「二拠点生活」を実現している安井省人さん

安井省人さん

株式会社スカイベイビーズ/クリエイティブディレクター。妻と双子の子供の4人家族。子育てに最適な環境を求め、2016年から二拠点生活をスタート。普段は家族が住む小淵沢で過ごし、出社する時のみ川崎の分譲マンションにて一人で暮らす。

保育園探しを機に、都会での暮らしを見つめ直すことに

――二拠点生活(デュアルライフ)を始めたきっかけは?

安井さん:双子の子どもが保育園に入れなかったことを機に、都会での子育てについて夫婦で疑問を持つようになりました。いろんな保育園を見て回るなかで“もっと伸び伸びとした環境で子どもを育てたい”と感じ、地方への移住を決意。

もともと“将来は地方で暮らしたいね”と夫婦で話をしていたこともあり、妻も賛成してくれました。週末ごとにあちこちと地方を訪れる中で、山梨県小淵沢の雄大な景色にひとめぼれ。特急に乗れば東京まで2時間以内で通えるというアクセスの良さも決め手でしたね。

八ヶ岳と南アルプスに囲まれて散歩する安井さん家族
  • 八ヶ岳と南アルプスに囲まれ、眺望は抜群。人とのつながりが感じられる場所で子どもを育てたいという思いから、別荘地ではなく、あえて民家のある集落を選んだ。

――普段は、どのような暮らしですか?

安井さん:リモートワークでできる仕事も多いので、普段は家族と一緒に小淵沢で生活し、出社の必要がある時だけ、一人で川崎のマンションに滞在します。

割合としては、だいたい半々くらいかな。地方での暮らしは、のんびり過ごしているイメージがあるかもしれませんが、むしろ逆。やるべきことが山積みです(笑)。庭も広いので、草刈りも1日じゃ到底終わりません。

暖炉に使うための薪割りをしたり、庭で育てている野菜の世話をしたり、子どもと思いきり遊んだり。空気のいい場所で一日中身体を動かしているせいか、いまでは風邪一つひかなくなりましたね。

食育を兼ねてたくさんの野菜を育てている
  • 食育を兼ねて、庭の畑で野菜作り。トマト、トウモロコシ、枝豆、かぼちゃ、さつまいもなど、たくさんの野菜を育てている。

――時間と手間をかけて自分たちの手で暮らしを整えていくことは、都会ではなかなかできない貴重な経験ですね。

安井さん:子どもたちの遊び方もずいぶん変わりました。親が何かを与えなくても、周りにあるものを使っておもちゃを創ったり、庭でみつけた昆虫や植物を図鑑で調べたり、いろんなことに関心を持って楽しそうです。

以前は、引っ込み思案でしたが、周りの人たちとのかかわりの中で、すっかり社交的で活発になりました。ただ、都会の良さも知っていてほしいので、時々川崎や東京にも連れて行き、都会暮らしを経験させています。両方経験することで視野を広げてもらえるといいな、と。

移住前に家計を洗い出して、念入りにシミュレーション

――二拠点生活をするにあたり、お金の心配はありませんでしたか?

安井さん:そうですね、川崎の自宅マンションはまだ住宅ローンも残っていたので、本当に二拠点でやっていけるのか念入りにシミュレーションしました。

現在の家計を洗い出し、二拠点生活とどれくらいの違いがあるのかを算出したところ、実はそこまで変わらなかったんですね。
たとえば、川崎市で2人の子どもを保育園に入れた場合、共働きなので当時は1ヵ月15万円ほどかかる予定でした。でも、北杜市だと第2子が無料になり、月3万円ですみます。

川崎の暮らしでかかるはずの保育園代を二拠点生活で増える費用に充てれば、これまでの家計とたいして変わりはありません。いろんな要素をトータルで考えたうえで、二拠点でも贅沢をしなければ十分やっていけるだろうと考えました。

明らかに増えるのは、小淵沢から会社までの交通費ぐらい。週1回行き来するとして月4万円の出費です。結論として、子どもたちが伸び伸びと過ごせ、妻が気持ちにゆとりをもって子育てができる環境を月4万円で買うと考えれば、決して高くないと判断しました。

仕事中の安井さん
  • 「移住前に、“二拠点生活になると出社頻度が下がるけれどいい?”と社員に確認したら、みんな“おもしろそう!”とポジティブに受け止めてくれました」。社内には、安井さんのほかにも、二拠点生活をおくるメンバーが2人もいるそう。

――小淵沢では、ステキな新居も建築されています。2つの住宅ローンを抱えることに不安はありませんでしたか?

安井さん:確かに2つの住宅ローンを抱えることになりましたが、これまで貯蓄に回していた分を一時的に減らして新居の費用にあてれば、毎月出ていくお金にさほど変わりはありません。川崎のローンの支払いが終われば、これまで通りの生活に戻ります。どうしても計画通りにいかない時は、川崎のマンションを売却して、小淵沢に完全移住すればいいと考えました。

国産の木材や土など、自然素材をふんだんに使ったこだわりの家
  • 土地はなんと200坪! 国産の木材や土など、自然素材をふんだんに使ったこだわりの家は、「終の住処になってもいいように、部屋数をふやさずに開放感のある間取りにしました」とのこと。

――実際に二拠点生活を始めて想定外だったことはありましたか?

安井さん:お金の面でいえば、当初の予想よりも支出が減ったことでしょうか。周りにお金を使う場所が少ないんです。食事は自炊、妻もお弁当を持って仕事に行きます。

休日も、わざわざレジャー施設に行かなくても庭でバーベキューやキャンプをするなど、お金をかけずに遊びを楽しめる。僕自身、川崎で過ごす時も、カフェやコンビニでの無駄遣いが自然と減りました。
夫婦の小遣いや交際費だけでも、月5〜6万円は減ったんじゃないかな。二拠点になってから増えた小淵沢から会社までの交通費は、結果的に相殺されましたね(笑)
ありがたいことにご近所さんから野菜をたくさんいただくので、食費も随分抑えられています。

暖炉で使う薪を割る安井さん
  • 暖炉で使う薪割りは休日の日課。乾燥させて使えるようになるまでに1〜2年ほどかかるのだそう。

安井さんが一拠点で生活されていた時と、現在の二拠点生活ではお金の使い道に変化はあったのでしょうか。それぞれの支出割合のグラフを見てみましょう。

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  • 安井さんご提供(「お金を活用する」という意味で、保険・貯蓄も支出に含めています)

支出の総額は一拠点、二拠点ともほぼ同じです。二拠点生活後、増加をしている支出は「ローン返済・管理費」や「通信費・光熱費・固定資産税」。そして、電車での長距離移動に伴い「交通費」も発生しています。

その一方、外食やお付き合いの機会が減ったことで「交際費」は大幅に減少しています。「保険・貯蓄」の割合も減ってはいるものの、川崎の分譲マンションは将来的に子どもが上京した際の住処にしたり、売却したりする際の価値も視野に入れ、その投資として捉えているそうです。

万全なシミュレーションでお金の不安を払拭してから二拠点生活をスタートさせた安井さん。後編では、理想の暮らしを叶えるために、これまでどんな風にお金と向き合ってきたかを伺います。

  • 2020年11月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

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