民泊新法。ねらいは、ヤミ民泊の防止と
増え続ける外国人旅行客の受け皿

「住宅宿泊事業法」、通称「民泊新法」が平成30年6月15日に施行されます。
そもそも「民泊」とは、ホテルや旅館といった事業者ではなく、一般の人が住宅の全部または一部を使い、旅行者などに宿泊サービスを提供することです。海外では珍しくなく、見知らぬ人同士が自宅や使っていない物件の貸し借りを行っていて、両者を仲介するサービスもたくさんあり、アメリカ発のサイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」は世界各国で利用されています。

日本では本来、ホテルや旅館といった宿泊ビジネスを始めるには、「旅館業法」の許認可を受ける必要がありましたが、民泊新法では、貸し手となる「住宅宿泊事業者」が都道府県知事に届け出をすれば、旅館業法の許認可がなくても年間180日を上限に宿泊サービスを提供できるようになります。

これまで、日本では、既存事業者への配慮や災害・火災時などの対応、旅行者とホスト・周辺住民とのトラブルといった理由から、民泊に対しての風当たりは強く、"やってはダメ"というのが基本的なスタンスでした。一方で、許認可を得ていない「ヤミ民泊」が横行している実態がありました。
政府はこういった状況を踏まえ、健全化を進めるため、2016年からは「簡易宿泊営業」の許認可基準を緩和する政令を改正、各自治体に条例を弾力的に運用するよう要請するなど、前向きに取り組み始めました。民泊新法もそのひとつで、ルールを決めることで状況を把握し、透明化を図るといったねらいがあります。

また、背景には、ここ数年増加しているインバウンド(訪日外国人観光客)が関係します。日本は「観光先進国」を目指し、2020年には4,000万人のインバウンドを目標に掲げているほど。官民が協力して誘致することで、アジアを中心に日本を訪れる外国人旅行客は爆発的に増え、2007年は約834万人に過ぎなかったのが、10年後の2017年には過去最高の2,869万人を記録しました(「JNTO(日本政府観光局)」調べ)。
旅行者が増加したことにより、ホテルの客室不足、宿泊費の高騰を招き、世界的に広がりを見せている民泊に白羽の矢が立ったわけです。

個人が持つ"資産"の共有で
モノの買い方、使い方の意識が変わる?

民泊は副業を始めたい個人にとって、不動産投資より短期でトライできるというのも魅力です。また、民泊が広まれば、個人が所有する住宅や部屋を貸し借りするという意識が定着するかもしれません。その結果、不動産以外にも、個人の持っている資産を貸し借りする社会、いわゆる「シェアリング・エコノミー」が広がっていく可能性があります。

「シェアリング・エコノミー」とは、「シェアリング・サービス」と呼ばれる個人の遊休資産の貸し借りを仲介するサービスを活用し、個人間での共有や取引を活発にしていく社会の仕組みのことです。
「シェアリング・エコノミー」は、IT技術やスマートフォンなどの普及によって、より手軽になり、シリコンバレーを起点に世界的に成長してきました。貸主にとっては活用による収入、借主は購入・所有しなくてもモノやサービスが利用できるというメリットがあります。市場規模も2013年は約150億ドルでしたが、2025年には約3,350億ドル規模に成長する見込みがあるそうです(PwC調べ)。

民泊のような住宅だけではなく、空き駐車場や自動車・自転車、荷物を預けたい人と預かる人をマッチングするサービスもすでに広まりつつあります。今後、家事代行、得意分野のアイデア、知識など、形にならない資産もますます貸し借りされていくでしょう。
こういったシェアリング・エコノミーによって、私たちの暮らし方、お金の使い道、そして資産に関する考え方が変わっていくかもしれません。例えば、これまでは「短期しか使わないから安いものを買っておこう」と思っていたモノでも「良いモノを買って、まずは自分が快適に利用し、その後はほかの方にシェアして収入を得る」という選択ができるようになり、言うなれば、新しいタイプの資産運用のカタチが生まれていくかもしれません。

私の暮らしはどう変わる?

民泊新法によって、個人の不動産の貸し借りの意識が定着すると、不動産以外の有形資産やスキル、ノウハウといった無形資産の個人間での貸し借りがますます活発になるかもしれません。「ほしいものは買って、いらなくなったら捨てる」というライフスタイルは見直され、「資産は、有形であれ、無形であれ、積極的に活用し、社会に役立てる」という新しい考えが求められることでしょう。

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