米国国債とは?

米国国債は、アメリカ合衆国財務省によって発行される政府債券で、トレジャリーや米国財務省証券とも呼ばれています。そもそも債券とは、国、地方自治体、企業が投資家からお金を借りるために発行する証券です。満期まで保有すれば元本に加えて利子を受け取ることが可能です。

債券とは

米国国債と日本国債の違いとは?

米国国債と日本国債では、大きく通貨や利回り、リスクなどの面で違いがあります。米国国債は、米国の経済状況や金融政策を反映して利率が決定されます。低金利環境が長期化している日本と比べると、米国国債の利回りは高い傾向にあります。

米国国債と日本国債の比較表

通貨・利回り・リスクの違いなど、米国国債と日本国債の違いを表にまとめました。

下の表は横にスクロールできます

米国国債 日本国債
通貨 米ドル建て 日本円建て
利回り 日本国債に比べて高め 米国国債に比べて低め
主なリスク 為替変動リスク
金利変動リスク
信用リスク
信用リスク

日米10年国債利回りの推移

高い利回りが魅力である米国国債ですが、日本国債との利回りを比較してみましょう。

以下は、米国10年国債と日本10年国債の利回りの推移を示したグラフです。アメリカの10年物国債の利回りは、日本の10年物国債の利回りと比べて高い水準を保っていることが分かります。

日米金利の推移(2019〜2024年)

米国国債の2つの種類

米国国債には、大きく分けて2種類があります。利付債とゼロクーポン債です。この2つの米国国債は、利子の受け取り方に違いがあります。

米国国債の2つの種類

利付債

利付債とは、保有している間、年2回の利子を受け取ることができる債券です。利払いは半年ごとに行われ、投資を行う方は定期的なインカムを得ることができます。また、利付債は満期時には額面金額が返済されるため、元本の安全性も高いといえます。

利子と元本の両面で安定性を提供する利付債は、安定収入を重視するインカム志向の投資を行う方にとって魅力的な選択肢の1つでしょう。

ゼロクーポン債

ゼロクーポン債とは、保有している間、利子(クーポン)を受け取ることができない代わりに、あらかじめ額面金額から一定の割引率を適用した価格で発行・販売される債券のことを指します。投資を行う方は、額面金額よりも低い価格でゼロクーポン債を購入し、満期日には額面金額で償還を受けます。つまり、購入価格と償還金額の差額が、利子に相当する収益です。

ゼロクーポン債では保有期間中に利子収入を受け取らないため、満期時まで持ち続けることで約束されたとおりの額面金額と、購入価格の差額を、償還差益としてまとめて得ることができます。

米国国債のメリット・デメリット

米国国債に投資をする前に、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。ここでは、米国国債の主なメリットとデメリットを紹介します。

メリット

米国国債には、信用度が高い、流動性が高い、利回りが高いといったメリットがあります。

信用度が高い

米国国債は、アメリカ合衆国政府が元本と利子の支払いを保証しており、信用度の高い債券の1つとして認識されています。信用度とは、債務者が約定通りに債務を履行する能力と意思を示す指標です。米国政府は世界最大の経済大国として、その信用度に強い信頼が寄せられています。

米国国債への投資は、元本の安全性と確実な利子収入を求める方にとって、魅力的な選択肢の1つといえます。「外貨投資に挑戦したいけど株式はリスクが大きくて不安」という方にもおすすめです。

流動性が高い

米国国債は、その高い信用度と市場規模を背景に、高い流動性を誇っています。流動性とは、資産を現金化しやすい度合いを示す指標です。米国国債は世界中で活発に取引されているため、売買にともなう制約が少なく換金性に優れています。

流動性が高いため、投資を行う方は目的に応じて米国国債を長期保有したり、短期的なトレーディングに用いたりすることが可能です。長期保有では、安定したインカム収入を得ることができ、短期トレーディングでは、金利変動にともなう価格変動を利用してキャピタルゲインを狙うことができます。

利回りが高い

米国国債の利回りは、米国の金利情勢に応じて決まるため、長期的な低金利環境にある日本と比べると、非常に高い水準で推移しています。

米国では、経済成長率や物価上昇率などの要因を考慮して金利が設定されるのに対し、日本では2024年に日銀がマイナス金利政策を解除したものの、米国と比べると依然として低金利が続いています。この日米金利差を考えると、米国国債の利回りは日本国債と比べて魅力的な水準です。ただし、為替リスクや金利変動リスクには注意が必要です。

デメリット

一方で、米国国債には為替の知識が必要になる、円換算で損をする可能性がある、金利上昇で債券価格が下落するといったデメリットもあります。

為替の知識が必要になる

米国国債は米ドル建てで売買するため、「円高・円安とは何か」「為替相場が動く要因」といった基本的な知識を理解しておく必要があります。為替の変動で資産の評価額が変動することに慣れていない方には、少しハードルが高く感じるかもしれません。

円換算で損する可能性がある

米国国債への投資では、基本的に購入時に円貨から米ドルへ、売却時に米ドルから円貨に換金します。そのため、満期時の為替が購入時より円高ドル安となった場合、ドル建ての元本と利子を円貨に換金する際に、為替差損が発生します。つまり、購入時よりも少ない金額しか受け取れません。

逆に、満期時の為替が円安ドル高になっていれば、円貨に換金する際に為替差益が発生します。しかし、満期時の為替が円安になるか円高になるかは誰にも予測できません。

このように、為替の変動により損失や利益が発生したりすることを「為替変動リスク」といいます。

一方、日本国債は円建てであるため、為替変動リスクはありません。この為替リスクの有無は、米国国債と日本国債を選択する際の大きな違いといえるでしょう。

金利上昇で債券価格が下落する

米国国債は満期前に売却することも可能ですが、売却時の金額は額面金額ではなく、その時点の債券価格です。

債券価格はほかの金融商品のように日々変動し、金利の変動次第で損失や利益が発生します(金利変動リスク)。一般的に、金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が下落すると債券価格は上昇します。

米国国債は固定金利が多いため、市場金利が上昇すると既存の債券の価格が下がる傾向にあります。売却を考えて米国国債に投資する場合、売却価格が購入価格を下回る可能性がある点に注意が必要です。米国国債の購入は、中長期で運用することを前提に行いましょう。

米国国債の選び方

米国国債に投資するためには、まずどれを選ぶかを決めなければなりません。ここでは米国国債の選び方を見ていきましょう。

新発債と既発債

まずは、新発債と既発債のどちらかを選びましょう。

新発債は新たに発行される債券です。額面金額や利率、償還期限(満期)などの発行条件が提示されたうえで募集・売出しが行われ、その期間中にのみ購入できます。購入価格や償還価格、利子があらかじめ決まっているため、満期まで保有した場合の利益が明確です。

一方、既発債はすでに発行され、流通市場で取引されている債券です。証券会社に在庫があれば、いつでも購入できます。既発債は時価での取引となるため、償還価格よりも低い価格で購入できれば、満期時に償還差益(債券の購入価格が償還価格よりも安い場合に得られる利益)が期待できます。満期までの残存期間もさまざまなものがあるため、自分の希望条件にあった債券を見つけやすいでしょう。

購入から満期まで安定した運用計画を立てたい方は新発債、自分で条件が合うものを探したい方は既発債を選ぶのがおすすめです。

利付債とゼロクーポン債

次に、利付債とゼロクーポン債のどちらかを選びましょう。利付債は満期までの間に利子が支払われるため、定期収入を得たい方に向いています。

ゼロクーポン債は、途中の利子支払いはありませんが、満期時に多く受け取りたい方に向いています。

償還期間

一般的に、償還期間が長いほど債券の利率は高くなる傾向にあります。長期投資を前提に満期まで保有したい方は、償還期間まで長いものを選ぶとよいでしょう。

ただし、途中で売却する可能性もある場合には金利上昇リスクを考慮する必要があります。償還期間が長いものほど、金利上昇時の価格低下幅が大きくなる傾向があります。金利上昇リスクを避けたい方は償還期間が短期のものを選ぶとよいでしょう。

米国国債の買い方

米国国債投資は、米国国債を取り扱う証券会社から直接購入する方法と投資信託などを通して間接的に投資する方法があります。それぞれの投資方法をみていきましょう。

証券会社から直接購入する場合

米国国債に直接投資をしたい場合は、米国国債を取り扱う証券会社で購入します。ネット証券をはじめ、オンラインで開設申し込みできる証券会社を選べば、窓口に出向く必要がありません。ここではネット証券を利用するものとして、一般的な購入の流れを以下で紹介します。

外貨建て口座を開設する

まずは、証券会社に外貨建て口座を開設しましょう。証券口座をお持ちでない場合は、証券総合口座も同時に開設します。

米ドルを入金・両替する

口座開設が完了したら、口座を開設した証券会社のルールに沿って、米ドルを入金しましょう。米ドルの入金が難しい場合には円貨で入金し、注文時に円貨決済を選べる証券会社もあります。その際には注文時の両替レートで米ドルに両替された金額が決済されます。

購入したい銘柄を選ぶ

購入したい米国国債の銘柄を選びましょう。選択の際には最低購入金額・満期日・利回り・購入時の為替など、重要な情報をしっかりとチェックしておくことが大切です。

金額を入力して注文確定する

取引ページで自分の買付け余力を確認し、選択した銘柄をいくら購入するか金額を入力します。買付条件を確認し、注文を確定すれば完了です。

投資信託やETFで投資する方法もある

投資信託やETF(Exchange Traded Funds)を購入し、間接的に米国国債へ投資する方法もあります。

投資信託とは、多数の投資家から資金を集め、専門家であるファンドマネージャーがさまざまな資産に分散投資を行う金融商品です。米国国債を組み入れた投資信託を選ぶことで、米国国債を含めた分散投資ができます。

ETFは、上場投資信託とも呼ばれ、金融商品取引所に上場している投資信託の一種です。ETFも、複数の銘柄で構成されており、米国国債を組み入れているものもあります。

NISAでも間接的に投資できる

投資信託やETFなどの金融商品を通じて、間接的に米国国債に投資する場合には、NISAを活用できます。NISAでは、個別の債券を直接購入することはできませんが、投資信託やETFは購入可能です。これらの投資によって得られる利益が非課税になり、運用効率が高まることが期待できます。

初心者にはクレカ積立がおすすめ

投資信託やETFを通して米国国債への投資ができることをお伝えしましたが、新NISAでこのような米国国債ファンドに投資する際、クレジットカードを利用したクレカ積立がおすすめです。クレカ積立とは、クレジットカードで投資信託などを定期的に購入する方法です。

積立金額に応じて投資によるリターンとは別にクレジットカードのポイントが貯まります。さらに、貯まったポイントを投資に活用できる金融機関もあるため、より効率的に資産を増やすことができるでしょう。ただし、クレカ積立で購入できる商品や積立金額に制限がある場合があるため、各金融機関の規定を確認することが大切です。

クレカ積立について詳しく知りたい場合は、「クレカ積立って何?メリット・デメリットやカードの選び方など詳しく解説」こちらも参考にしてください。

米国国債のベストな売買のタイミング

米国国債は金利や為替の状況によって、購入や売却に向くタイミングが変わります。購入や売却に適したタイミングを理解しておきましょう。

購入タイミング

購入に適した代表的なタイミングは次のとおりです。

金利が高く利回りが上がるとき

米国国債は、一般的に金利が高いと価格が下がるため、利回りが上がる傾向があります。固定金利の場合はその利回りを満期まで固定できるため、金利が高いときに購入することで投資効率が良くなります。

価格上昇が期待できる利下げ局面

金利が下がると米国債価格は上がる傾向があり、価格が上がったタイミングで売却することも可能です。そのため、途中売却を検討する場合には、利上げが終了したと見られるタイミングで購入するのも有利に働きます。

為替リスクを抑えられる円高のとき

外貨を使った投資では、購入したときよりも円安で売却するのが利益(為替差益)を得るための基本です。円安時に購入すると為替差損(為替レートの変動によって生じる損失)のリスクが高まるため、米国国債は円高局面で購入し、円安で満期を迎えるのが理想です。

売却タイミング

売却に適した主なタイミングは次のとおりです。

満期まで保有する場合

米国国債を途中で売却せずに満期まで保有すれば元本が保証されるため、基本的に元本割れのリスクはありません。ただし、これは米ドル建ての場合であり、満期時に円に両替して受け取る場合は為替変動リスクに注意が必要です。

また、米国国債では極めて低いと考えられますが、満期前に償還されてしまう可能性がゼロではないことにも注意しておきましょう。

市場で途中売却する場合

債券価格は金利や市場環境で変動するため、売却タイミングによって損益が発生します。満期前に売却する場合には売却益を得られるよう、債券価格が上がっているタイミングで売却するのが理想的です。利上げ局面では価格が下がりやすいため、注意が必要です。

銘柄の豊富なSBI証券で米国国債を買おう

米国国債への投資を検討する際は、どの証券会社で購入するかも意識したいポイントです。米国国債の個別銘柄ラインナップは、証券会社によって異なります。利回りや残存期間(償還期間までの残りの期間)など、希望する銘柄を見つけるためには品揃えの多い証券会社がおすすめです。

例えば、SBI証券は利付債、ゼロクーポン債ともに米国債銘柄(既発債)を豊富に取り扱っており、残存期間も短いもので約1.0年、長いもので約29.9年(※)と多様です。取扱銘柄が気になる方はぜひチェックしてみましょう。

※ 2025年6月30日現在

まとめ

米国国債は、アメリカ合衆国財務省によって発行される政府債券です。長期化する日本の低金利環境と比べ、米国国債は高い利回りを提供し、安全性と流動性の高さからグローバルな投資を行う方に支持されています。ただし、米国国債はドル建ての金融商品であり、為替変動リスクがある点には注意が必要です。また、満期前に途中売却を検討する場合は、金利変動リスクも考慮しておく必要があります。

米国国債を購入するには、個別銘柄を直接購入する方法と、投資信託やETFを通して間接的に投資する方法があります。投資信託やETFを購入する場合には、利益が非課税になるNISAを活用できるため、ぜひ検討してみましょう。

証券会社を選ぶ際には、米国国債(既発債)や投資信託、ETFの取扱銘柄が豊富なSBI証券がおすすめです。まだSBI証券の証券口座をお持ちでない方は、三井住友銀行のデジタル口座Oliveを通じてSBI証券の口座開設をご検討ください。Oliveを通じてSBI証券の口座を開設すると、Vポイントが貯まりやすくなり、貯まったVポイントを投資に活用することも可能です。新NISAにも対応しており、クレジットカードを使った投資信託の積立購入も可能です。うまく活用して、よりお得に投資を始めましょう。

  • 2025年9月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

續恵美子

ファイナンシャルプランナー(CFP®、ファイナンシャル・プランニング技能士)。
生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。
渡仏後は2年間の自己投資期間を取り、地元の大学で経営学修士号を取得。地元企業で約7年半の会社員生活を送ったあと、フリーランスとして念願のファイナンシャルプランナーに。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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