TPPが始まると、
魚介類や果物、野菜は安くなる?

TPPとは「環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership)」の略で、シンガポールやニュージーランド、カナダ、オーストラリア、マレーシアなど、日本を含む計11カ国が参加する取り組みです。

TPP関連法に合意している加盟国間では関税の引き下げや撤廃、サービス・投資の自由化、知的財産や金融サービス、電子商取引、国有企業の在り方など、幅広い分野で新しいルールが構築されます。なんと、参加国11カ国のGDPを合わせると全世界の13%を超え、政府は日本のGDPを年7.8兆円押し上げると試算するほどの経済効果を見込んでいます。

TPPが始まるとモノの関税は即撤廃、あるいは段階的に引き下げられ最終的に撤廃、もしくは低水準で維持されます。なかでも農林水産物2,328品目のうち1,885品目、率にすると81%の関税がなくなります。そのうち、発効と同時に関税が撤廃されるのは51.3%です。カキやタコ、カニなど魚介類や魚介類の加工品、ブドウやイチゴ、メロン、トマト、ブロッコリーといった生鮮果物・野菜や、これらの加工品がメインで、これによりリーズナブルな輸入品が増えてくるでしょう。スーパーで安く買えたり、これらの食材を使う飲食店の値段は下がるかもしれません。

その後も、続々と関税が撤廃される品目は増え、高い税率をかけられていた柑橘類、落花生、玉ねぎ、ワイン、天然のはちみつ、パスタやピザといった小麦を使った製品など、最終的には1,885もの農林水産物の関税が撤廃されます。

廉価な輸入食品と国産ブランド食品
食の格差が開く?

一方、TPPにより参加国の輸出関税も引き下げ・撤廃されるので、日本産の果物や野菜の輸出が増大する可能性もあります。近年、牛肉であれば「松阪牛」や「但馬牛」、さくらんぼなら「佐藤錦」など、高級ブランド化したモノは海外でも高い人気。数万円で売られていることも珍しくありません。それ以外の農産物も、日本産は高品質・安全ということで外国の富裕層に好まれています。今後、TPPにより輸出関税が撤廃され、海外でも需要が増えるでしょう。

ただし、TPPにはメリットばかりではありません。安い輸入品が幅を利かせるようになると農家などにとっては大ダメージで、廃業が増えて国内産業の弱体化、食料自給率の低下を招くかもしれません。もしくは、国内の農業は価格競争を避けるため、より付加価値の高い作物の生産に特化するかもしれません。ブランド牛やブランド野菜がますます増え、海外でも需要が見込まれることから、国内では価格が上昇する可能性もあります。富裕層は国産を食べ、そうでない人は海外産を食べる、ということが現在より増えるかもしれません。
また、食品添加物や遺伝子組み換え食品、残留農薬に対するレギュレーションは国によって異なるため、日本人にとって食の安全が脅かされる可能性も指摘されています。

  • 2018年7月現在の税制です。今後の税制改正にともない、変更されることもありますのでご留意ください。税金に関しては専門家にご相談ください。

私の暮らしはどう変わる?

TPPが始まると、コメや肉類、乳製品、魚介類、果物、野菜......私たちが口にするほとんどの食品で安価な外国産が輸入されるようになり、家庭ではもちろん、外食でもリーズナブルに手に入るようになるでしょう。家計にとってはありがたい話ですが、選択肢が増える分、産地などから食の安全を見極める力がさらに必要になるかもしれません。

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