと同時にサイクルも大事だと言います。人生と同じように経済・景気や企業の業績にも上り調子の時と下り調子の時があります。
中・長期の視点で流れを読み、上り調子の時はアクセルを、下り調子の時はブレーキを踏みながら、サイクルを上手に乗り越えていく必要があると言うのです。

渋谷和宏のコレだけ覚えて

流れを読む力は投資にも必要

本書は長期的な視点でお金の流れを読むことの大切さを説きます。「5年、10年の流れで見ること」「人生と同じように経済・景気や企業の業績にも中・長期の波があること」──こうしたゲラー氏の教えは投資・運用にも重要でしょう。

短期の値動きだけにとらわれてしまうと、判断を見誤ってしまいがちです。老後を見すえ目標をきっちり定めて運用していたのに、儲けたい一心で、あるいは損したくない焦りから短期で売却してしまった。この結果、目標達成が困難になってしまった……。
5年、10年の単位でお金の流れを見ることができれば、こんな失敗のリスクをずっと減らせるはずです。

ゲラー氏がケンに諭したように、潮目が悪いと判断した時はブレーキを踏んで静かに待ちましょう。逆に潮目が良いと判断した時には、投資額を増やしたり、株や投資信託への比率を高めたりするなど少しリスクを取ってもいいでしょう。

そして余裕資金が出来たら、「環境問題の改善に熱心な企業に投資する」といった、分かち合いにつながるような運用を考えてもいいかもしれません。
自分のお金が、より豊かで住みやすい社会への発展に役立っていると実感できるのも投資・運用のメリットだからです。

  • 2020年1月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
渋谷 和宏

渋谷 和宏

しぶやかずひろ/作家・経済ジャーナリスト。大学卒業後、日経BP社入社。「日経ビジネスアソシエ」を創刊、編集長に。ビジネス局長等務めた後、2014年独立。大正大学表現学部客員教授。1997年に長編ミステリー「錆色(さびいろ)の警鐘」(中央公論新社)で作家デビュー。「シューイチ」(日本テレビ)レギュラーコメンテーターとしてもおなじみ。

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