つみたてNISA(積立nisa)とは?
つみたてNISAってよく聞くけど、具体的にどんなものですか?
投資経験の少ない人でも、低リスクで資産運用ができるように支援する非課税制度のことです
つみたてNISAとは、2018年1月よりスタートした、投資経験の少ない人でも資産運用を始めやすくするための非課税制度です。つみたてNISAは、少額から積立投資を始めることができ、長期・積立・分散投資によってリスクを抑えた運用ができます。
超低金利時代が続いている現代日本では、預金でお金を増やすことが難しい状況です。
しかし、株式投資や投資信託などは、預金より大きなリターンを期待できる一方で、元本割れのリスクがあります。また、運用によって得た利益に対して20.315%の税金が課せられるため、投資経験の少ない人にとってはハードルが高いものでした。
そんな投資初心者でも、リスクを抑えて長期的な資産運用を始められるようにと創設されたのが、つみたてNISAです。
つみたてNISAの対象者や投資方法等の基本的な情報をまとめると、以下のとおりです。
対象者 | 日本に住む18歳以上の人 |
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投資可能期間 | 2018年1月~2042年12月末 |
非課税期間 | 投資した年から最長20年間 |
年間の投資上限額 | 40万円 |
投資対象商品 | 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 |
投資方法 | 販売会社(銀行等)で専用口座を開設 |
- 出典: 金融庁「 つみたてNISAの概要」
対象者
つみたてNISAは制度開始より日本に住む20歳以上の人なら誰でも口座開設できましたが、成人年齢の引き下げにともない2023年以降満18歳以上であれば口座開設が可能になりました。
投資可能期間
つみたてNISAは2018年1月〜2042年12月末までの制度です。つまり2042年までは、つみたてNISA口座の開設が可能です。
非課税期間は最長20年
つみたてNISAを活用すると、年間最大40万円の投資をおこない、その運用によって得た利益にかかる税金が最長20年間にわたってゼロになります。
なお、非課税期間が終わった後の対応については以下の記事が参考になります。
【関連記事】つみたてNISA、20年後はどうすると賢い? 元本割れ・暴落したときの対処法は?
年間の投資上限額
つみたてNISAの年間の投資上限額は40万円です。つまり年間の投資元本が40万円までなら運用益に税金がかかりません。
ただし年間の投資上限額である40万円をその年に使い切れなかった場合、使い切れなかった分を翌年に持ち越すことはできないため、注意が必要です。
投資対象商品
また、つみたてNISAは投資経験の少ない人でもより安心して始められるよう、投資先も国が厳選しています。投資対象となるのは、長期・積立・分散投資に適したものに限定されているため、短期間で一括購入・売却する投資方法に比べると、損失を出すリスクを低減できるのも大きな特徴のひとつです。
さらに、つみたてNISAの対象商品は購入時手数料が0円となっていますので、比較的コストがかからない仕組みになっています。
なお、ここでいう「長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託」の主な要件は以下のとおりです。
- 公募株式投資信託または上場株式投資信託(ETF)
- 購入時手数料が0円で、信託報酬も低い商品
- 毎月の分配型でない商品
- 信託期間が無期限または20年以上の商品
投資方法
つみたてNISAを始めるためには、まずつみたてNISA専用口座を開設する必要があります。2023年時点では一般NISAとつみたてNISAは併用できないため、始めるときは一般NISAとつみたてNISAのうち自分に合った方を選びましょう。
▼つみたてNISAの口座開設をしたい方へ
つみたてNISA口座を始める方・口座開設はこちら
一般NISAとの違いが知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてください。
【関連記事】一般NISAとつみたてNISAの違いは? どっちがおすすめ?
「積み立てる」ことで投資のリスクが低減される
なぜ長期で積み立てることでリスクを抑えられるんですか?
複利効果を得られ、かつ買付単価を平準化できるというメリットがあるからです。
つみたてNISAのような積立投資が投資未経験の初心者にも推奨されている一番の理由は、「投資のやり方」によって投資リスクを軽減できるためです。
投資のやり方として、「価格が低いときに一括で購入し、価格が高くなったときに一括売却する」という方法があります。この方法で投資すると、短期間で大きなリターンを期待できる反面、急な値下がりにより多額の損失が生じる可能性もあります。
とくに投資経験の少ない方は、相場の動きを見極めることが難しいため、売買のタイミングを誤って損失を出す可能性が高い傾向にあります。
一方、積立投資は価格が変動する商品を、長期間にわたり一定の金額で毎月買い付ける、という方法で投資を行います。価格が高いときは購入できる数量が少なくなりますし、逆に価格が安いときは多く購入できることになります。そのため、価格変動にともなうリスクが低減されることがポイントです。短期的に大きなリターンこそ見込めませんが、値動きによるリスクを抑えて投資することができます。
一括購入・売却の場合は売買のタイミングを見極める必要があり、投資を始める時期も見計らわなければなりませんが、積み立てなら自分の好きなタイミングで資産運用を開始できるのも利点です。
さらに、年間40万円を投資上限額として、最長20年間、得た利益が非課税になるため、さらにメリットを享受できます。
つみたてNISAのメリットについて、くわしくは次で説明します。
つみたてNISAのメリットとデメリット
つみたてNISAは、具体的にどんなメリットとデメリットがあるんですか?
メリットは少額から始められること、リスクを抑えた資産運用ができることで、 デメリットは元本割れの可能性があることです。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAのメリットは、以下の4つです。
- リスクを抑えて少額から投資を始められる
- 最長20年間にわたり運用益が非課税
- 投資のタイミングに迷わない
- 必要なときに解約・換金できる
それぞれについて、詳しく解説します。
@リスクを抑えて少額から投資を始められる
つみたてNISAは金融機関によっては毎月100円や1,000円など少額からスタートできます。つみたてNISAは積み立てることで投資のリスクが低減されるとはいえ、それでも怖いという人は、少額から始めることも検討してみましょう。
A最長20年間にわたり運用益が非課税
さらに、年間投資額40万円を上限として、投資した年から最長20年間にわたり運用益が非課税になることもよいですね。
たとえば毎月3万円を20年間にわたって積み立て、運用利回りが3.0%だった場合、積立元金720万円、運用益は262万9,816円となります。
本来ならこの約262万に対して20.315%が課税されますが、つみたてNISAを利用すれば、その分の税金を節約することが可能です。
つみたてNISAの投資対象商品は少額から積み立てることができ、購入時手数料は0円、信託報酬※は一定水準以下の投資信託に限定されているため、通常の株式や投資信託と比べてコストを抑えて投資をスタートできます。
- ※信託報酬…投資信託を保有している間、「投資している金額に対して何%」というかたちで発生する費用。
B投資のタイミングに迷わない
一般的な投資では、安いときに購入して高いときに売却すれば利益になりますが、投資初心者にとっては売り時、買い時の見極めが難しく感じるかもしれません。つみたてNISAは、あえて毎月一定の時期に、一定額を投資することでリスクを抑えて運用するというスタイルのため、投資のタイミングに迷うことがありません。
C必要なときに解約・換金できる
さらに、必要なときに解約・換金できるうえ、18歳以上であれば始める年齢にも制限はありません。同じく積立投資であるiDeCoでは、原則60歳まで解約不可であり、引き出しができません。つまり、つみたてNISAは老後に向けて資産形成をしてみたい! という方でも始めやすいですし、子どもの教育資金のために必要なときに引き出したいなど、ニーズや目的に合わせて中長期的な資産計画に役立てることができます。
つみたてNISAのデメリット
一方、つみたてNISAのデメリットとしては元本割れの可能性があることと、他の所得と損益通算できないことが挙げられます。それぞれのデメリットについても押さえておきましょう。
@元本割れの可能性があること
つみたてNISAは少額から長期・積立・分散投資できる投資商品を対象とした制度なので、大きな損失を出すリスクは比較的低いですが、預金と違って元本は保証されていないので、運用の仕方によっては元本割れする可能性もゼロではありません。
A他の所得と損益通算できないこと
また、一般的な投資信託は、保有する複数の投資商品の損益を相殺する「損益通算」をおこなえるため、損失が出た場合には他の投資で出た利益と相殺して節税できる場合があります。しかし、つみたてNISAは他の口座にある投資商品との損益の相殺ができないため、仮につみたてNISAで損失が出ても節税に活用することはできません。
どんな人がつみたてNISAに向いているの?
つみたてNISAに向いているのってどんな人ですか?
初めて投資を行う人や、まとまった資金がない人、少額から始めたい人におすすめです
一般NISAとも比較されるつみたてNISAですが、どのような人がつみたてNISAに向いているのでしょうか?つみたてNISAに向いている人の特徴を紹介します。
投資経験のない初心者
つみたてNISAの対象となる商品は、各種手数料が低水準で、リスクを抑えて投資ができる長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託およびETFに限定されています。年間40万円を投資上限額として、最長20年間、得た利益が非課税になることなどから、これまで投資経験のない初心者こそぜひ活用したい制度です。
手元にまとまった資金がない人
少額から始めることもできるので、手元にまとまった資金がない人でも気軽に資産運用を開始できます。
中長期的な資産計画を立てたい人
一時的な元本割れの可能性はありますが、定額をコツコツと積み立てて価格変動のリスクを抑えて運用するので、中長期的な資産計画を立てたい人におすすめです。
つみたてNISAを始める際に注意すべきこと
つみたてNISAを始める際に、あらかじめ確認しておくべき内容を紹介します。ここで紹介する注意点をまず確認した上で、口座開設を検討してください。
@NISA口座は1人ひとつ
NISA口座は1人につき1口座と決まっているため、つみたてNISAを利用した場合、一般NISAは利用できなくなります。ただし1人1口座なので、夫と妻がそれぞれつみたてNISA口座持ったり、あるいは夫がつみたてNISA、妻が一般NISA口座を持ったりすることは可能です。
AつみたてNISAと一般NISAは併用できない
1人がつみたてNISAと一般NISAは併用することができません。それぞれの特徴を理解して自分にあった方を選びましょう。ただし一定の要件を満たして、各金融機関の期限までに手続きを完了すれば、つみたてNISA口座から一般NISA口座あるいは、一般NISA口座からつみたてNISA口座に変更することは可能です。
B翌年の非課税投資枠に移せない(ロールオーバーできない)
つみたてNISAは20年間の非課税期間が終了すると、一般NISAのように再度翌年の非課税枠に移す(ロールオーバー)ことができません。つみたてNISAの非課税期間終了後は、換金して受け取るか、一般口座や特定口座といった課税口座で運用を継続することになります。
つみたてNISAの始め方
つみたてNISAを始めるには、まずつみたてNISA専用口座を開設する必要があります。つみたてNISAは1人1口座しか作れないため、商品の選択肢が豊富にある金融機関や、自分にあった商品がある金融機関を選びましょう。
口座開設の申込みはインターネットやオンライン面談、店頭窓口などさまざまな方法があります。なお、口座開設にあたってはマイナンバーの提示が必要になるため、事前に準備しておきましょう。マイナンバーカードがないときは、通知カードに加え、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類で申込みが可能です。
申込完了後、審査に問題がなければつみたてNISA口座が開設され、投資ができるようになります。
【関連記事】つみたてNISAの始め方〜 口座開設から運用開始までの流れも解説〜
まとめ
長期・積立・分散投資に適した投資信託を対象としたつみたてNISAは、年間40万円を投資上限額として、最長20年間、得た利益が非課税になるお得な制度です。投資のタイミングに迷うこともなく、一般的な投資に比べて、初めて投資をする方でも安心して始めることができます。
つみたてNISAは日本に住む18歳以上の人なら誰でも利用できますので、これから投資を考えている方は、ぜひつみたてNISAを検討してみましょう。
【関連記事】いつもの銀行でつみたてNISAを始めよう! 三井住友銀行のつみたてNISA
- ※この記事は2021年9月22日に公開した内容を2023年3月8日に更新して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
金子 賢司
個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。