相談者:佐藤ゆたかさん(仮名)・みゆきさん夫婦(仮名)
家族構成:夫(会社員)/妻(パート)/娘(中学生)
職業:夫・会社員/妻・パート
年齢:夫・48歳/妻・46歳
年収:夫・約600万円/妻・約60万円
2020.7.22お金のしくじり失敗談
家族構成:夫(会社員)/妻(パート)/娘(中学生)
職業:夫・会社員/妻・パート
年齢:夫・48歳/妻・46歳
年収:夫・約600万円/妻・約60万円
ご相談に来た佐藤さん夫婦は、中学2年生の娘さんとの3人暮らし。広告代理店で営業職をしている夫のゆたかさんの年収は約600万円、妻のみゆきさんはパート勤務で年収は約60万円です。
公立中学に通う娘さんは私立高校への進学を検討中で、塾代が増え、家計への負担が増してきたとのこと。みゆきさんは食費や日用品など、日々の生活費も節約し、堅実にやりくりしていました。
ゆたかさんの年収は600万円。世間からすれば、決して低年収とは言えません。みゆきさんのパートでの収入も合わせれば、世帯年収は660万円。3人家族であれば十分貯蓄ができるはずなのですが、ほとんど貯蓄ができないことにみゆきさんは悩みあぐねていたそうです。
家計の収支を細かく確認すると、その原因は夫の浪費癖であることが明らか。ゆたかさんによれば、会社の同僚や上司、取引先との飲み会やゴルフなどの接待が多く、交際費がかさみがちなのだとか。加えて、洋服や靴、時計など、欲しいと思うものは我慢できない浪費癖があるようです。
一生懸命やりくりしても全く貯蓄ができないことに、日々ストレスを感じていた、みゆきさん。何度かゆたかさんに注意を試みたものの、ゆたかさんはまったく聞く耳を持たず、ストレスは増すばかり。
将来のことを考えて、ついに「離婚」という切り札をつきつけたようでした。ゆたかさんは離婚などまったく考えていなかったのであわてふためき、みゆきさんの提案で、夫婦でマネー相談に来たというわけです。
話を聞いてみると、これまでゆたかさんは、毎月のお給料から自分のお小遣いを除き、みゆきさんに生活費として渡していたとのこと。みゆきさんは、その生活費を日々やりくりし、コツコツ貯蓄していました。
ただ、ゆたかさんは自分のお小遣いだけでは足りず、夫婦共用の銀行口座からお金を引き出したり、買い物代や接待代などを妻に請求したりしていた様子。こんな状態ではお金は一向に貯まらないわけです。
そもそも、夫婦の家計管理では、どちらか一方に任せきりにするのではなく、二人でお金の使い方について話し合うことが大切。そして、家計やマネープランの「見える化」を行って二人で課題を共有し、お互いが自分事化することで初めて問題と向き合えるのです。
佐藤さん夫婦には、その場で老後を迎えるまでの長期的なライフプランを作成してもらい、いつ、どの時点で、どれくらいのお金がかかるのか、将来、どんな夢や希望があるのかを「見える化」してもらいました。また、今まで「何に」「いくら」浪費してきたのかを数値化して提示。一般的に男性は、具体的に数字が見えることで納得できる傾向があるためです。
結果、ゆたかさんにも効果は抜群でした。特に娘さんの大学卒業までの教育費や夫婦二人の老後資金など、「これまでぼんやりとしか考えていなかった将来について、お金の見える化ではっきりと認識できたことが大きかった」とのことです。そして、今のお金の使い方では、描いたライフプランが達成できないことも自覚してもらえました。
このように、老後に不安はありながら、どうにかなるだろうと漠然と思っている人もまだまだ多いのが事実です。今回は、ファイナンシャルプランナーという第三者も交えての家族会議でしたが、できるならすぐにでも夫婦二人で話し合い、ライフプランを共有すべきです。お子さんがいるご家庭であれば、子どもが巣立った後の老後の時間について共有することで、貯蓄への強いモチベーションになることでしょう。
佐藤さん夫婦も、15〜20年後の退職後を見すえて、夫婦二人で家計管理をしていくことを決意したようです。一時は「離婚」の話も出ていましたが、円満に話し合いを進めることができました。
夫婦で家計の流れを共有し、管理するためには、夫婦の全収入を共通のお財布(銀行口座)に入れ、そこから固定費や生活費を支払う「共通財布型」の方法が一番だと考えます。
この家計管理の方法は、実は共働き家庭にも応用が利きます。
ポイントは、貯蓄やお小遣いもすべて共通のお財布から割り振ること。毎月のお金の流れも貯蓄も「見える化」できるので、無駄なくお金を貯めることが可能です。
また、目的別にお金を貯める口座を分けることも有効です。まず、お金を「日々出入りするお金」「5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上使わない将来のためのお金」など3つに分け、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めるという仕組みをつくれば、堅実にお金を貯めていくことができるでしょう。
もしもの場合に備えるお金や日常生活費。生活費の6ヵ月〜1年分を目指しましょう。
1年分あれば、自然災害や病気・ケガで働けなくなったり、リストラや転職など人生の転機が起こったりしても、あわてなくてすむことでしょう。このお金は、出し入れしやすい普通預金口座に入れておくと便利です。
家を買うための頭金や教育費用など、使うまでに時間があるお金。使う時に元本が割れていると困るので、預け先は、普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高いという視点で選ぶのがおすすめです。定期預金、個人向け国債、社債(短期)などが選択肢となるでしょう。
老後資金や将来叶えたい夢など、使うまでにかなり時間の余裕があるお金。元本が割れるリスクはあるものの、増える可能性がある投資信託(iDeCo・つみたてNISAなど)がおすすめです。
佐藤さん夫婦もアドバイスに沿って、娘さんの教育費を貯める口座をつくり、夫婦で楽しむための老後資金の一部は、つみたてNISAでの運用をはじめました。
仮に、つみたてNISAでラインナップされている投資信託で20年間、毎月3万円ずつの積み立てで投資信託を購入し、年平均4%の利回りで運用できた場合、元本の720万円が約1,100万円に。約400万円増える計算になります。
つみたてNISAであれば、年間40万円までの投資資金の運用益に対して非課税になりますので、増えた分は丸々受け取れることに。家計を見直し、投資金額を増やすことができれば、老後に夫婦で楽しむためのお金も準備できるでしょう。
2020年は、株式市場が大きく下がりました。先の動きも読めない状況で、投資は怖いと思う人も多いことでしょう。すでに投資をはじめている人にとっても、一時的に大きく値下がりしていて辛い時期かもしれません。
だからといって、こういう大きなショックが起きたときに、積立投資をやめるのは一番やってはいけないことです。なぜならば、いつまでも下がり続ける市場はないからです。100年に1度と言われるリーマンショックにも、マーケットは耐えてきました。淡々と長期・積立・分散投資を続けることが大切です。
積立投資であれば、値下がりしたときにも定期的に購入することで、少しずつ平均購入価格は下がっていき、やがて値上がりに転じた際に利益を得られやすくなります。
また、つみたてNISAやiDeCoなどは多くの人が余裕資金ではじめていると思います。不安だからといって、今解約してもそのお金をすぐに使う必要はないはずです。10年後、20年後に必要な金額を貯めるために資産形成をしているという目的に立ち返って、コツコツと続けていきましょう。
頼藤 太希(よりふじ たいき)
Money&You代表取締役
マネーコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『投資信託
勝ちたいならこの7本!』(河出書房新社)、『入門 仮想通貨のしくみ』 (日本実業出版社)ほか著作・共著・監修書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)。