相談者:中島春香さん(仮名)
家族構成:独身
職業:会社員
年齢:35歳
年収:約520万円(月収35万円+ボーナス100万円)
2021.5.6お金のしくじり失敗談
家族構成:独身
職業:会社員
年齢:35歳
年収:約520万円(月収35万円+ボーナス100万円)
30歳を過ぎたころ、結婚予定だった相手と別れることを選び、仕事に没頭してきた中島さん。仕事はとてもやりがいがあり、順調に実績を積んでいました。
しばらく結婚する気も予定もないため、シングルライフの今後のお金のことを考えるように。ニュースや職場で聞く機会が増えた「投資」について学ぶなかで、リスクを分散しながら将来に向けた資産形成ができる、長期分散投資に出会ったのです。
そこで、同僚から初心者の投資デビューにおすすめと聞いた「つみたてNISA」で、投資信託の積立投資を2019年1月からスタート。最初は年間40万円の非課税枠内に収まる金額である、毎月2万円から積立をはじめてみました。
投資信託の価格(基準価額)は日々上下するものの、翌月、翌々月と積立を継続していくことで少しずつお金が増えていくのがうれしいと感じていたそうです。
そのうち中島さんは、これだけ順調なペースで増えていくのなら、投資金額を増やしたらもっと増えるのでは、と考えるようになりました。
そこで、つみたてNISA以外の課税口座でも資産運用をスタートし、投資信託の積立だけでなく、株式投資にも挑戦。徐々にエスカレートし、気づいたらコツコツ預金してきた500万円の資産のうち、8割にのぼる400万円をハイリスク・ハイリターンの株式投資や投資信託といった、ややリスクの高い商品につぎ込んでしまったのです。
そこへ、運悪くコロナ・ショックが到来。2020年の夏頃から基準価額は少し戻ってきたものの、相談に来られた2020年10月時点で、いますぐ売却したらマイナスになってしまう状況まで追い込まれました。
新型コロナウイルスによる業績の悪化により、2020年のボーナスもあてにできないなか、預金は100万円程度。先行きに不安な日々を送っているとのことでした。
長期・分散・積立の投資をするのにおすすめの制度である「つみたてNISA」を活用して、将来に備えた資産形成を早めにはじめるのはとても良いことです。
ただ、中島さんの場合は、気持ちが盛り上がり、本来ならキープしておくべき預金にまで手をつけてしまったのが、しくじりの原因でした。
投資に夢中になりすぎて失敗しないようにするためには、手元に残しておくお金=生活防衛資金を決めて、まずはそれを確保しておくことを心がけることです。
そのためには、毎月の給料を「使うお金」と「備えるお金」という2つの目的別に分けるとわかりやすくなります。
日常生活を維持していくためのお金。食費や家賃、水道光熱費などの生活費に使うためだけのお金と、よくあるちょっとした出費(旅行や帰省、冠婚葬祭の費用、車検代や税金など)のためのお金です。
いざというときや将来に備えるお金。大きめの出費が突発的に発生した場合、退職や長期的に無収入になってしまった場合など、何かあったときに当面暮らしていける生活費です。働き方や勤務先、職種などによって個人差はありますが、「生活防衛資金」として、手取り月収の6ヵ月分は確保するように心がけておくことが望ましいでしょう。
手取り月収35万円の中島さんの場合、35万円×6ヵ月分の約200万円は残しておきたいところです。月収から毎月決まったお金を預金しつつ、今後、ボーナスが出た場合はできるだけ「備えるお金」に優先的に回すようにしましょう。
「将来や老後のための資金」は、預金も含めて、教育費や老後などの将来に備える資産形成のためのお金です。投資信託だけでなく、預金も含めてトータルで資産形成をすることを中島さんにはアドバイスしました。
中島さんのように、投資デビューに「つみたてNISA」を利用したのは良い選択です。通常、分配金や売却して得た利益には20.315%の税金がかかりますが、「つみたてNISA」は、年間運用額40万円を上限に最長20年間非課税になります。
「つみたてNISA」が初心者におすすめなのは、国が定めた基準で選ばれた投資信託の商品のみを運用できる点です。また、日本や主要国、新興国など幅広く投資することでリスクを分散できるのも特徴の1つになります。
さらに、「つみたてNISA」枠内では、世界中の株式や債券などにまとめて投資できる「バランス型」も活用することができます。リバランス(投資配分比率の見直し)などのメンテナンスが面倒な方や、1本の商品で世界中に資産を分散したい人におすすめです。
ただし、非課税枠は年間40万円ですから、さらに投資金額を増やしたい場合は「つみたてNISA」枠内の投資信託をいったん売却して利益を確定し、それを元手に新たに積立投資を行い、特定口座など課税口座の利用を検討しましょう。ただし、先述のように生活防衛資金を預金などで確保したうえで行うことが大事です。
課税口座は、利益に20.315%の税金がかかり、頻繁に売買するとその都度手数料もかかります。「つみたてNISA」と同様、長期投資をするのがよいでしょう。
また、資産運用を行う際には、生活防衛資金とは別に、資産形成専用の預金を積み立てておくのがおすすめです。投資信託などが値下がりしたときにその資金で追加購入することで、値下がりすればするほど多くの口数を買うことができ、結果的に平均取得単価を下げることができるためです。後から値上がりすると、より多くの利益を狙いやすくなります。この方法を知っておくと、値下がりに対する不安は軽減されるのではないでしょうか。
今回アドバイスさせていただいたような、リスクを分散する方法を上手に取り入れながら、長期積立投資でかしこく資産形成してほしいですね。
野原 亮(のはら りょう)
確定拠出年金創造機構 代表
明治大学政治経済学部経済学科卒業。現東証1部上場の証券営業・株式ディーラーとして従事。その後、営業コンサル会社を経てFPとして独立。中小企業の確定拠出年金を中心とした福利厚生の社外担当として活動、上場企業等の金融研修なども担当している。証券外務員1種、ファンナンシャル・プランナー(AFP)、企業年金管理士(確定拠出年金)、公的保険アドバイザー。書籍に『スピードマスター 1時間でわかるiDeCo〜50代からの安心投資』(技術評論社・2020年)『ポイントですぐにできる!貯金がなくても資産を増やせる「0円投資」』(日本実業出版社・2021年)がある。
個人Webサイト:https://fpsdn.net/fp/rnohara/
事務所Webサイト:https://kakuteikyoshutsu.com
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