前の記事
定年後、引きこもりがちになるのはどんな人?
2019.11.6定年後のリア充診断
定年後の暮らしを想像してみてください。
現役時代に多くの時間を費やしていた仕事がなくなれば、毎日が休日のようなもの。生活の中心が自宅となり、現役時代に比べると日常にメリハリがなくなる方も多いのではないでしょうか。
定年後を充実させるためには、「趣味を持つと良い」とよく言われます。現役時代から続けている趣味はもちろん、新しく趣味をはじめてみることは、定年後の暮らしを彩る要素となるでしょう。
ただし、365日全てを趣味で充実させるというのは、あまり現実的ではありません。
そこで、私がおすすめしたいのが、日常生活そのものの満足度を上げることです。
特別なイベントがなくても、暮らしの中に楽しみを見つけられれば、日々をより充実させることができるからです。
その基本となるのが、「食」「睡眠」「運動」です。
3食をバランス良く楽しんで食べ、よく眠り、適度に運動する。この3つは、誰にとっても必要なことであり、心身の健康にとって大切な生活習慣だと言われています。
さらに言えば、「食欲」と「睡眠欲」は、人間の3大欲求と言われるうちの2つ。
そして、「運動」をすることで、食はさらにおいしく感じられ、睡眠の質も上がると言われていています。
定年後、この3つの満足度を上げ、良質な生活習慣を身につけることが、充実した日々につながるのではないでしょうか。
「食」「睡眠」「運動」の3つについて、それほどお金をかけなくても、満足度を上げる方法をご紹介します。
まず、「食」について。3度の食事を楽しく、おいしく食べることが基本です。1日に楽しみが3回あるということは、それだけで、単調になりがちな定年後の生活に彩りをもたらしてくれます。
そして、食材を選び、それを調理する時間そのものを楽しむ「つくる楽しみ」があると、より満足度が高まるのではないでしょうか。
食材をスーパーで選んだり、好みの味付けに工夫してみたり。さらには、手間暇かけてぬか漬けを仕込んだり、プランターで野菜やハーブを育てたりといった、一歩踏み込んだ楽しみ方もあります。そこまでいけば、「食」は365日を充実させる趣味の1つとも言えるでしょう。
次に「睡眠」です。より良い睡眠をとるためのポイントは、毎朝決まった時間に起きて、体内時計のリズムを整えておくこと。
特に高齢になると、夜中に何度も目覚めたり、早朝に目覚めたりといった睡眠障害が起こりやすくなりますが、その原因として体内時計のズレが指摘されています。
定年後、朝早く起きる理由がないからといって、生活リズムが乱れないように注意しておきましょう。
そして3つ目の「運動」。定年後は外出する機会が減りがちなので、体を動かすことを習慣化することが大切です。アクティブに日中を過ごすことで、睡眠の質を上げる効果も期待できます。
日頃、運動の習慣がない人は、毎日の暮らしのなかに運動を取り入れる工夫をするのがおすすめです。
例えば、近所の買い物や用事には歩いて行ったり、お風呂上がりにストレッチや筋トレをしたり。また、お気に入りの散歩コースをつくって、少し早歩きで毎日散歩をするのも手です。
適度な運動を取り入れることは、気分転換やストレス発散にもつながるでしょう。
これらの「食」「睡眠」「運動」を充実させるための習慣は、現役時代から取り入れられるものばかりです。できるものからはじめてみてはいかがでしょう。
そして、お金をあまりかけずに充実した日常生活を過ごすことができれば、旅行や観劇、美術館巡りに行くなど、メリハリのあるお金の使い方ができます。
特に「旅行」は、「老後にしたいこと」のアンケート調査でも、しばしば上位にランクインする人気のイベント。時間がたっぷり定年後だからこそ、@計画を練る、A実際に行く、B思い出を振り返る、と一粒で3度楽しんでください。
日常はお金をかけずに充実させる一方で、旅行などの特別なイベントにはある程度のお金をかけてみる。
そんなメリハリのあるお金の使い方が、定年後をより充実させてくれるでしょう。
充実した定年後生活を送っている方を見ていると、特徴の一つに、自分で自分の暮らしをコントロールするような「マメさ」=「丁寧さ」があるように感じます。
定年後は、時間だけはたっぷりあります。その時間をどう使うかは、自分次第です。
現役時代のうちから、どんな定年後を過ごしたいかをイメージしておき、それを実行できるように準備しておきたいものです。
そして、定年後を充実させるためには、お金をしっかりと確認・管理しておく「マメさ」も重要。
自分が満足できる暮らしを送るには、どれくらいお金が必要か。
一方、自分の受給する年金とその他の資産形成で定年後にどれくらいお金を使えるか。
現役時代から具体的にシミュレーションしたうえで、定年後に使えるお金を増やしていく「マメさ」が、定年後の生活をより意義あるものへと導いてくれるでしょう。
お金は、人生をより充実させてくれる力強い味方の1つです。定年後の楽しみのために、現役時代からの資産形成を考えてみてはいかがでしょうか。
井戸 美枝(いど みえ)
CFP®、社会保険労務士。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞の連載記事の執筆をはじめ、講演、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を紹介。近著に『定年男子 定年女子』共著(日経BP社)、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)など。
オフィシャルサイト:https://mie-ido.com