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知っておけば怖くない! 投資初心者のための基礎知識
2020.12.4投資初心者 はじめの一歩
投資商品を選ぶとき、その商品のリスクとリターンの大きさは重要な選択基準になります。
リスクという言葉は一般的に「危険」という意味で使われますが、投資の世界では、リターンの上下の振れ幅のことをいいます。
たとえば100万で購入した翌日に110万に値上がり、その翌日は90万というように毎日10万円単位で値動きする商品A。
100万円で購入した翌日は101万円に値上がり、その翌日は99万円のように毎日1万円単位で値動きをする商品B。
商品Aと商品Bを比較すると、Aの方がリターンの振れ幅が大きいので、商品Bよりも商品Aの方が「リスクが高い」といいます。
リスクとリターンの関係は以下の図のようになります。
リスクはリターンの振れ幅を表すため、大きなリスクのある商品を選択しなければ、大きなリターンを得ることは難しいことが理解できます。
リスクとリターンは表裏一体の関係にあり、小さいリスクで大きなリターンを得られる商品は存在しません。逆に大きなリスクで小さなリターンもありません。
投資の商品選びでは、つい大きなプラスのリターンを狙いたいと思う気持ちになるかもしれません。しかし、それ相応のリスクもありますのである程度の投資経験がない場合は、リスクの低い商品から始めることをおすすめします。
投資商品にはそれぞれ相応のリスクとリターンがあります。
ここでは、初心者にもおすすめの投資商品を5種類紹介します。
日本円ではなく、米ドルなどの外貨で行う預金です。
日本円の預金よりも金利は高めです。しかし円と外貨を交換するときの為替レートによっては、元本より増えることも減ることもある商品です。
たとえば、100万円を米ドル建ての外貨預金に預けるとします。
100万円を米ドルに換えるときの為替レートが1ドル100円なら、100万円÷100円=10,000ドルとなります。10年後、11,100ドルになった預金を日本円に戻すとき、為替レートが1ドル105円なら、11,000ドル×105円=1,155,000円ですが、1ドル90円なら11,000ドル×90円=990,000円になり、預金当初よりお金が減ってしまいます。
外貨預金の魅力は日本よりも高い金利ですが、上記のように為替次第で元本が増減する可能性があることを理解しておきましょう。
米ドルなど為替の値動きが少ない外貨預金はリスクが低めなので、「円預金よりも高い金利で預金をしてみたい」という人に向いています。
国や地方自治体が発行する借用証書(債券)のことを公共債といいます。
投資家は債券を購入するとその国や自治体にお金を貸したことになり、一定期間経過後に利息が付いて返ってきます。この利息が投資家の利益です。
期限まで債券を保有していれば基本的には必ず利息を得られるため、「決められた期限まで放っておけるお金をローリスクで運用したい」という人に向いています。
企業が投資家からお金を集めたときに発行する証書のことを株式といいます。 株式を購入すればその企業に出資をしたことになり、その資金をもとに企業は事業活動を行います。
事業活動の結果、利益が出れば投資家(株主)に配当金を払うことになり、投資家も利益を得ることができます。さらに、購入時よりも高い株価のときに売ることで、利益を得ることも可能です。
ただし、株式は価格の変動幅が大きく、大きく利益が出る可能性も大きく損する可能性もあります。また、株式を購入した企業が倒産してしまった場合、お金は戻ってこないので注意しましょう。
「余剰資金なので、リスクがあっても大きなリターンを狙いたい」という人に向いています。
株式や公共債などは対象となる企業や国が沢山ありすぎて、投資初心者はどう選んだら良いか迷ってしまうでしょう。
投資信託は、プロが株式や公共債などさまざまな投資先を選んで分散投資をする商品です。
「投資が初めてでどんな商品を選べば良いか分からない」という方には特におすすめです。
保険料を積み立てて、将来の公的年金の上乗せ金を準備する商品です。
年金を受け取る前に亡くなってしまった場合は、遺族に死亡給付金が支払われます。
安全に着実に増やしたい場合は日本円の個人年金保険が、円換算をした時に元本割れをする可能性はあるが大きなリターンを狙いたい場合は外貨建て個人年金保険が良いでしょう。
各投資商品のリスクとリターンの関係は以下の通りです。
投資商品には必ずリスクがありますが、極力リスクを抑えて安定したリターンを得やすい投資方法があります。それが「分散投資」です。
分散には@商品の分散(複数の商品を購入する)とA時間の分散(積み立てる)があります。
商品の分散とは、1つの商品だけで運用をしないということです。
投資の有名な格言に「1つのカゴにたくさんの卵を盛るな」という格言があります。1つのカゴに卵を盛ると、カゴを落としたときに全ての卵が割れてしまいます。しかし、いくつかのカゴに卵を分けて盛れば、1つカゴを落としても、残りカゴの卵は無事です。
卵を盛ったカゴを投資商品に置き換えてみましょう。
1つの商品だけに投資して失敗すると、大きな損失になります。しかし、株式と公共債と外貨預金というように商品を分けていた場合、例え株式で失敗しても、公共債と外貨預金が購入時と同額か少しでも値上がりしていれば、トータルの損失は抑えることができます。
そのため、商品の分散は値動きの特徴が異なる商品を複数保有するのが基本です。
株式と公共債は基本的に値動きの特徴が異なるため、これらをあわせ持つことで分散投資の効果が大きくなります。
投資では、時間の分散も取り入れていきましょう。
時間の分散とは、一度にまとまったお金を投資するのではなく、毎月10,000円というように一定金額を継続的に投資し、購入時期を分散させることです。この投資手法を「ドルコスト平均法」といいます。
【関連記事】わかると差が出る「ドルコスト平均法のメリットとは?」
「投資商品は価格が変動するから怖い」という人も多いのですが、価格が変動しなければ利益も得られません。毎月一定額を購入することで、平均購入単価を下げることができ、長期的に見ればリスクを抑えて運用をすることが可能になります。
投資のリスクを抑えて安定したリターンを得たい場合は、商品の分散と時間の分散を心がけましょう。
時間の分散と商品の分散を同時に行うもっともシンプルな方法は、毎月投資信託に積立投資を行うことです。
投資初心者でどんな商品を選んで良いか分からないという人は、毎月積み立てで時間の分散を取り入れ、なおかつ商品の分散がすでに行われている投資信託からスタートをすることがおすすめです。
投資信託には、たとえばAIやロボット関連など成長が期待できる商品を扱っている企業の株式を集めた投資信託や、日経平均株価などの指標に沿う投資信託など、様々な種類があります。詳しくは以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。
【関連記事】投資初心者におすすめの投資信託、みんなはどんなタイプを買っている?
国の制度を活用するとさらにお得に投資をスタートすることができます。
その代表的なものとしてiDeCo(イデコ)とNISAがあります。
iDeCoとは自分の老後資金を自分で準備するための制度で、自分で掛金を支払い、どの商品を購入するか決め、60歳以降にその成果を受け取ります。
商品の選択肢の中には定期預金や保険もありますが、ほとんどの商品が投資信託で毎月積み立てをしていく制度のため、商品の分散と時間の分散を同時に実現できる制度です。
iDeCoは60歳まで引き出しができないというデメリットがあるものの、毎月の掛金の金額に応じて所得税や住民税の負担が減ること、運用益が非課税であること、受け取るときに税金の優遇制度があること、というメリットがあります。
iDeCoに加入するには条件がありますが、その条件を満たし、節税しながらこつこつ老後の資産形成を行いたい人にはおすすめの制度です。
iDeCoについて詳しくはこちらの記事で解説していますので、あわせて確認してください。
【関連記事】iDeCo(イデコ)ってなに? 〜基本をイラストで理解しよう〜
NISAは少額投資非課税制度の愛称で、投資で発生した利益に対する税金が非課税になる制度です。
投資をして利益が発生すると、利益に対して通常税金がかかります。しかしNISAの場合は、利益に税金がかかりません。
iDeCoが60歳まで引き出しができないことに抵抗がある場合や、iDeCoの年齢条件に該当しない場合はNISAの制度を活用すると良いでしょう。
NISAには一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、詳しくはこちらの記事で解説していますので、あわせて確認してください。
【関連記事】NISAとは? 基本や注意点、活用方法を知ろう!
NISAとiDeCoは併用することができます。これらの制度を有効活用して、効率的に資産形成していきましょう。
まとめ
投資商品はどれもそれ相応のリスクとリターンがあります。
せっかく投資をするなら大きく資産を増やしたいところですが、大きな利益を得るためにはリスクの大きい商品を選ぶ必要があります。
「分散投資」であれば、リスクを抑えながら安定したリターンを目指すことができます。分散投資には「商品の分散」と「時間の分散」の2通りがあり、毎月積み立てをして投資信託を購入することで簡単に実現することが可能です。
iDeCoやNISAという国の税制優遇制度も積極的に活用して効率的に資産を増やしていきましょう。
執筆:金子 賢司
個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。