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2019.2.6定年後のリア充診断
現役時代に会社や団体などの組織で働いていると、人事異動で職場が変わることはありますよね。しかし、定年後の「第二の仕事」については、人事異動のレベルをはるかに超える、ある意味あらゆるものごとが一新されるような環境の変化だと考えたほうが良いでしょう。そして、これまでの経験が通用しない場面も多々あるということを事前に認識しておくことが大切だと思います。そこには「新人としての覚悟」が求められます。「そんな大げさに考えなくても、すぐになじめる」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば、部下のいる管理職から離れ、上司のいる一兵卒になるという場合も多いようです。さらに、新たな職場の上司が、年下の後輩やかつての部下ということも、よくあるケース。突然、立場が逆になればお互いに戸惑うのも当然です。現役時代にキャリアを積んでいた人ほど、上から目線になりがちでトラブルになることも。事前にそのような状況が予想されるなら、現役時代からの付き合い方に注意もできますね。
まずは、あなた自身が第二の職場はどうあってほしいのかイメージしてみてください。できれば、紙に書き出して、幾度も繰り返し考え、イメージをより具体的にまとめていってください。この作業を通じて、「こういう第二の職場は避けたい」という、忌避したい条件を具体化していきます。
そして、その条件を再就職予定の会社や団体、具体的には上司や同僚、人事部門に伝えることが大切だと思います。雇用する側も、支障がない限りはあなたの希望をかなえたいと考えていることでしょう。あなたが、第二の職場でストレスなく働き、これまでの経験を十分に発揮してくれることを期待しています。
それでも、すべての人が満足できる条件で働けるとは限りません。意に反するような第二の職場となった場合には、その職場に打ち解けられるよう、自ら最大限の努力が必要となります。また、別の職場を探すという選択肢もあるかもしれません。その面でも、退職前に自分自身の希望と許容範囲を明らかにしておくことが重要です。
「時が経つのを忘れるほど没頭できる」といった仕事が理想です。それは、一生涯できる仕事=天職とも言えるのではないでしょうか。すでにそのような仕事に出合っている人は幸せです。まだ出合っていない人も、そんな天職とも言える仕事に出合ったり、自分で見つけ出したりすることができれば、第二の職場であろうとも仕事に打ち込め、その結果、職場になじむことができるのではないでしょうか。現役時代から、その芽を見つけておくことも、大事なことです。
また、定年後も会社や団体といった組織に雇用されるという手もありますが、組織から一定の距離をとるフリーランスになるというのも選択肢のひとつですね。自分の適性に合わせた働き方を選んで、素敵なセカンドキャリアを描きましょう。
井戸 美枝(いど みえ)
CFP®、社会保険労務士。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞の連載記事の執筆をはじめ、講演、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を紹介。近著に『定年男子 定年女子』共著(日経BP社)、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)など。