"使わない家"がトラブルの原因に?
悪質な空き家はペナルティの対象

少子高齢化・人口減少に直面する日本で、使われることのない「空き家」が増え続けています。2013年に全国で820万戸だったのが、2018年には1,083万戸を突破し、2033年には2,166万戸に到達すると言われています。また、総住宅数に占める空き家率は13.5%(2013年)から30.4%(2033年)に上昇すると見込まれます。※

  • 出所:野村総合研究所「〈2017年度版〉2030年の住宅市場」(2017)より

空き家が増えると、どんな問題が起きるのでしょうか? 空き家は、適切に管理されていないと防災や衛生、景観など地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼします。
まず、倒壊などによる危険。たとえ倒壊しなくても、強風などで建物の一部が周辺の住宅に飛散する恐れもあります。続いて、衛生上の影響です。ゴミ、汚水による異臭、害虫や害獣の温床となることもあります。さらに、防犯、景観上の問題も起こります。空き家で不法行為が行われたり、周辺の美観を損ねることがあります。

こういった状況に歯止めをかけるため、2015 年から施行されているのが「空家等対策特別措置法」です。通常、家屋がある土地については更地に比べ固定資産税が優遇されており、古い空き家が解体されない1つの原因になっていました。この法律では、自治体が適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定できます。特定空家は固定資産税の特別対象から除外され、課税額が最大4.2倍になります。さらに、自治体は、特定空家に対して、助言・指導・勧告・命令ができ、是正が受け入れられないと罰金を科すことや、家屋を解体する「行政代執行」が可能になります。費用は基本的に所有者の負担となります。

空き家を減らし、活用していく。
取り組みやサービスが続々登場!

一方で、空き家を解体して更地にしたり、耐震化を施して売却することを促進する政策もあります。そのひとつが、特例の適用期間である2016年4月1日〜2019年12月31日まで対象の「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」です。いくつか条件はありますが、相続した空き家の売却・譲渡によって生じる所得税、住民税が大幅に減少します。

また、各自治体でも取り組みが始まっています。例えば、東京都足立区の場合、一定の条件を満たせば、解体費用の一部が助成されます。世田谷区では、空き家オーナーに対して改修補助金を助成する制度があり、空き家の賃貸活用も支援しています。大田区でも「空家総合相談窓口」を開設し、空き家の売買や賃貸、所有者と利用者のマッチングなどをサポートしています。その他、専門窓口の開設や空き家バンクを運用する自治体は多く、また、不動産関連企業でも同様の取り組みがあり、官民で空き家解消に向けた動きが起きています。

空き家は社会のお荷物とされていますが、社会全体で知恵を出し合い、活用方法を検討することで、新しいビジネスが生まれるかもしれません。例えば、ホテル不足の1つの解決策として空き家を活用した宿泊施設も登場しています。こういった動きがさらに広がれば、多くの空き家を抱える地方にも恩恵をもたらす可能性があります。

  • 平成30年5月現在の税制です。今後の税制改正にともない、変更されることもありますのでご留意ください。税金に関しては専門家にご相談ください。

私の暮らしはどう変わる?

空き家を保有することのリスクは、今後ますます高くなると考えられます。もし相続などで利用予定がない空き家を保有した場合、国や地方自治体、不動産会社などの制度やサービスを上手に利用して、売却や賃貸を検討し、資産として活用しましょう。
また、周辺に管理されていない空き家がある場合、トラブルになる前に、地域の方と連携して、自治体に申し出るのが良いでしょう。

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