複数のNISA口座を開設することはできない

NISA口座は1人につき1口座と決められており、複数口座の開設はできません。ここでは複数口座を開設できない決まりについて詳しく見てみましょう。

NISAの口座は1人1つまで!

NISA口座の開設は、1人につき1つの金融機関に限定されています。NISA口座を複数開設できない理由は、非課税枠が法律で定められているためです。仮に複数の金融機関でNISA口座の開設を申し込んだとしても、税務署から非課税口座として認められるのは1口座のみです。そのため、口座開設先の金融機関は慎重に選択しましょう。

投資枠ごとの使い分けもできない

新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できますが、この2つの非課税投資枠をそれぞれ異なる金融機関に分けて利用することはできません。つみたて投資枠と成長投資枠は、あくまでも同一のNISA口座内で管理されるためです。

例えば、A証券でつみたて投資枠を利用し、B証券で成長投資枠を活用するといった使い分けは認められていません。

金融機関の変更は年1回可能

NISA口座を管理する金融機関を変更する場合、変更手続きを行う年の前年10月1日から当年の9月30日までに手続きを完了させる必要があります[注1]。例えば、2024年にNISA口座の金融機関を変更したい場合は、2023年10月1日から2024年9月30日までの期間内に変更手続きを行わなければなりません。

新NISA口座を変更するタイミング

ただし、金融機関変更を希望する年に、現在のNISA口座で金融商品を一度でも購入してしまうと、その年に金融機関を変更できなくなる点には注意が必要です。

金融機関の変更方法について詳しく知りたい方は、「新NISAの金融機関を変更するには?メリットや注意点も解説」もご参照ください。

複数口座を申し込んでしまったらどうする?

NISA口座の開設は、1人につき1つの金融機関に限定されていることを知らずに、NISA口座を複数の金融機関に申し込んでしまった方もいるかもしれません。その場合の対処方法について見てみましょう。

審査が先に完了した口座が開設される

複数の金融機関でNISA口座開設の申し込みを行った場合、最終的にNISA口座として認められるのは、税務署での審査・手続きが最初に完了した金融機関の口座のみです。

新NISA口座は1人1口座

税務署では、各金融機関から依頼された重複確認手続きを受付順に処理します。つまり口座が開設されるのは、各金融機関における申し込み順ではなく、税務署による重複確認の手続き完了順です。したがって、最初にNISA口座開設が認められた金融機関以外の口座は、たとえ先に申し込んでいたとしても、無効扱いです。

なかには金融機関でのNISA口座開設手続きが完了してから税務署の審査が終了するまでの間に金融商品を購入できるようにしている金融機関もあります。しかし、税務署の審査によって無効となったNISA口座で購入していた金融商品は、一般口座で買付けたものとみなされ、売却時の譲渡益は確定申告が必要となる可能性があります。配当金などは課税対象となり、証券会社で税金が徴収されます。NISA口座を重複して申し込まないよう、申し込み先は慎重に選択することが重要です。

必要であれば取り消しを申し出る

誤って複数の金融機関でNISA口座開設の申し込み手続きをしてしまった場合、開設を希望しない金融機関に対して、早急にNISA口座開設申し込みの取り消しを申し出ましょう。希望する金融機関でNISA口座を開設できない可能性があります。

各金融機関は、利用者からNISA口座開設申し込みを受け付けたあと、口座を開設し、税務署に対して重複確認手続きを行います。前述のとおり、税務署で実施する重複確認の手続きの順番は金融機関からの受付順です。そのため、最初に手続きが完了した金融機関のNISA口座のみが有効となります。

複数の金融機関にNISA口座の開設を申し込んで、どの金融機関のNISA口座が有効になりそうかわからない場合は、e-Taxを利用してNISA口座の開設状況を確認できます。

NISA口座の変更手続きはどうすればよい?

NISA口座を別の金融機関に移すためには、まず現在のNISA口座を開設している金融機関にて口座の廃止手続きを行う必要があります。そのあと、新たにNISA口座を開設したい金融機関で口座開設の申し込みを行います。

NISAの金融機関変更について知りたい方は、「新NISAの金融機関を変更するには?メリットや注意点も解説」の記事もご確認ください。

NISA口座の変更手続き

金融機関に変更手続きを申し出る

NISA口座の金融機関を変更する際、まず現在NISA口座を開設している金融機関に変更の意向を伝える必要があります。金融機関に変更希望を申し出ると、「金融商品取引業者等変更届出書」が送付されます。

「金融商品取引業者等変更届出書」を提出する

「金融商品取引業者等変更届出書」は、WEBからの申請や金融機関への問い合わせによって入手できます。

金融商品取引業者等変更届出書には、氏名や住所、変更したい年などの必要事項を漏れなく記入し、金融機関に返送しましょう。なお届出書の提出時には、本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカード(個人番号カード)のコピーを添付するのが一般的です。

「非課税口座廃止通知書」が届く

「金融商品取引業者等変更届出書」を現在のNISA口座を管理している金融機関に提出すると、金融機関側で内容の確認が行われます。確認後に交付されるのが、「非課税口座廃止通知書」または「勘定廃止通知書」です。

「非課税口座廃止通知書」は、変更前の金融機関のNISA口座にある金融商品の非課税での保有を終了する場合に発行されます。

「非課税口座開設届出書」を提出する

NISA口座の変更先となる金融機関に、「非課税口座開設届出書」と、「非課税口座廃止通知書」または「勘定廃止通知書」を提出します。まず新しい金融機関から「非課税口座開設届出書」を入手し、必要事項を記入しましょう。

次に記入済みの「非課税口座開設届出書」と、変更前の金融機関から受け取った「非課税口座廃止通知書」または「勘定廃止通知書」、本人確認書類、マイナンバーを確認できる書類を揃えて、新しい金融機関に提出します。

新しい金融機関で必要な証券口座を開設していない場合は、その手続きも併せて行いましょう。

これらの一連の手続きは1ヵ月程度で完了します。

家族ならNISAで複数口座を開設できる

NISA口座を開設するための要件は、口座開設年の1月1日時点で18歳以上の日本居住者であることです。この要件を満たしていれば、家族内で複数のNISA口座を開設できます。

人数分の非課税投資枠が使える

家族がそれぞれNISA口座を保有することで、世帯全体での非課税投資枠が増えます。その分、家族のライフプランにおける資産形成のスピードが速まります。家族でNISAに取り組む場合、NISA口座の開設手続きは個別に行う必要がありますが、同じ金融機関でも異なる金融機関でも問題ありません。家族でNISAを活用し、賢く資産形成を進めていきましょう。

分散投資ができる

夫婦や親子など、家族でNISA口座を活用する際には、それぞれの口座で異なる銘柄に投資することで、分散投資ができリスク軽減にもつながります。

分散投資の方法はさまざまです。国内株式のなかでも、異なる業種の銘柄を選んだり、株式と債券のように投資商品を分けたりすることなどが考えられます。家族で投資スタイルについて話し合い、それぞれの口座での投資方針を決定することが重要です。NISA口座を有効に活用し、より安定的な資産運用を目指しましょう。

NISAの口座開設はしっかり考えて決めよう

NISA口座は原則として1人1口座しか開設できないため、金融機関選びは慎重に行いましょう。年に1回は金融機関の変更が可能ですが、タイミングを気にする必要があるうえ、手続きには時間と手間がかかります。そのため、NISA口座開設時に、自分のニーズに合った金融機関を選ぶことが重要です。

金融機関を選ぶ際は、取扱商品のラインナップや手数料体系などを確認し、自分に合うサービスを提供する金融機関を選びましょう。新NISAでの資産形成に取り組んでいくうちに、購入する金融商品の幅を広げたくなることもあるかもしれません。その場合に備えて金融商品を幅広く取り扱っている金融機関を選ぶのもおすすめです。

まとめ

NISA口座は、1人につき1口座しか開設できません。新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できますが、それぞれの非課税投資枠で異なる金融機関を選ぶことはできません。NISA制度の特徴を十分に理解し、非課税枠を最大限に活用できそうな金融機関を選択しましょう。

複数の金融機関でNISA口座を申し込んでしまった場合、開設を希望しない金融機関に対して取り消しを申し出る必要があります。また、NISA口座の金融機関変更は年に1回可能ですが、手続きにはある程度の時間と手間がかかります。これからNISA口座を開設する方は、取扱商品や手数料体系など、自分のニーズに合った金融機関を慎重に選びましょう。

家族でNISA口座を活用することで、非課税枠をより効果的に利用できます。夫婦や親子でNISA口座を開設すれば、世帯全体での年間投資可能額が増加し、分散投資の選択肢も広がるでしょう。

三井住友銀行経由でSBI証券口座を開設すると、NISAでもVポイントを効率的に貯めることができます。これから新NISAの非課税制度で投資を始めたい方は、ぜひご検討ください。

  • 2024年7月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

黒髪りの

金融ライター。FP資格や投資経験をもとに、資産運用や生命保険、不動産関連の記事を執筆。半導体・自動車業界で16年にわたり技術翻訳を担当していた経験から、英語学習の記事執筆も行う。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、日商簿記2級、英検準1級、TOEIC885点など

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