法改正で65歳までの積立が可能に!

2020年の法改正により、2022年5月からiDeCoの加入可能年齢が、原則65歳になるまでになりました。

これまでは、iDeCoに加入できるのは、「60歳になるまでの国民年金被保険者」と定められていましたが、その年齢要件が撤廃。「国民年金被保険者であること」が加入の主な要件となり、結果、65歳になるまで加入できるようになりました。

また、今回の改正で、海外居住者でも国民年金の被保険者であれば、65歳になるまで加入できるようになりました。

iDeCoに加入できる期間
  • 図表1
  • 出典:厚生労働省Webサイト「企業型DC・iDeCoの加入可能年齢の拡大(2022年5月1日施行)」

60歳以降もiDeCoの加入対象者となった人を整理すると以下の通りです。

  • 60歳以降も社会保険に加入しながら働く会社員・公務員(第2号被保険者)
  • 自営業者・専業主婦(夫)など(第1号保険者・第3号保険者)で、60歳以降に国民年金に任意加入する人※1
  • 海外居住者で国民年金被保険者(任意加入)
  • ※1国民年金が満額になる納付期間40年を満たしていない、受給資格期間の10年を満たしていないなどで、年金の増額を希望する人は60歳以降も任意加入できます。

ただし、公的年金を65歳より前に繰上げ受給した人や、iDeCoの老齢給付金を受給し始めた人は対象外です。

iDeCoは、50代からでもより加入しやすい制度に

iDeCoの資産は、一時金または年金、金融機関によってはその併用という形で受け取ることができます。受取可能となる年齢は、以下のように60歳の誕生日前日までの通算加入者等期間によって異なります。

iDeCoの受給開始年齢
  • 図表2
  • iDeCo公式サイトをもとに筆者作成。

50代でiDeCoに新規加入すると、60歳時点では通算加入者等期間が10年に満たないため、60歳から受け取ることはできません。そのため改正前は、60歳以降は新規に掛金の積立(拠出)を行えず、運用のみを行う運用指図者※2となる、「空白期間」が発生していたのです。
掛金を積立(拠出)できる期間が短いと、運用資金も少額になるため、口座単位で毎月かかる運用管理費用が割高になる可能性がありました。

  • ※2掛金の積立(拠出)を行わず、それまでに積み立てた資産の運用のみを行う人のこと。

しかし、改正で65歳になるまで加入が可能になったことで、60歳以降も積立(拠出)を続けることができ、50代でiDeCoを始める人の「空白期間」がなくなりました。50代からでも、より加入しやすい制度になったと言えます。

たとえば、55歳でiDeCoを始めた場合で見てみましょう。

<改正前>

  • 積立期間:5年(60歳まで)
  • 受給可能年齢:63〜70歳まで

積立期間は55〜60歳までの5年間のみとなります。最短の63歳で受け取る場合は、60歳から3年間は新規の積立(拠出)ができず、運用指図のみを行う空白期間が発生していました。

<改正後(2022年5月以降)>

  • 積立期間: 最長10年(65歳まで)
  • 受給可能年齢:63〜75歳まで

積立期間が延びたことで、人によっては65歳まで掛金を積立(拠出)できるようになりました。55歳で始めて、63歳で受け取る場合も、63歳まで社会保険に加入するなどで積立(拠出)を続けられる場合は、空白期間が発生することはありません。

2022年4月から公的年金の繰下げが、「75歳になるまで」になったのと同様に、iDeCoの受取り開始年齢も「70歳になるまで」から、「75歳になるまで」と延長されました(図表3)。
65歳以降も運用を継続したい場合は、75歳までの間で選択できるようになっています。ただし、運用のみを行う期間も、口座管理料はかかります。

受給開始時期の選択肢が拡大
  • 図表3
  • 出典:厚生労働省Webサイト「受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日施行)」

なお、2022年5月以降に60歳以上でiDeCoに新規加入する人は、加入から5年経過以降に受け取りが可能になります。
最長75歳になるまで運用は可能ですので、60代でiDeCoを検討する際には、働き方などによって積立(拠出)期間が短くならないことを確認したうえで始めましょう。

50代でiDeCoをはじめるメリットは?

<試算条件>

  • 55歳から65歳までの10年間iDeCoに加入
  • 年収800万円(所得税率20%)
  • 毎月2万3,000円を積み立て
  • 運用利回り3%

<10年間の運用結果の試算>

  • 積立金額合計:276万円
  • 運用益:約45.5万円

合計:321.5万円

また、iDeCoは節税効果も大きな魅力。掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除が可能です。所得税20%、住民税10%で試算すると、節税額は10年間で以下のようになります。

<10年間の節税効果の試算>

  • 所得税:55.2万円
  • 住民税:27.6万円

合計:82.8万円

このように運用結果と節税効果を合わせると、10年間で元金含めて約404万円の老後資金を準備できるという試算になりました。

55歳でiDeCoを始めたら老後資金はいくら増やせる?
  • 図表4
  • 三井住友銀行サイト「メリットを確認!税軽減シミュレーション」にて試算。
  • 実際の運用結果を示すものではありません。

▼あなたの節税額はどのくらい?
メリットを確認!税軽減シミュレーション

私たちの暮らしはどう変わる?

人生100年時代と言われる昨今、現役時代から老後資金を準備するとともに、できるだけ長く働いて定年後の時間を短くするという視点を持つことも大切です。
こうした時代の流れに合わせ、iDeCoの加入要件が緩和され、条件が合えば65歳になるまで加入可能になりました。運用期間も最長75歳までとなり、50代でiDeCoを始めやすい環境が整ったと言えます。

50代は老後に向けた資産形成を行う上でとても重要な時期です。60歳以降も会社員として働き続ける予定がある人、または国民年金に任意加入する予定のある人は、節税効果のあるiDeCoに加入して老後資金作りにラストスパートをかけましょう。

▼iDeCoの加入診断をしてみよう!
iDeCoシミュレーション

▼iDeCoについてくわしく知りたい方へ
個人型確定拠出年金「iDeCo」とは

▼Webでもお申し込み手続きができる!
三井住友銀行のiDeCo

  • 本記事は2022年4月20日に公開した内容を、2022年10月19日に更新して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

豊田 眞弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相談診断士。FPラウンジ代表。マネー誌ライター等を経て、94年より独立系FP。現在は、個人相談のほか、講演や研修講師、マネーコラムの寄稿などを行う。6カ月かけて家計を見直す「家計ブートキャンプ」も好評。亜細亜大学等で非常勤講師も務める。「50代・家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。

Webサイト:https://happy-fp.com/

シリーズの記事一覧を見る

関連記事

iDeCo,人生100年時代,会社員,年金,退職後