スペシャル対談
ラグビー 稲垣啓太選手×SMBCグループ グループCEO太田純
『ラグビーとSMBCに共通する価値観』

ラグビーの稲垣啓太選手とSMBCグループ グループCEO の太田純が、スポーツライターの藤島大さんによる司会のもと、ラグビー憲章とSMBCグループの「Five Values」との共通点、組織のリーダーが大切にすべきものについて熱く語り合いました。


藤島氏:本日司会を務めます、スポーツライターの藤島大です。ラグビー選手の稲垣啓太さん、SMBCグループの太田社長と一緒にラグビーの魅力を熱く語るということでいろんな話を交えながらお話できればと思います。

稲垣選手太田藤島氏:よろしくお願いします。

藤島氏:稲垣選手の紹介を私の方から。1990年、新潟県に生まれました。186センチ116キロ、ポジションは左プロップ、スクラムの一番前の左側でスクラムを組む役割です。スクラムを組むだけではなくて、タックルの数が多くて転んだらすぐ起きて、またどこかに行って仲間を助けに行く。その献身性というんですか。非常に尊敬される選手です。SMBCグループさんが2021年11月に制作したテレビCM「ともに、前へ。」篇でも、もうおなじみですね。

SMBCグループ TVCM「ともに、前へ」篇 60秒

SMBCとラグビーの
共通点とは!?

「チームビルディング」とは

稲垣選手:僕らのチームには日本はもちろん、南アフリカ、ニュージーランド、サモア、トンガ、韓国といったいろんな国籍の選手がいて、一緒にプレーをしています。色々な文化が入りまじったチームなんですよね。もちろん衝突もあり、なかなかうまくいかないこともありますが、多様な文化を個々別々に捉えるんじゃなくて、いろんな文化を一つに融合して、自分たち独自の文化を作り上げてきました。

藤島氏:太田社長も組織のリーダーとして、いわゆるチームビルディングをされていると思うのですが、意識していることはありますか。

太田:私、強いチームには3つ特徴があると思うんですよ。一つは、一人ひとりが強いこと。稲垣さんが相手の3番(右プロップ)に押し負けないという強さがあるから、強いチームになる。もう一つは、チーム全員が目指すべきゴールと、そのためにやることを全部分かって共有している、この強さ。三つ目が、一人ひとりが自分の役割を理解していて、その上でチームプレーに徹すること。これが出来るチームは強いなと思っています。まさに稲垣さんのチームは、それができていたと思うんですよね。我々も全く同じで、そういう組織を作っていきたいということで、ラグビーに色々勉強させてもらいながら経営しています。

ラグビー憲章とSMBCの「Five Values」

藤島氏:ラグビー憲章というラグビーの世界の憲法のようなものがあります。品位・情熱・結束・規律・尊重。こういうコアバリューがあるんですけれども、SMBCの「Five Values」と非常に重なるところが多い。例えば「Integrity」、品位ですね。

太田:当然ですけれど大切なことです。企業市民と言いますかね。我々自身、社会の中の一つのパーツじゃないですか。一つ一つのパーツがやはり品位を持っていないと、社会全体が品位を失くしていくという意味です。我々は特に社会におけるプラットフォーマーというところがあります。例えば SMBCグループにおいては、三井住友銀行では沢山のお客さまの預金をお預かりしていますし、三井住友カードでは実は銀行の口座数よりも多くの方にカードをご利用頂いています。だからこそ、そこが品位を失くしたら大変な悪影響を与えるということで、やはり品位をもって仕事をするって大事だと思いますね。これは企業だけに限らず、どんな組織でもそうだと思うし、稲垣さんもそう実践されていると思いますが、大事なことだと思います。

藤島氏:「Customer First」というのは、日本列島の重大なプラットフォームとしてのある種の敬意や尊重していくことに繋がっていると。

太田:そうですね。リスペクトですね。まさに、お客さまのために何ができるかというのを真剣に考える。それが結局チームのために何ができるかとか、社会のために何ができるかということに繋がっていきます。だから、まず自分ではなくて相手のこと、相手のために何ができるかというスピリットがすごく大事だと思いますし、それは本当にリスペクトと重なります。

藤島氏:それはまさに稲垣さんがグラウンドの内外で、実践していると思います。

稲垣選手:責任というのはすごく感じるんですよ、選手として。チームとして行動していて、メンバーに入れなかった選手がいるわけじゃないですか。すごく悔しいと思います。僕もメンバーに入れなかったことを経験しているので、すごく悔しいという気持ちもあったんですけれど、でもこのチームのことが本当に好きだし、このチームとして勝っていきたいから、自分はじゃあ、今はこういう試合に出られない立場だけれど、チームに対して何ができるんだろうと。そういうことを考えたんですよ。そういった気持ちというのは、やはり絶対に忘れちゃいけない部分だと思っているんですよね。

藤島氏:「Proactive & Innovative」。先進性が必要だと。

太田:ラグビー憲章の「Passion」に繋がるかもしれませんけれども、まさに自分から「Proactive」に動いていかないといけないし、何か新しいものを求めていかなきゃいけないということです。これだけ変化の激しい時代ですから、立ち止まっていること自体がもう後退を意味するんです。だから常に新しいものを持って、常に進化を求めて自ら積極的に活動・行動していくことは、すごく大事だと思うんです。

藤島氏:先進的でなければ、体の大きな海外のチームに勝つことは難しいだろうし、独自性がなければ難しい。そういうところに、まさに生きていると思うんですけれども、その点はどうですか。

稲垣選手:僕も成長ありきだと思っているので、自分のコンディションを維持しようという考えはすごく嫌いなんです。維持=衰退だと思っているので。維持しようとしているということは、成長を望んでいないというのに近いと思っているんです。なので、僕はすごく太田社長の考えに、今、感銘を受けたんですけれど、僕らのチームのキーワードに「Safety Lockを外す」というのがあって、人間どこかで自分に制限をかけるんですよね。だけど、ミスはしてもいいと。ディフェンスですごくラインスピードを上げて、前に上がって抜かれてもいい。抜かれたら、また思い切り戻って、やり直せばいいじゃないか。そういったKey(Safety Lock)を外すというのは、僕らのチームのキーポイントだったので。

太田:そうですね。何か新しいことをやる時に、多くの人たちはこれをやったらと言うと、できない理由を探しちゃうんです。これがあるからできないとか、体力がないからできない、時間がないからできないとか、色々な理由を探してしまうんだけれども、そうではなくて、まずやることを考えよう。やるために何をしたらいいのかを考えよう。そっちの前向きさが必要ですよね。そうしないと進歩は多分ないと思うんです。

藤島氏:「Speed & Quality」。これもスポーツのチームづくりと、重なるような気がするんですけれど。

太田:もうこれだけ変化の激しい時代ですから、同じことをやるのに今日やるのと明日やるのとでは全然違いますから。とにかくスピードをもって、「Proactive」に前向きにというのが一番大事です。けれども質を忘れてはいけない。これはラグビーも同じだと思うんですけれども、ゲームのクオリティーってありますよね。

稲垣選手藤島氏:あります。ありますよね。

太田:あれは大事にしなきゃいけないなと。それは我々も肝に銘じて、質の高いサービスをスピーディーに提供する、というところはやっていきたいなと思っています。

藤島氏:「Team "SMBC Group"」。まさにチームの話ですけれども、ここについてお話をお聞かせ下さい。

太田:我々SMBCグループの強みの一つは、それぞれのグループ各社が強いことにあります。そういう意味では個々が強いんです。だからその強い一人ひとりが同じゴールを目指して、そのために自分たちが何をやるか理解して共有して、その上でチームプレーに徹するとなると、いいチームができるはずなんです。それを目指したいんです。だから社員には、一人ひとりではなくて、グループを考え、チームを考えてほしい。そういうメッセージですね。

藤島氏:なるほど。チームという意味では、場所がグラウンドの上か、ビジネスの場かという違いはあっても、共通するものがあるんですね。

太田:ほとんど共通していると思います。やはり組織というか、集団というのをどうやってチームとして力量を上げていくかというのは、手法は同じだと思うんです。だから稲垣さんのチームが強くなった理由もよく分かるし、それを僕らは、今度は経営に生かしていきたいなと思うので、ずっとラグビーを応援しています。

SMBCとラグビー

藤島氏:SMBCとラグビーというと、どうしても私は宿澤広朗さんが思い浮かびます。日本ラグビー界にも大きな功績を残しました。

太田:とてもシャイな人でした。けれども勝利への執念がすごくて、とにかく勝つんだと。勝つために何をするのかというゴールの設定と、そのために何をすべきだという、その道筋がすごくクリアでした。そして、ラグビーって知性のスポーツだなと思いました。体力とかそれも必要なんだけれども力だけではなくて、やはり頭というかインテリジェンスというか。これが勝敗を決めると彼の試合を観て分かりました。

藤島氏:2014年からラグビー日本代表に協賛をして、日本代表チームを応援している。さらには、小学生から大学生までの各世代の学生大会にまで協賛を広げて、特に全国小学生タグラグビー大会のタイトルスポンサーとして“SMBCカップ”を開催。この取り組みについて教えてください。

太田:やはりずっと稲垣さんのお話を聞いていても分かるんですけれども、ラグビーとその社会における企業とか、あるいは人の役割ってすごく似ているんですよね。これを小さい時から勉強する、経験するというのは、すごく大きな財産になると思うんです。だから小学校から中学校、高校、大学と成長していくに従って、自分がそのチームのために何をすべきか。自分がそのチームを強くするためにどんな心構えを持つべきか。「Integrity」もあるし「Passion」もあるし、そういうラグビーの「5つのコアバリュー」を学びながら、そうやって一人ひとりが鍛えられていくというのは、すごく意味があると思うので、小学校からの各世代の学生大会に協賛をしています。

稲垣選手が太田社長に聞きたいこと

稲垣選手:リーダーとしてチームを引っ張っていく上で、何が一番大事かということをすごくお聞きしたいです。僕は大学4年生の頃にキャプテンを務めたことがあります。一部リーグの大学にいたんですけれど、僕の代で二部リーグに何十年ぶりかに落としてしまった経験があって、そこからしばらくリーダーというものは、何が必要なのか、すごく悩んだ時期がありました。今、SMBCグループのトップである太田社長に、リーダーとして心がけているものは何なのかということをお聞きしたいです。

太田:まず自分がしっかりしないとダメですよね。リーダーが頼りないと誰も振り向いてくれない。だからまず自分がしっかりするということと、あとはその組織をどうやって引っ張っていくか。やはり自分自身がどうやって信念をもって、伝えたいかという気持ちを強くもつかというのが、一番大事かなというように思います。

稲垣選手:僕は本当に、当時大学4年生のそのキャプテンの失敗をもう大失敗だと思っているので、キャプテンになったことで、自分が何をしないといけないとか全く見えていなかったんです。そんな時にキャプテンとして僕が何か発言しても、全く説得力がないなと。太田社長が言った通りに、自分がまず何をしないといけないのかを理解すること。まず自分がやること、リーダーとして理解した上で、他の選手に話していくこと。ここだけは僕は絶対に忘れないでおこうと、改めて今思いました。

太田:でも本当に、稲垣さんのプレーを見ていると、もちろんプロップとして役割を果たされた上で、For the teamでいろんなところに出てこられますよね。だからタックルもそうだし、フォローもそうだし、モールになったら一番先に突っ込んでくるし、あの献身的なところがすごいと思うし、これがやはりリーダーの資質だと思います。

稲垣選手:ありがとうございます。

メッセージ

藤島氏:SMBCの代表、リーダーとして、太田社長から稲垣さんへ改めて応援のメッセージをお願いします。

太田:本当に今日はありがとうございました。これからますます研鑽をしていかれると思うし、ラグビーの「5つのコアバリュー」を体現されて必ずや、また世界に力強く挑んで、それで成果を上げていただけると思っていますので、これからもずっと応援して参ります。頑張ってください。

稲垣選手:ありがとうございます!頑張ります!