ゼロ金利のねらいは、物価や賃金の上昇。
私たちの生活はよくなった?

「ゼロ金利」(1999年〜)「マイナス金利」(2016年〜)は、お金の流れを良くすることを目的に始まった政策です。
一般に金利が高い場合、消費者や企業はお金を借りて設備投資すると金利分余計に費用が掛かるため、景気拡大の足かせとなります。反対に、金利が低いと、設備投資をしたり、事業を始めたりする意欲が高まると言われています。
「ゼロ金利」「マイナス金利」は、銀行同士の資金の貸し借りにおける金利に関することですが、この金利は、銀行が消費者や企業に対して行う融資の金利にも影響します。長く伸び悩んでいる日本の物価や賃金を上昇させることが目的とされています。
結果、毎年9月に国税庁が発表する「民間給与実態統計調査」によると、2016年の民間事業者に勤務する給与所得者の平均給与は421.6万円でリーマンショック後(2009年)の405.9万円に比べ、大きく改善しました。
とはいえ、2018年6月分の全国消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)は前年同月比0.8%の上昇と、上昇はしているものの、日銀が掲げる2%には、まだまだ届きません。国民の間にはデフレ心理が根強く、消費活動を控えて、貯蓄するなど、そもそもの目的であった景気への影響は想定を下回っていると言えます。

家計へのメリットは
住宅ローンの低金利。

ここからは、「ゼロ金利」、「マイナス金利」による日常生活へのメリット、デメリットを考えましょう。

まず、メリットは低金利のため銀行などからお金が借りやすくなったことが挙げられます。最たるものは住宅ローンです。長期固定型住宅ローンの「フラット35」の最低金利は2012年前半に2%台だったものの、16年8月には過去最低の0.9%となり、2018年も1%程度で推移しています。金利の負担が大幅に減り、住宅購入が少し身近になったと言えるでしょう。新規の借り入れはもちろん、借り換える方も多く見受けられ、「ゼロ金利」「マイナス金利」のメリットを享受している方も多いようです。
また、低い金利を活用して、不動産投資を始めるサラリーマンや高齢者が増えたといわれています。マンションやアパートを数十棟も持つ「メガ大家」も誕生し、給与や年金以外の収入源となっている方もいるようです。

デメリットは、
預貯金で資産を増やしづらい。

続いて、デメリットですが、銀行や郵便局にお金を預けておいても受け取る利息は、ごくごく少額ですので、普通預金はもちろん、定期預金でもほとんど増えません。バブル以前を経験された方にとっては、昔の定期預金と今の定期預金は全く印象が異なるものでしょう。
資産を増やすという観点では、投資信託など幅広い金融商品について考えるのも1つの選択肢となっています。国もその流れを後押しすべく、投資から得た利益を期間限定で非課税にできる「NISA」や「つみたてNISA」、投資利益が非課税になるだけではなく毎月の掛金も控除の対象になる「iDeCo」といった税制優遇制度を用意しています。
現金を「借りる」は有利、「増やす」は不利といった現状を理解したうえ、お金との付き合い方を改めて考えてみてはいかがでしょうか?

  • 2018年8月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

私の暮らしはどう変わる?

例えば、住宅ローンを返済されている方で、資金に余裕がある場合、繰上返済をして負債を減らすのも1つの考え方ですが、これほど低金利になると、無理に返済せず、手元の自由な現金を充実させたり、その分を住宅ローンの金利を上回るリターンが期待できる金融商品を購入したりすることも選択肢となります。ローンと資産、収入と支出のバランスについて見直してみても良いでしょう。

シリーズの記事一覧を見る

関連記事

家計