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年金の受給開始年齢〜何歳から? 繰り上げ受給? 繰り下げ受給? 年金はいつ受け取るとお得?〜
2022.10.7 年金用語辞典
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2種類です。
職業によって異なり、以下の図のように2階建てで表現されることが多いです。
【図@】 日本の公的年金制度
1階部分:国民年金
国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての日本国民が加入するものです。
図@のように、公的年金のベースとなっていることから、基礎年金とも呼ばれます。
自営業はもちろんのこと、学生や専業主婦、無職の方なども国民年金に加入する義務があります。
国民年金に加入する方が老後にもらえる年金のことを老齢基礎年金といいます。
2階部分:厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員などが加入するもので、国民年金に上乗せとなります。
厚生年金に加入する方が老後にもらえる年金のことを老齢厚生年金といいます。
年金の受給開始年齢は、原則65歳です。
以前は国民年金が65歳、厚生年金が60歳からでしたが、2013年度から厚生年金の受給開始年齢が段階的に引き上げられています。性別、生年月日により異なりますが、男性は1961年、女性は1966年4月2日以降に生まれた方の受給開始年齢は65歳です。
そのため現役世代のほとんどの方は、国民年金も厚生年金も65歳から受け取れるものと考えて良いでしょう。
年金の平均受給額は以下の通りです。
自営業や専業主婦など(国民年金のみ) …約5万6,000円/月
会社員や公務員など(国民年金+厚生年金)…約14万4,000円/月
出典:厚労省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
国民年金の平均受給月額は、約5万6,000円です。
国民年金の受給額は、保険料の納付月数で決まるため、20歳から60歳までの40年間きっちり保険料を納めたのであれば、約6万5,000円を受け取ることができます。
厚生年金(国民年金分含む)の平均受給月額は、約14万4,000円です。
厚生年金の受給額は、保険料の納付月数と収入によって決まるため、収入が高いほど受給額も多くなります。男女差があり、男性の平均受給月額は約16万5,000円、女性は約10万3,000円です。
現在の年金受給者の年代別の厚生年金受給額の平均として以下のようなデータがあります。
年齢 | 厚生年金受給額(月額) |
---|---|
60〜64歳 | 約7万7,000円 |
65〜69歳 | 約14万3,000円 |
70〜74歳 | 約14万6,000円 |
75〜79歳 | 約15万2,000円 |
80〜84歳 | 約16万1,000円 |
85〜89歳 | 約16万3,000円 |
【図A】(年代別)厚生年金受給額の平均
年齢によって違いがあるのは、法律の改正が影響しています。
厚生年金はもともと60歳から支払われていましたが、法律の改正により受給開始の年齢が段階的に引き上げられており、同時に支給額が引き下げられているからです。
また、今後も若い方ほどもらえる年金額が減っていく可能性があります。
それは、日本の年金制度が賦課(ふか)方式と呼ばれるものだからです。
賦課方式とは、今の現役世代が納めた保険料を、今の年金受給世代に老齢年金として支払う方式です。現役世代が年金受給世代に仕送りをしているというイメージです。
日本はまだまだ高齢化の進行が予想されます。そのため、平均受給額は今後も少しずつ下がっていく可能性があると考えておくほうが良いでしょう。
それでは、実際に私たちに支給される実際の年金額(国民年金+厚生年金の合計)は、月額でいくらになるのか年収別にみてみましょう。先ほど解説した通り、厚生年金は、保険料の納付月数と収入で受給額が変わります。
加入時期によっても計算式が異なり複雑なため、以下に年収別での早見表を用意しました。
なお、以下の早見表は大学生の間(20歳からの2年間)、国民年金保険料の納付が猶予される「学生特例納付制度」を利用し、卒業から60歳定年時までの38年間、厚生年金(国民年金含む)に加入した場合の目安額です。
平均年収は額面で、今現在のものではなく、最初に就職してから退職するまでの全期間の平均額で確認してください。また、年金額には上限があるため、平均年収が750万円以上の方も750万円の欄を確認してください。
下の表は横にスクロールできます
在職中の平均年収 | 国民年金 | 厚生年金 | 合計額 |
---|---|---|---|
350万円 | 約6.2万円 | 約6.2万円 | 約12.4万円 |
450万円 | 約8.0万円 | 約14.2万円 | |
550万円 | 約9.7万円 | 約15.9万円 | |
650万円 | 約11.6万円 | 約17.8万円 | |
750万円 | 約12.7万円 | 約18.9万円 |
【図B】(年収別)年金受給額の早見表
上記の早見表は家族がいる場合などは特に考慮せず、一人で38年間国民年金・厚生年金に加入した場合を想定して作成しています。特に単身者で、収入別の年金受給額を知りたいという方は参考にしやすいでしょう。
上記の早見表に限らず、50歳以上の方は、「ねんきん定期便」の確認をおすすめします。
60歳まで年金保険料を納めた場合の年金見込額が記載されており、現時点で最も正確な受給額を確認できるツールです。
早見表でざっくりと自分の年金受給額が把握できても、年金がどれくらい下がってきているのも事実です。将来どれくらい下がるのか、はっきりとしたことはわかりませんが、およそどれくらい下がる可能性があるのかを確認するために、直近10年間の年金受給額推移をみてみましょう。
国民年金+厚生年金の月額平均 | |
---|---|
平成23年度 | 15万2,396円 |
24年 | 15万1,374円 |
25年 | 14万8,409円 |
26年 | 14万7,513円 |
27年 | 14万7,872円 |
28年 | 14万7,927円 |
29年 | 14万7,051円 |
30年 | 14万5,865円 |
令和元年度 | 14万6,162円 |
2年 | 14万6,145円 |
上記のように、毎年必ず下がっているわけではないもののゆるやかな減少傾向にあります。平成23年度から令和2年度までの10年間で、月額6,200円程度下がっています。年間にすると約7万5,000円にもなるので、小さな差とはいえないですね。
さて、実際にいくら年金をもらえるのか知るためには、年金の計算式を知る必要があります。
国民年金の計算方法は簡単で、以下の計算式で求められます。
78万900円×保険料納付月数÷480=国民年金受給額(年額)
満額もらえる場合は年78万900円、月約6万5,000円です。
保険料の免除期間がある場合や、年金の繰り上げ受給、繰り下げ受給をする場合は計算が異なります。
個人でもらえる年金額も気になりますが、大切なのは世帯でいくらもらえるのかです。
個人の受給額では心もとないと感じても、夫婦の受給額が分かると安心できることもあります。
以下に、ケース別の世帯受給額※をまとめましたのでご覧ください。まず、共働き夫婦の場合をみてみましょう。
共働き夫婦(夫:年収550万円/妻:年収350万円)の場合、夫も妻もどちらも国民年金と厚生年金を受給することができます。
先ほどの早見表を参考にしてみると、夫は15.9万円、妻は12.4万円なので、夫婦で合計すると年金の支給月額は28.3万円です。
一方、夫の年収は変わらずとも、妻が専業主婦で厚生年金の受給がないパターンをみてみましょう。
その場合、妻の厚生年金額がなくなるので、夫は15.9万円と変わらないですが、妻の受給額は6.2万円となります。夫婦で合わせると22.1万円です。
今度は、夫も妻もどちらも厚生年金に加入していないパターンを見てみましょう。この場合、どちらも国民年金しか受給できず、金額は6.2万円で同じなので、夫婦の合計額は12.4万円です。
あくまで平均額ですが、夫婦共に厚生年金が受け取れる共働き夫婦の受給額が最も高く、国民年金のみの自営業の夫婦が最も低いことがわかります。
もらえる年金額の目安がわかったところで、老後の生活費の目安も確認しておきましょう。
【老後の生活費(夫婦)】
最低限の生活費…約22万1,000円/月
平均的な生活費…約25万6,000円/月
ゆとりある生活費…約36万1,000円/月
生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要な生活費の最低月額は、約22万、ゆとりある生活を送るのに必要な月額は約36万円です。
夫婦でもらえる年金額と比べると、最ももらえるであろう会社員夫婦であれば、平均的な生活を送れる可能性が高いことがわかります。
夫婦で老後の生活をする場合、共働きであれば平均的な生活を送れる可能性が高いことはわかりましたが、とはいえ子育てなどもありハードルが低いとは言えないかもしれません。そんな時は、もらえる年金額を増やすための工夫をしてみると良いかもしれません。以下では、年金の受給額を増やすためのコツをいくつか紹介します。
国民年金は20歳以上のすべての国民に加入義務があるものの、経済的理由で保険料の払い込みが難しい場合は、猶予や免除を申請することができます。ただし、猶予もしくは免除された期間に応じて、国民年金の受給額は少なくなってしまいます。
この場合でも、後から保険料を払い込む「追納」することで将来の受給額を増やすことができます。
年金の追納については以下の記事でも詳しく説明していますので、気になる方はぜひご確認ください。
年金は追納した方がお得〜年金保険料を追納すると受給額が増える仕組みを解説
また、国民年金は、保険料を10年以上支払っていないと受け取ることができません。60歳までにこの受給資格を満たしていなかった場合や、満額が支給される40年分の保険料を支払っていない場合は、「任意加入」することで年金を受給することができます。任意加入は、60歳以降にも保険料を支払うことで国民年金の保険料を追加で支払える制度です。あと少し保険料を支払えば受け取れる…という場合には、利用してみるのもひとつの手段でしょう。
シンプルですが、現役時代の収入を増やすことで将来の年金受給額を増やすこともできます。先ほど解説した通り、厚生年金は現役時代の年収によって受給額が左右するので、収入が増えれば増えるほど受給額も大きくなります。
とはいえ、急に収入を増やすというのも難しいでしょう。考え方の一つとして、「年金のための年収アップ」を現役時代の選択肢のなかに入れておくと良いかもしれません。
定年後も再雇用などで働き続け、厚生年金の保険料を支払うことで、将来の受給額を上げることもできます。もちろん、働いて得られる収入は60歳までと比べると少なくなる可能性が高いですが、長く働くことでリタイア後の年金額が増えるのは、ひとつの選択肢として考えられるでしょう。
年金を65歳以降に受け取ることで、1回あたりの受給額を増やすことができます。これを年金の繰り下げ受給といいます。年金の繰り下げ受給は、年金を受け取る時期を1ヵ月遅らせるごとに0.7%受給額が増える、というものです。2022年4月1日以降は75歳まで繰り下げることができるので、最大の増額率は0.7%×10年(120ヵ月)=84%となる計算になります。
長生きすればするほどもらえる総額が増える、というものですので、自分がいくつまで働けるのか、家族とも相談をして繰り下げ期間を決めるのが良いでしょう。
なお、繰り下げ受給だけでなく繰り上げ受給も可能です。詳しくはこちらの記事でも解説しています。
年金の受給開始年齢〜何歳から? 繰り上げ受給? 繰り下げ受給? 年金はいつ受け取るとお得?
国民年金や厚生年金だけでは足りない場合は、プラスで個人年金保険やiDeCoを利用するのもひとつの手段です。
個人年金保険は、国民年金や厚生年金とは別に、任意で加入し保険料を支払うことで年金をプラスでもらえる私的年金です。保険会社だけでなく、銀行でも取り扱いがあります。
また、iDeCoも任意で加入するタイプの私的年金ですが、個人年金保険とは少し性質が異なります。自分で掛け金を設定し、さらに運用も自分で行います。最終的に掛金と運用益を受け取れる仕組みですが、iDeCoの特徴は運用益にかかる税金が非課税になる点です。
iDeCoについて詳しくは以下の記事でも紹介していますので、気になった方はぜひご覧ください。
iDeCo(イデコ)って何? 〜基本の運用方法をイラストで理解しよう〜
個人年金保険やiDeCo以外にも、中長期的な資産運用で将来のお金を用意する方法もあります。特におすすめなのがつみたてNISAで、積立型の投資信託ですがiDeCo同様こちらも運用益に対する税金が非課税になります。さらに手数料も抑えられているものが多く、資産運用の経験がない人でも取り組みやすいことが特徴です。老後のお金のため以外にも活用することができるので、こちらも選択肢のひとつに入れておくとよいでしょう。
つみたてNISAとは? メリット・デメリット、向いている人を解説!
小規模企業共済は、小規模企業の役員や経営者、個人事業主が加入できる積立型の退職金制度です。月々の掛金は1,000〜70,000円までの間であれば500円単位で自由に設定することができ、掛け金は全額所得控除できるため、節税効果も期待することができます。
公的年金には、全ての日本国民が加入する国民年金と、会社員や公務員などが加入する厚生年金があります。年金の受給額と老後の生活費を考えると、年金だけで十分といえる世帯は少ないのではないでしょうか。
公的年金以外にも、老後資金を貯める方法はいくつかあります。定期預金などの貯蓄や私的年金である「iDeCo」、長期積立・分散投資を支援する非課税制度である「つみたてNISA」などもうまく活用して、老後に備えましょう。
記事提供元: 株式会社ぱむ