2019年10月から最低賃金が上がり、東京や神奈川では時給1,000円を超えました。私たちの働き方への影響はあるのでしょうか。メリット・デメリットを見ていきましょう。
過去最大のアップ!全国最低賃金は平均901円に
「最低賃金」とは、最低賃金法で定められた賃金の下限です。
まず、経営者と労働者の代表、学者による審議会で引上げ額の目安が議論され、年1回物価や経済情勢などに応じて見直しが行われます。そして、その金額を参考に各都道府県が議論して最低賃金を決めます。
こうした流れで、2019年10月より最低賃金の平均額は前年と比べて27円上がり、全国の平均時給が901円※1となりました。引上げ額は過去最高です。
三大都市圏では28円上がり、東京都は1,013円、大阪府は964円、愛知県は926円になりました。
東京都と神奈川県は初めての1,000円超えです。
最低賃金が上昇傾向にあるのは、政府が2015年以降、「毎年3%程度上げていく」方針を打ち出してきた影響もあります。
しかし、国際的にみるとフランスやイギリスなど主要先進国と比較して日本はまだ低いのが現状です。
また、全国1位の東京1,013円と最下位の12県(東北、四国、九州の一部や沖縄県など)の最低賃金790円では223円もの差があります。
そのため、「経済財政運営と改革の基本方針」では、地域間格差を縮小するために「早期に最低賃金全国平均1,000円を目指す」という方針が打ち出されています。
- ※1 労働者数を加味して算出した全国加重平均額
- 出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」https://happy-fp.com/backstagemezasu/toyoda.htm
最低賃金引上げのメリット・デメリットは?
最低賃金の引上げが進むと、どんなメリットがあるのでしょうか。
まず、国民全体の所得が上がると、家計や生活の安定につながります。
生活が安定すれば消費が活性化し、景気が良くなります。これがメリットの1つです。
また、最低賃金の引上げによって、正社員と非正規雇用(派遣社員や契約社員、嘱託社員、パート、アルバイトなど)の格差の縮小が進んでいきます。
一方、デメリットは、企業(特に中小企業や小規模事業者)にとって大きなコスト増加になることです。
深刻な人手不足の中のコストアップは、企業によっては死活問題となる可能性もあります。
そのため、政府は「最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業」として生産性向上のための設備投資の一部負担や専門家による業務改善相談などのサポートを行っています。
また、企業が受ける影響はもうひとつあります。配偶者控除が適用される範囲で労働時間をコントロールする、パート・アルバイト社員たちの勤務時間抑制です。
最低賃金が上がればパート・アルバイト社員などがこれまで以上に働き、人手不足が解消できるのではと期待していた企業にとっては、逆に労働時間を抑えるパート・アルバイト社員が増えると大きなマイナスとなってしまうのです。