財産分与ーー結婚期間中に築いた財産を分ける

「財産分与」とは、結婚している期間に築いた財産を離婚時に精算することです。たとえば、妻が専業主婦で収入はなく、預金口座の名義が夫の場合でも、基本的に折半されます。注意しておきたいのは、「結婚している期間に築いた財産」だけが対象であるということです。それぞれが結婚前に築いた資産や、離婚後に増えた資産は、この対象に含まれません。また財産分与は、借金も対象となります。たとえば、住宅ローンの残金があれば、資産と差し引いて計算します。なお、離婚の原因を作った側も財産分与を請求することが可能です。請求できる期限は、離婚後2年以内となっています。

また、2007年から新しく始まった制度として「年金分割」があります。これは、会社員として勤めている夫が厚生年金へ支払った保険料も夫婦共有の財産であるという考えから、婚姻期間中に支払った分の年金の上限50%まで妻が受けられるというものです。さらに、2008年に始まった「3号分割」では、 専業主婦で第3号被保険者だった妻が請求すれば、夫の同意がなくても半分をもらえます。ただし、自動では分割されないため、年金事務所や年金相談センターへの手続きが必要です。なお、受け取れるのは年金の支給対象年齢になってからとなっています。

お金と手のイラスト

慰謝料ーー責任のある方が、賠償として支払うお金

慰謝料というのは、離婚の原因を作った方が、精神的苦痛を受けた側に支払う賠償金のことです。ですから、離婚時に常に支払われるお金というわけではなく、不貞行為(浮気)やDVなど、夫婦の一方に明らかに責任がある場合に請求することができます。ただし、離婚の理由第1位である「性格の不一致」では、どちらに責任があるのかハッキリしないので、慰謝料は発生しません。

慰謝料の金額には決まった基準はなく、婚姻期間や有責度合いなどに応じて、その都度、協議をして決まります。司法統計調査によると、200万円〜300万円というケースが多いようです。また、婚姻期間が長いほど、慰謝料は高くなる傾向にあります。

離婚理由による慰謝料の相場と婚姻期間による財産分与・慰謝料の相場の表
  • 出典:平成10年司法統計年報 家事 財産分与・慰謝料の支払額別婚姻期間別
  • 2016年11月 、日弁連は養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言を提出しました。よって、上図の金額に変更が生じる可能性があります。

養育費ーー子どもを育てるためのお金

夫婦間で子どもがいる場合、子どもと一緒に暮らさない親にも養育義務はあります。そして、子どもを育てるために支払われる費用が養育費です。養育費の支払い義務は、子どもが成人になるまで続きます。養育費の算定には、東京・大阪の裁判官の共同研究により作成された養育費・婚姻費用算定表が目安として使われています。

たとえば、夫が給与所得者で妻が専業主婦、子どもが1人(14歳以下)ならば、夫が年収600万円のときは月6〜8万円程度、年収1000万円ならば月10〜12万円程度となっています。また、子どもが2人(14歳以下)の場合は、年収600万円の場合は月8〜10万円。年収1000万円の場合、月14〜16万円程度の支払い義務が生じます。

受け取る側は、養育費の支払いが滞った場合には、相手の給料や預貯金口座を強制執行(差し押さえ)することも可能です。

婚姻費用ーー相手の生活水準を保障するためのお金

もうひとつ離婚にまつわる費用として「婚姻費用」があります。一方が離婚を申し出て、実際に離婚が成立するまでは、夫婦は相手が自分と同じ生活レベルを続けられるように支援する義務があります。婚姻費用には、生活費、住居費、被服費、食費などの衣食住に関する費用、そして、医療費、交際費なども該当します。なお、収入の多いほうが、少ないほうに必要なお金を支払う義務が生じます。

婚姻費用は、片方が請求した日から権利が生まれ、離婚が成立すると消滅します。そして、別居している間でも、支払う義務は続きます。金額は、夫婦の話し合いで決めるものですが、2人だけでは決められない場合は、裁判所に仲裁してもらいます。毎月支払うことになる費用は、収入や子どもの人数、年齢により異なります。こちらも算定方法が複雑なため、先ほど出てきた算定表が使用されています。

たとえば、妻が専業主婦で、夫が年収600万円の場合、子どもがいなくても月8〜10万円程度、年収1000万円ならば月14〜16万円程度、支払う義務が生じます。子どもがいれば、生活費用である婚姻費用は増加します。子どもが1人(14歳以下)の場合、年収600万円ならば月10〜12万円、年収1000万円だと月16〜18万円が相場です。子どもが2人(14歳以下)になると、年収600万円の場合で月12〜14万円、年収1000万円ならば月18〜20万円を離婚成立まで、ずっと支払う義務が生じます。

いかがでしょうか。離婚にまつわるお金というのは非常に種類が豊富です。しっかり理解して、お互いに新しい道を歩みだすために、納得いくまで話し合いをするようにしましょう。

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