藤島大の楕円球にみる夢
(2022/10/03)

ゲスト/田村一博氏(「ラグビーマガジン」編集長)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。
10月3日放送回は、『ラグビーマガジン』の田村一博編集長が出演しました。

藤島スポーツライターの藤島大です。ゲストはベースボールマガジン社『ラグビーマガジン』編集長、おなじみ、田村一博さんです。お願いします。

田村よろしくお願いします。

藤島念のために略歴を。1964年10月21日、熊本市生まれ、高校は鹿児島です、鹿児島中央高校野球部でした。それから早稲田大学へ。1989年、ベースボールマガジン社に入ります。『週刊ベースボール』で実は野球記者もしていました。
田村さん、ジャパンの合宿にも顔を出していたので、ちょっといろいろ教えていただきたいと思います。
まず先にスケジュールを言いますと10月8日、またオーストラリアA代表とジャパン・フィフティーン(JAPAN ]X)の試合があります。JAPAN ]X、実質的には代表だけれども、相手の各段階に応じてキャップを与えないためにあえて違う名称にする、そういう感じの理解でいいんでしょうか?

田村そうですね。

藤島10月29日、これはジャパンとしてオールブラックスと国立競技場で。何かチケットずいぶん売れそうだと?

田村6万は超えるんじゃないかって日本ラグビー協会の方もにこにこしていました。ラグビーマガジンもにこにこですね、これは(笑)。

藤島やっぱり、オールブラックスは人気がありますよね。

田村日本代表のリーチマイケル選手とかからも「今回はチャンスがあるよ、勝てるんじゃないか」っていう声も聞こえてくるので、期待度はすごく高まっていますね。

藤島オールブラックスと戦う前にチャンスがあるかもという声が内部から漏れてくると。たぶん日本ラグビー史上初めてでしょうね。

田村そうですね。

藤島11月は遠征に出て、トゥイッケナムでイングランド、それから、ワールドカップの舞台でもありますトゥールーズでフランスと戦うということですね。田村編集長、ジャパンの合宿は別府でしたが、また別府というのがいいですね。

田村いいところでしたね。最高ですね、選手たちがうらやましいです。

藤島ジャパンの合宿地として熱心な土壌があるんですね?

田村大分県がワールドカップの前からラグビー県にしたいぐらいの気持ちがあって、いろいろな設備を整えていろいろなチームにキャンプに来てもらったり、日本代表もね、必ず別府に寄って宮崎に行くとかそういう流れができているので、地元の受け入れがすごくよくて選手もやりやすそうですね。

藤島ラグビーがなくても行きたいですもんね。キャンプの雰囲気はどうでした?

田村選手たちに聞くと若手がすごく刺激的だと。例えば下川甲嗣選手。リーチマイケル選手は「下川、センスいいよ。あの選手はいい」とそういう言葉も出るぐらいで、みんなジャパンで試合に出たいという気持ちが充満していますね。

藤島今名前があったサンゴリアスの下川はキャップがまだない選手ですよね。それをリーチがある程度一緒に練習しながら力を認めてきた?

田村全体練習の後にも2人で個人練習とかやるらしいんですけど、そこですごく質問をしてくれると。意欲も感じているんでしょうね。
一方でベテランはベテランで余裕があるというか調整の仕方が分かっているというか無理をしない、自分のコンディショニングはこうだから、という余裕は感じられますね。

藤島競争の激しいポジションがありますね。例えば10番(スタンドオフ)はファンのみんなが注目していましたけれど。

田村そうですね、春のフランス戦で李承信選手が活躍して。もともと力がある、パナソニックで大活躍しているあの山沢拓也選手もいて、東芝を引っ張る中尾隼太選手もいて、これは面白いですよね。単純にそれぞれ個性が違うので。

藤島中尾隼太は注目ですよね。

田村鹿児島大学時代から勝手に注目しています。

藤島田村編集長は鹿児島中央高校卒業ですね。実際、力をつけているんですよね。

田村全国地区対抗に出ていたときから秀でた選手だったんですね。ボールを持てば絶対にゲインできる。力じゃなくよく見て仲間を使って、自分で走って。東芝に入ってどんどんレベルが上がるに従って反応速度やどうゲームを作るのかが伸びて。今27歳だから入ってもう5年目ぐらいですね。時間がかかったかもしれないですけど。今素晴らしいと思います。

藤島タックルがいいんですよね。

田村タックルの勇気があるんですよね。ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフも「勇気があるタックルをする」と言っていました。

藤島山沢はどうですか。

田村あの瞬間的なスピードとかすごいですもんね。

藤島やっぱり何か身体能力と何かちょっと予想を超えたような能力を発揮する。ある人が「ポジションなんかどうでもいいから出してほしい、あの人はどこでもできるんじゃないか」と言っていて。ウイングでもフルバックでもどこでもできるんじゃないか。

田村確かにそう思いますね。

藤島プロップのところに浦安D-Rocksの竹内柊平という選手が入っていて、出身校は九州共立大学、183センチ、115キロ。

田村大学まではロック、ナンバーエイト、バックファイブですね。そこをやっていたのでまず動ける。接点が異様に強い。彼はトライアウトを受けて、そこで初めてプロップをやって、強いなと。それでチームに呼ばれて。

藤島D-Rocksの前身、NTTコムですね。

田村そうですね、スクラムを組んでみたら、形はちょっと変だけど体の芯が強い、そういうので誘われて。1年前はほとんど試合に出られなかったけれど、リーグワン2022は13、15試合、それくらい出て、今一気に日本代表に。こういうプロップの叩き上げの選手が出てくるとうれしいですね。宮崎工業高校出身です。

藤島またしびれますね。地方の工業高校のラグビーっていいですよね。話を聞いていると、トップクラスのクラブに出向いてトライアルを受けて、「フロントロウやってみろ」と。体がよれながら組んで、強いなっていうことは強いんですね。

田村そうですね。そういう高いレベルに行くと自分を見抜いてくれるコーチがいるというのが大きいですよね。

藤島実はそれがおとぎ話じゃなくて、そこに行った方がチャンスで来るんですよね。
あと、参加メンバーを見ているとやっぱフランカー、ナンバーエイト、いわゆるフォワード第3列が相当な争いですね。

田村オーストラリアA代表にしてもやっぱりジャパンの3列は怖いというのはみんな言いますね。いろいろなタイプがいる。パワーで来る選手もいればオフロードでつなげる選手もいると。

藤島あのナンバーエイトのテビタ・タタフが当初入ってなくて、体重が増えすぎたから「絞ってこい」と言われて絞った。

田村短時間であんなに人間痩せられるかっていうくらい体重減っていますよね。

藤島彼はたぶん海外の対戦チームは警戒する選手ですよね。分かっているけど止められない。
姫野和樹がやっぱりナンバーエイトで登録されています。

田村戻ってきましたね。本人も試合に飢えているので、すべての試合に出たいっていうぐらいの意欲があって、もう万全じゃないですか。

藤島流大が一時代表を外れていたりして、ファンの人の心配する声を聞くんですけれども、現状は?

田村だいぶ戻ってきていますね。彼は2023年のワールドカップで代表は引退だと。ラグビーを続けるかもしれないけど、もし選ばれようとそれは辞退します。その気持ちでやる。「この1年に懸けるんだ」と。

藤島茂野海人がいて齋藤直人がいて、流はベテランになってきて、例えば一時あの田中史朗が務めた役割ができる。試合を締めたり、勝ってその勝利を確定させるところに出てきたり、そういう仕事もきっとできるし、テンポのいい選手なのでもちろんスターターもできそうで、ここの層が厚くなる。
次のテーマとして、女子の15人制のワールドカップがニュージーランドでいよいよ始まるんですけれども、田村編集長ももうほどなくニュージーランドへ。

田村そうですね、久しぶりにね。

藤島この間、ニュージーランドと、いわゆる準備の試合をして大敗をしました。12対95ですね。ファンの人が「大丈夫なんですか」と。けれども、ニュージーランドはちょっと特別なんですよね。

田村この大会に懸けるニュージーランドは別物というか、ウエイン・スミス(元オールブラックス代表)が女子のディレクターとして入って、セブンズのアスリートとして才能の高い選手が何人も来て。あの時点でいちばん強い相手とあたったので、もうあれ以上とはあたらないと考えると、いい経験じゃないですかね。

藤島女子の構図というのは、イングランドが成績としては圧倒的に強くてニュージーランドがそれを追いかける立場だったけれど、並んできたというか。
12対95はあまり気にしなくていいと思っているんですよね。確かにスコアだけ見るとぎょっとしますけど、これと本大会での成績は必ずしも直接結びつかない。今、イングランド、ニュージーランドが抜けていて、フランスもだいぶ力をつけている。この3つとそれ以外という感じでいいですか?

田村はい。

藤島組み合わせとかとりあえず脇に置いて考えるとベスト4まで行く可能性はかなりのチームにある。単純に考えるとですね。

田村そうだと思います。

藤島実際、サクラフィフティーンをどう見ていますか?

田村簡単に言うと史上最強のサクラフィフティーンであるのは間違いないです。2017年と比べてまずフィジカルの面で全く強くなっているし、サイズもそうですね。そういう意味で戦術もいろいろできるようになっているし、メンバーの選手層も厚い。経験も、今年だけで7試合、テストマッチができています。しかも南アフリカやアイルランドと。こういうことは過去にはなかったことです。

藤島注目選手、たくさんいるんでしょうけれど、この人を見たらいいというのは?

田村斎藤聖奈。もともとフッカーをやっていたんですけど、2019年からフランカーになって、今めちゃくちゃいい選手ですね。

藤島気が強い、ラグビー理解が深い。

田村トライが取れる。ゴール前の決定力はすごい自信があるらしいです。相手の目を見ると言うんですよ。目を見て自分が飛び込むところをどこか決めて、相手の目が切れた瞬間に飛び込む、と。

藤島あと同じフランカーの細川恭子、自分が戦う側のコーチだったら、「あの選手すごい嫌だな」って思う。

田村すごい天然ですね、何か。走るときは猛獣だと思います。
まさか女子ラグビーの選手1人ひとりの名前を言って、どういう選手で、と話す時代が来るなんて。今までなかったですよね。それだけですごい。

藤島どうですか、見立てとして。

田村十分、2勝。

藤島対戦するのは最初がカナダ、これは一応格上、世界4位とかですね。5位のアメリカ、6、7位くらいのイタリア。日本は13位だけど、男子とは違うと言うと変ですけどランキングはさっき言われたように、1、2、3位以外はあてにならないと思いますよ。

田村そうですよね。少なくとも、手に汗握るような試合になる。せっかく行くのでね、なんか元気の良い記事を書きたい!

藤島シーズン、いよいよ始まりますけど、最後編集長らしく、編集後記お願いします。

田村(関東大学リーグ戦1部初戦で)東洋大が東海大を破ったのはびっくりです。もちろん留学生が何人もいるっていうのがありますけど日本育ちで、日本のお母さんと外国出身のお父さんという選手もいます。いろいろいます。でもやっぱり日本の選手叩き上げの選手がすごくしっかりしていて勢いもあって、日常のモラルというか、その辺から時間をかけて4年かけてチームを作ってきたと福永監督も言っていました。そう簡単には崩れないんじゃないですかね。

藤島大学ラグビー序盤の本当の驚きのニュースですね。一つ楽しみ増えましたね。

田村『ラグビーマガジン』で初めて東洋大が表紙になりました。

藤島大学の生協で完売してほしいですね。本日のゲスト、ベースボールマガジン社『ラグビーマガジン』編集長、田村一博さんでした。ありがとうございます。

田村ありがとうございます。

10月3日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

10月3日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-221003.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0090286