ふるさと納税は、あくまで「寄付」。
寄付した金額-2,000円分の減税を受けられる制度

2008年にスタートし、10年が経過したふるさと納税。そもそもの狙いは「地方創生」。税制優遇を行うことで、地方自治体への寄付を促進し、育ててくれた故郷や応援したい自治体へ納税者が貢献できる仕組みとして導入されました。

ふるさと納税は「納税」とはあるものの、実際には「寄付」です。自治体に対して寄付をすると、1年間の寄付額の合計から2,000円を引いた分(ふるさと納税対象額の範囲)が寄付金控除の対象になり、住民税や一部所得税が減額されます。
ふるさと納税を行うと、現在住んでいる自治体に納める住民税額が下がるので、あなたが住んでいる自治体の税収が減ってしまうという問題があります。税収の多い首都圏などで働く人が、税収の少ない地方自治体にふるさと納税するのはまだしも、税収が十分でない地方自治体から税収が流出するのはむしろ問題と言えます。

寄付金額は10年で45倍!
人気の裏に、過度な返礼品競争

総務省のサイトには、ふるさと納税の狙いが次のように整理されています。
1.納税者が寄付先を選択しその使われ方を考えるきっかけとする。
2.生まれ故郷やお世話になった地域、応援したい地域を応援できる。
3.自治体が取り組みをアピールすることで自治体間の競争が進む。

しかし、こうした狙いとは異なる目的で寄付が行われているのが現実です。その理由を考えてみましょう。

初年度である2008年度に81億円だった寄付金額は、2017年度には45倍の3,653億円まで膨らみました。特に、ここ5年ほどは大きな伸びを示しました。この人気急騰の背景にあるのは、ふるさと納税を行うと受け取れる「返礼品」の存在です。
多くの地方自治体では、ふるさと納税に返礼品を準備しています。地方自治体にとっては、「本来得ることができなかった寄付が集まる」、納税者にとっては「負担金実質2,000円で返礼品が手に入る」といった構図となっています。この構図が、地方自治体による過度な返礼品競争の問題の原因となっています。
そもそも返礼品は、ふるさと納税制度の普及促進に加え、ふるさと納税を通して、その自治体の特産品である農産物や海産物、工芸品などを広く紹介するというねらいがあると言われています。

しかし、返礼品を目当てに寄付を行う納税者を取り込むため、自治体間の競争が激化しています。寄付額に対する価値が5割、6割、中には10割を超える返礼品や、その自治体と無関係の海産物・農産物、ビール、海外旅行券、商品券、食事券、パソコン、家電などを用意する自治体もあります。

こうした状況を見かねた総務省は、2017年、「返礼品の割合を寄付額の3割以下、原則地場産品とする」旨の通知を出しました。しかし、相変わらず、寄付額に対して高価な返礼品を提供したり、地場とは無関係の商品券や旅行券などを用意して、寄付を集める自治体が後を絶ちませんでした。
ふるさと納税全体で見ても、返礼品にコストがかかっている分、純粋に自治体の運営のために使われた割合は44.5%にとどまっています。また、2018年9月1日時点で、1,788の自治体の中で、返礼割合が3割を超えている自治体が246、地場産品でない品物を返礼品としている自治体190、という調査結果が発表されています。

早ければ2019年4月から新制度へ。
メリットとデメリットは?

総務省は現在、返礼割合が3割超の返礼品や、地場産品などでない商品やサービスを返礼品としている自治体への寄付はふるさと納税として認めないものとする、というルールの導入を検討しています。ふるさと納税として認められなければ、寄付をしても住民税などの控除を受けられなくなります。
2019年の通常国会に地方税法改正案の提出を目指す予定で、早ければ2019年4月から新制度に変わるとみられています。

メリットとしては、金額でなく、自治体の魅力を前面に出した競争が起きてくるということでしょう。地場の商品に限定されることで、その自治体の中でお金が落ちるというメリットもあります。また、ふるさと納税で受入れた寄付のうち、自治体運営の資金に回る割合が増えることも、社会全体として考えればメリットでしょう。

一方、デメリットとしては、例えば、人気のある農産物や海産物などが獲れる自治体に寄付が集まり、魅力をアピールできない自治体には税金が集まりにくくなることが挙げられます。自治体側は、何としても魅力を見つけ出す、あるいは作り出す努力が求められます。それができなければ、財政的にますます厳しくなる自治体が出てきてしまうかもしれません。しかし、自治体が地場の隠れた名産品を発見するきっかけになれば、デメリットをメリットに変えることも可能です。

私の暮らしはどう変わる?

法改正されることは、これまで節税テクニックのように高還元率の返礼品を狙ってふるさと納税を行ってきた方にとっては、魅力がダウンすることになります。予定通り法改正が行われるとすると、高還元率の返礼品を期待していた人にとっては、2018年の12月末までが最後のチャンスとなります。
しかし、過度な返礼品がなくても節税のメリットが十分に感じられる制度です。今後は、返礼品だけではなく、出身地や応援したい自治体を選んで応援するという、本来の目的もふまえて、上手に活用してみてはいかがでしょうか?

豊田 眞弓

豊田 眞弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。FPラウンジ代表、短大非常勤講師。マネー誌ライター等を経て、94年より独立系FP。現在は、個人相談のほか、講演や研修、マネーコラムの寄稿などを行う。「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「50代・家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。

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