相談者:飯田良子さん(仮名)
職業:専業主婦
年齢:45歳
世帯年収:約500万円
2019.9.11お金のしくじり失敗談
職業:専業主婦
年齢:45歳
世帯年収:約500万円
今回ご相談にきた飯田さんは、『老後に向けてまとまった資金を準備しなきゃと思っています。それで投資に興味を持ったのですが、株は損をすると聞くし、お金を全部失ってしまうかもしれないと思うと怖くて…』というお悩み。
両親から“お金は貯蓄するもの”と言われて育ったため、預貯金で老後資金を蓄えようと考えていたものの、毎月コツコツ3万円を貯め続けた通帳を夫と見てみると、残高は10年で360万1,800円。
『利息が1,800円しかついていないことに愕然とした』とのこと。
飯田さんは、『投資などで資産運用をしたほうが良いのかなという気持ちにもなりますが、勧誘にくる証券会社の人の話を聞いても結局判断できず、やっぱりムリだと断ってしまう』そう。
『両親も“投資はあぶない”と言っているし、証券会社が言う商品を退職金で買って大損した、という話も雑誌で読んだことがあります…』
飯田さんには、投資に対してネガティブなイメージがまとわりついていました。
心のどこかでは「投資は必要」と感じているのに、やはり「怖い」という気持ちが先に立ち、なかなか一歩を踏み出せない。ただただため息をつきながら、利息が付かない通帳を眺める日々を過ごしていたようです。
飯田さんが不安になるのも無理はありません。日本には、貯蓄が第一という考え方が強く、投資はあぶない・損をするというイメージが根強く残っています。
1990年前後は、定期預金金利が5〜6%もあり、損をすることなく貯蓄で確実にお金を増やせていました。そういう時代を経験した飯田さんの両親世代は、リスクをとってまでお金を増やす必要はない、という考えの人も多かったかもしれません。
しかし今は時代が変わり、定期預金の金利は0.01%ほど。残念ながら、預けるだけではお金は増えません。もし、飯田さんが貯め続けてきた毎月3万円を投資で運用していたら、どうなっていたでしょうか。
金額をシミュレーションしてみましょう。
例えば、毎月3万円を投資信託で積立投資をして、年利3%で運用できていたとしたら、10年で平均419万円。約60万円の運用益が出て、お金が増やせていました。あくまでシミュレーションですが、預貯金の利息1,800円とは大きく異なります。
それでも、損をするのが怖いと感じる飯田さんには、分散投資の考え方のひとつである「資産分散」を紹介しました。
「分散投資」には大きく3つの考え方(資産分散・時間分散・通貨分散)があります。そのひとつの「資産分散」とは、投資対象をいくつかに分けて投資することです。例えば、国や地域を分散したり、商品を分散したり、値動きが異なるものにバランスよく分散して投資します。すると、一ヶ所に集中して投資するよりもリスクは軽減されて、安定的な収益が目指せます。
リスクを減らす方法を知ることで、飯田さんは『怖いという気持ちが少し薄らぎました』、とのこと。帰宅後、旦那さんと話し合い、資産分散型の投資が手軽にできる投資信託のファンドを調べはじめたそうです。
人生100年時代、リスクの少ない投資の方法を学び、老後に備えていきましょう。気がついた今から始めても、決して遅くはありません。
飯田さんのように投資が怖いと感じる人は、まずは投資のことを知り、自分ができる範囲のことに挑戦してみてください。
どのような投資であってもリスクはつきものです。しかし、「あぶない」「損をする」という先入観から、預貯金だけでお金を管理していることも、またリスクです。
現金には「インフレリスク」というものがあります。世の中の物価が上がり、お金の価値が変わることで、持っているお金の価値が下がってしまうリスクです。これらを避けるためにも、投資は有効です。
「投資=怖い」という感覚を克服するには、月々数千円程度の少額から、長期的な視点(最低でも10年以上、できれば15年以上を目指して)で運用してみることがよいでしょう。
投資がどんなものか、金額がどう動くのか体験することで、自分がどの程度リスクに対応できるのかが分かってきます。継続できそうであれば、徐々に金額を増やしていくと良いでしょう。
もし「1円でも下がったら、心配で眠れない」という方は投資をしない方がいいかもしれませんが、食わず嫌いをせず、一度試してみることは大切なことです。
一番最初におすすめなのは、株価の指標に連動することを目指したインデックス型の投資信託を積み立てることです。
投資信託は1つの商品に複数の投資先が入っていて、1銘柄を買うだけで分散投資が可能となります。しかも、積み立てることで「時間分散」もできます。つまり、毎月同じ金額で投資商品を購入することで、単価が安いときには多く、単価が高いときには少なく買って平均取得単価を下げる「ドルコスト平均法」という方法がとれるのです。これで高値買いのリスクを最小限にすることができます。
そしてだんだんと投資のことが分かってきて、もっと興味がわいたら、余裕資金を使って違う種類の投資を体験しても良いと思います。
よく「投資はギャンブルだ」と言う人がいますが、それは違います。例えば、株を買うということは、企業のオーナーになるということ。自分のお金を資本に、企業活動を行ってもらうということです。
ですから、投資を始めることで経済に興味を持てるようになることも多いです。経済に興味が持てると、世の中のことが分かるようになって流行に敏感になるかもしれませんし、ビジネスマンなら仕事にも活かせるでしょう。ぜひ、自分に合った投資との付き合い方で人生を豊かにしてくださいね。
横山 光昭(よこやま みつあき)
家計再生コンサルタント
株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は23,000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。 個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。