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2021.10.13理想のワークスタイル
胸の部分のあしらいが印象的なポケットTシャツや、カラフルでポップなテキスタイルが特徴的なポーチ。アパレルブランド「CLOUDY」のアイテムは、どれも太陽の日差しをたっぷりと浴びたかのように輝いています。
銅冶さんは、証券会社からアパレル業界に転身した、異色の経歴の持ち主。彼はなぜ、「CLOUDY」を立ち上げようと思ったのでしょうか。
「きっかけは大学時代、卒業旅行でケニアを訪れたことにあります。スラムで貧困にあえぐ人々の姿を目の当たりにして、自分にできることはないかと思いました」
就職後もその想いは風化することなく、入社3年目の2010年、アフリカへの支援を目的にNPO法人Dooooooooを設立。その翌年、東日本大震災が発生しました。銅冶さんは、物資を支援すべく被災地に赴きます。
「毎週末、被災地を訪れて物資を届ける。これを繰り返すうちに、被災者の方が本当に必要としている支援とは何か考えるようになりました」
自分の考えを押しつけるのは、本当の支援とは言えない。銅冶さんは「支援のあり方」を追求し、「現地の状況や環境、そして人々の気持ちを理解して初めて、本当に必要な支援ができる。現地の方と一緒に考え、一緒にアクションを起こそう」と決意しました。
被災地への支援活動がメディアに取り上げられたのをきっかけに、会社の同僚や友人たちもNPOの活動に賛同してくれるようになりました。
「ありがたいことに、寄付金もいただけるようになりました。より大きな支援が行えるようになり、アフリカで学校建設などの活動を進めていきました」
忙しくも充実した日々を送っていた銅冶さんですが、働き方について考えさせられる出来事が起こります。
「ある日、会社の部下に『最近の銅冶さんは、NPOの活動のほうが楽しそうですね』と言われました。部下にそのような感情を抱かせるのは上司として失格ですし、アフリカの支援活動を本格的に行おうと決意しました」
銅冶さんはすぐさま会社を退職し、株式会社DOYAを立ち上げます。
「私が考えたのは、アフリカで暮らす女性たちの雇用促進です。単に技術指導をするのではなく、彼女たちが仕事に必要な技術を身につけた後、継続して仕事に就けるような仕組みを目指しました」
「CLOUDY」は、この想いを実現するために立ち上げたそうです。
「現地に工場を設立し、女性たちが縫製したアイテムを日本に輸送して販売する。そして、売上の1割をNPO法人に還元し、現地の教育支援や雇用促進などの活動に用いる。これが、私が考えた循環型のビジネスモデルです」
活動を継続していくには、何よりも「CLOUDY」がブランドとして魅力的でなければならない。銅冶さんは、ブランディングに多くの時間を割きました。
アフリカへの想いを前面に出すのではなく、ブランドの魅力で勝負する。銅冶さんの考えが功を奏し、年々、売上は拡大。昨年はコロナ禍にもかかわらず、3億円もの売上を達成しました。
NPO法人の設立から現在に至るまで、銅冶さんは一度も融資を受けたことがありません。すべてを自己資金と寄付金でまかなってきたそうです。
「証券会社を退職した時、手元には給料2年半分の預金がありました。これを活動の資金にあて、入ってくるお金もすべて会社に注ぎました。なので、会社を立ち上げてから3〜4年は、自分の給料としてもらっていません」
「毎朝5時に起床して宛名書きを行い、午前中いっぱいかけて発送作業を進めていきました。泥臭いこともいとわず、自分の手で担う。そんな働き方を続けたからこそ、自己資金と寄付金のみでここまで来られたのだと思います」
大切なのは、アフリカの人々に寄り添いながらブランドを育てていくこと。現地で働く人たちのスピードも大事にして、緩やかに右肩上がりで成長していくことを目指しました。
「売上の一部は、工場や学校建設、人材育成のために使っています。現在、ガーナに5つの工場があり、約520名の方が働いています。人材育成により、ガーナの人々が働く力を身につければ、やがて弊社以外でも働くようになるでしょう。このように、人と資金を循環させていくことが私の目標です」
また、短期ではなく中長期的な視点から、プライベート・エクイティ・ファンドなどで資産運用を行っているという銅冶さん。今後はESG投資にも力を入れていきたいそうです。
「資産運用は『資金を増やす』だけではなく、『未来へのヒントを得る』など感覚を養う意味でも効果があると考えています」
銅冶さんは現在の働き方に、どのぐらい満足しているのでしょうか。点数をつけていただいたところ、「100点満点です」という答えが返ってきました。
「うまくいかないこともあるし、壁にぶつかることだってある。それでも、常に全力で考え行動してきたから、納得のいく毎日を送ることができています」
かつて、学生時代にケニアのスラム街を訪れ、貧困にあえぐ人々のために何かしたいと思ったこと。東日本大震災の被災地に物資を届けた経験から、自分の考えを押しつけるのではなく、相手に寄り添いながら本当に必要な支援を行う大切さを学んだこと。さまざまな経験を通じて、銅冶さんならではのスタイルを確立させました。
「私たちの活動が、現地の人々が良い人生を歩んでいくための“きっかけ”になればと願っています。そして日本で暮らす人々にも、何かしらの“きっかけ”を与えられたらうれしいですね」
最後に、「理想の働き方を実現したい」と考えている方に向けて、2つのアドバイスをいただきました。
「もしもソーシャルビジネスに興味があるなら、関わる人と一緒に“ものさし”を作ってほしいと思います。ものさしとは、お互いに歩み寄り、お互いを理解するためのもの。これによって、押しつけではなく本当に必要な支援を生み出せるはずです」
「夢の実現のために資産運用を考えている方には、応援したい事業や企業に投資するのをオススメします。たとえば、理念や取り組みに共感した企業を選ぶのも、良い方法だと思います。資産が増える喜びに加えて、投資先の企業が成長していくワクワク感も得られますよ」
長く植民地として支配されてきたアフリカの人々は、歌と踊りが唯一の表現手段でした。
「アフリカの伝統衣装が色鮮やかなのもまた、彼ららしさを示しています。迫害を受けながらもポジティブに生きてきたアフリカの人々から、私たちは多くのことを学べるでしょう。この記事を読んでくださったみなさんにも、アフリカの人々のように明るく、そして力強く、自分らしい人生を切り拓いてほしいです」