この記事では、退職金は退職後、いつ、いくら位、支払われるのかについて解説しています。

退職金が振り込まれるタイミングはケースバイケース

退職金制度とは、長年の勤労に対する報償的給与として、会社が従業員に支給する退職金についての取り決めのことです。

厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、退職金を用意している企業の割合は80.5%と、おおよそ8割の企業が退職金制度を用意しています。

退職金、わたしはもらえる? 退職金制度を知り、将来に備えよう

退職金がいつ、どういった形で支払われるのかについては、採用している退職金制度が企業によって異なるため、一概にはいえません。所属している企業によって「一度にまとめて支払われるタイプ」や「分割して年金形式で支払われるタイプ」があります。

基本的に退職金は退職後1〜2ヵ月後に支払われることが一般的ですが、企業で用意している退職金制度で個別に定められている場合や、従業員が請求しなければならないケースもあります。
退職金をいつ受け取れるのかわからないという場合は、自分の勤めている会社の退職金制度について事前に知っておきましょう。

中小企業退職金共済制度

単独で退職金制度を準備することが困難な中小企業では、国の退職金制度である中小企業退職金共済制(以降、中退共)に加入している場合があります。

中小企業退職金共済制度の特徴

中小企業が中退共に加入するためには、業種ごとの常時雇用する従業員数または、資本金の額・出資の総額の要件を満たしている必要があります。

中小企業退職金共済制度の特徴

原則、従業員は全員加入ですが、季節労働者、短時間労働者、試用期間中、定年が近く、短期間で退職することが明らかな者などは、加入させないことも可能です(加入することもできます)。

掛金は月額5,000〜30,000円で、掛金は会社の負担になります。

中退共の退職金額

中退共の退職金は、基本退職金と付加退職金の合計額になります。
基本退職金は、掛金月額と納付月数に応じて法令で定められた金額です。付加退職金は、運用状況などに応じて基本退職金に上積みするものです。

中退共の基本退職金額の目安

いつもらえる?中退共の退職金が支払われるタイミング

中退共に加入している場合、会社が従業員の退職した月までの掛金を済ませていることを確認できなければ、退職金は支払われません。
会社の掛金納付方法によっては、2ヵ月以上かかることもあります。

また、退職金は「退職金請求書」に基づいて、退職した従業員の預金口座に直接振り込まれます。
中退共で支払いの準備が整ったら、振込予定日の約2週間前に従業員宛に「退職金等振込通知書」が届くので、支払い明細や振り込み予定日を確認できます。

支払い方法

中退共は退職時に一括して受け取る一時払いで支払われますが、退職日に60歳以上で要件を満たしていれば、以下の支払い方法も選べます。

支払い方法

このように退職者の希望にあわせた受け取り方法が選択できます。

受け取れる退職金の相場

受け取れる退職金額は勤務している会社の規模と、退職理由によっても異なります。

勤続20年以上かつ年齢45歳以上の方の平均額
  • 【出典】厚生労働省「平成30年 就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態」

退職金の詳しい相場は、以下の記事でも紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

退職金の平均・相場は? 勤続年数・企業規模・業種・学歴別に紹介

ここで紹介した金額は、あくまでも目安です。業種や、会社が導入している退職金の計算方法でも退職金額は異なります。

例えば、近年では退職金の計算方法として、勤続年数や役職、企業への貢献度をポイント化して計算する、ポイント制を導入する企業も増えています。

自分の退職金額の計算方法は、就業規則や賃金規程で確認できるので、自分で計算してみましょう。

退職金を受け取れなかったときの対処法

万が一受け取れると思っていた退職金が受け取れなかった場合、従業員側で対処する方法はあるのでしょうか。

企業が支払う退職金は、「長年の勤労に対する報償」、あるいは「優秀な人材に長年にわたって勤務してもらうための支払い」という位置づけにあります。

そのため、就業規則や賃金規程に退職金の定めがない、または、定められていても、勤続年数など退職金を受け取れる要件を満たしていない場合、企業は従業員に退職金を支払う義務はありません。

一方、就業規則や賃金規程で退職金の定めがある場合や、募集時に「退職金支給あり」などの文面が記載されていた場合、企業に支払い義務があります。

また、自分以外の社員には、これまでほぼ退職金を支払っているような場合も、他の従業員には退職金を支払っていたことを証明できれば、退職金の請求が認められる可能性はあります。

支払われない場合は所属していた会社に問合せる

仮に、企業に退職金の支払い義務があるにもかかわらず支払われない場合は、まず所属していた会社に問合せをしてみましょう。
それでも退職金に関して明確な返答がいつまでもない場合は、会社に請求書を送付します。

会社に請求書を送る際は、誰に差し出された文書か郵便局が証明してくれる内容証明郵便を利用すると、証拠として残ります。

労働基準監督署に相談してみる

会社に退職金の請求書を送っても応じてもらえない場合は、就業規則や賃金規程など、退職金に関する定めがあることを証明する資料を持参して、労働基準監督署などに相談してみましょう。

その他、弁護士に相談するという方法もあります。
企業で退職金に関する規定が定められているにもかかわらず、支払われない場合は、自分だけでかかえこまず、第三者に相談をすることが大切です。

まとめ

退職金がいつ、どのように支払われるのかについて解説しました。
就業規則や賃金規程などに退職金に関する定めがあれば、退職時に退職金がもらえます。

しかし、企業によって退職金制度は異なるため、退職金の支払い方法や、支払われるタイミングも企業ごとにバラつきがあります。
いつ退職金が受け取れるのか不明な場合は、自分が勤めている会社の仕組みを知っておくと良いでしょう。

また、就業規則や賃金規程があるにもかかわらず、退職金を払ってもらえない場合も考えられます。万が一支払われなかった場合は一人で抱え込まず、行政機関や専門家に相談することをおすすめします。

  • 2022年12月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

金子 賢司

個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。

HP:https://fp-kane.com/

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