藤島大の楕円球にみる夢
(2023/07/03)
ゲスト/田村一博氏(「ラグビーマガジン」編集長)
三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。
7月3日放送のゲストは、「ラグビーマガジン」の田村一博編集長です。
藤島スポーツライターの藤島大です。ゲストはベースボールマガジン社「ラグビーマガジン」編集長でおなじみ、田村一博さんです。お願いします。
田村よろしくお願いします。
藤島略歴を私から簡単に紹介します。1964年10月21日、熊本市生まれ。高校は鹿児島中央高校野球部でした。早稲田大学に入ります。1989年、ベースボールマガジン社に入社。「ラグビーマガジン」「週刊ベースボール」に携わりました。「週刊ベースボール」で西武担当でしたっけ?
田村西武と広島、自分で広島に行っていました。
藤島広島ファンなんですよね?
田村そうなんですよ。
藤島早稲田大学時代、伝統のあるクラブ、早稲田大学GWラグビークラブに所属していました。ポジションはフッカーでした。
田村編集長は大変な情報通でいらっしゃいます。というのは、ジャパンの合宿、私も行きましたけど、なかなか見せてくれないんですね。
田村15分から30分以内ですね。僕らが見られる時間というのは。こういうアタックするぞ、こういうディフェンスをするぞっていう選手へのゆっくりとしたスピードでの落とし込みなんですけど、それ以外の時間はすごくハード、特にタックルセッション。というのは、スポットコーチが柔術のようなものをやっているんですね。1時間休みなしで相手と組み合って倒し合うっていうものをやっているので、めちゃくちゃハードだとは言っていましたね。ジョン・ドネヒューコーチです。
藤島ラグビーリーグの有名な。
田村オールブラックスとかいろいろなところのコーチをやっていますね。
藤島ラグビーリーグは13人制のラグビーで、ボールの争奪戦が省略されている、簡略化されている。
田村その代わりその場で本当に全く前進を許さず地面に押しつけて倒すぐらいのレベルのタックルを求めるスポーツなので、ぶつかり合うところで相手をつかんで離さない、そこの部分をめちゃくちゃ鍛えているようですよ。
1時間やる中で水も飲めないです。膝に手をついたり、頭を抱えたりするのも駄目だと。お互いが励まし合ったり、監視し合ったりして、メンタリティも鍛える。仲間を思いやる声をかける、疲れたところを見せない、そういう全てを含んだ練習を毎日徹底してやっているということでしたね。
藤島弱みを見せない。
田村そうですね。取っ組み合っているので、やっぱり顔と顔がぶつかったり肌と肌が触れ合ってすりむいたりしているんですよ。みんな絆創膏貼って、昔の高校生みたいに。
とにかくチームになるため、技術だけじゃなくて、両方一緒にやろうぜっていうトレーニングの時間ですね。
藤島やっぱり理屈を超えたような厳しい練習をみんなでする、仲間とするとチームワークができるんですよね。
田村そうですね。リーチマイケルがメンバー表を見て言ったんですけど、これはもうジェイミーが信頼しているメンバーですよ、そういうメンバーを選んでいますと言ったので、そこを大事にしているチーム、だから選ばれたっていうところですね。
藤島月並みの言葉で、責任感があるとか体を張るとか、そういう人が好きなんですよね、ジェイミーは。ファンの人はね、なんで彼がいないんだっていうようなことはきっと思い浮かぶでしょうけれども、厳しく細かいんですよね。大柄でドーンとしているような感じだけれども。
田村メンバーを見ると分かるように2019年組がわりとたくさんいます。リーグワンもシーズンが長かったので準備期間も短い、もうそんなに新しいことを落とし込む時間はないので、理解してくれている人たちが大事だと。プラス新しいメンバーというところですね。藤井ナショナルチームディレクターも言っていたんですけれどジェイミーの練習は厳しいので合宿が始まるとすぐに怪我人が出る。長田智希選手は全てのトレーニングに参加できているので、やっぱりタフだなと思いますね。
藤島態度もね、堂々としていて。
コーチが激しい練習法を合宿で定めるとき、怪我人が出ても構わないって態度をとるのが大事ですね。こっちは動揺しないと。ジェイミーは全く動揺しないでしょうね。
話はそれますけど、元ジャパンの本城和彦がサントリーの監督をした後に早稲田のヘッドコーチになって、夏合宿は猛練習をすると決めていたんですね。ある日、午前中ものすごい練習をして、午後に同志社大学と試合をした。ミーティングで、まさに一生覚えていることですけど、「俺は怪我人とか全く気にしないから」って言ったんです。その試合で競り勝ったんですね。春は成績が悪かったのにあれから急にグーッといって、大学選手権の決勝まで行くようなチームになった。急にそれを思い出しました。レベルは違うし時代も違うんだけど。
あと少し選手の名前を聞きたいんですけど、例えば新しい力としてはスクラムハーフの福田健太、どうですか。
田村流大選手は福田の走力であったり、そういうのはちょっと脅威だと言っていますね。ハーフの中では体もちょっと大きいじゃないですか。本人も自分の強みで勝負していきたいと言っています。あとはプロップのシオネ・ハラシリ。
藤島キャンプに呼ばれて、プロップ転向含みで。長谷川慎コーチが独り言のように、「報道の人はなんでもっと彼に注目しないのかな」って言ったのを聞いたんですけど。
田村本人に聞いたら、「慎さんが前回のワールドカップに短期間で育て上げた中島イシレリ、ああいうふうにしてやるからって言われている」と。
あとはですね、やっぱり堀江翔太がいると安心感がある、とリーチも言いますね。試合のときも誰も慌てないし、彼が慌てないのですごく安心感がある、存在感があると。
藤島結局ワールドカップの修羅場っていうのはキャップの多い人が必ず必要で、重責ですね。その重い仕事をするんでしょうね。
田村あとはこのワールドカップが日本代表として最後、このワールドカップが自分にとって最後のワールドカップと決めている山中亮平も、本当に日本代表になりたいんですという気持ちが前に出ていますね。
藤島よく私の酒場の世論リサーチだと「10番は誰だ」って聞かれるんですけど、どうですか?
田村バランスがいいんじゃないですかね。李承信と松田力也、あと小倉順平が複数のポジションで絡んでくるので。
藤島李承信は練習できている?
田村できています。去年の秋のヨーロッパ遠征のときから、出たいじゃなく出なきゃいけないんだ、出るんだっていう気持ちに変わったと言っているので1年前のフランス戦の頃とは顔が全然違いますね。
藤島ジェイミー・ジョセフ体制ではどこを買っているのでしょうか。体を張る、痛がらないというところかなと想像はするんですけど。
田村コーチのトニー・ブラウンは日本スタイルを出さなきゃ日本は駄目なんだと言うんですけれども、世界のトレンドとして以前よりもっとスピードは速くなっているので、その中でいろいろな種類のキックを使うことがより自分たちのその特徴を生かすためになる。そういう意味でいくと、承信はキックも上手ですよね。
藤島ジャパンの国内の試合が始まります。7月8日土曜日、ジャパン・フィフティーンとオールブラックス・フィフティーン。同15日土曜日、熊本でジャパンとオールブラックス・フィフティーン。7月22日サモア、これは札幌ですね。次は29日、花園ラグビー場でトンガ、8月5日、秩父宮でフィジーと戦う。このシリーズ、どういうふうに捉えていますか。
田村オールブラックス・フィフティーンは世界の8強レベル、そういうところとやって、あとはワールドカップの流れ、動きを全く再現すると言っていたので、練習して移動して試合をしてまた移動して、まずシミュレーションが一番大きいところがありますね。選手たちにそのサイクルを体で学んでもらって、おそらくそんなにもういろいろな選手は起用しないはずなんですよね。首脳陣も匂わせていますから。やっぱり若手はチャンスが1回きりだと思うぐらいの気持ちでいてほしいと。
藤島なるほどね。若い力ってこういうときの心のあり方が難しいんですよね。あまり自分をアピールしようとすると歯車がかみ合わなくなる。あくまでもチームに求められることを理解して黙々とやる。でも黙々とやっているだけじゃそのままじゃないか、と。
しかし、固定していくというのは正しいでしょうね。コロナの影響をジャパンは世界的に見ても非常に受けて思うように練習、試合ができなかったのでこの貴重な機会はメンバーを固めていくところに使うべきなんでしょうね。
田村そうですね。カチッとしたメンバーで勝利を重ねて自信をつけるのは大事ですね。
藤島あくまでも目標はもうはっきりしているわけで、そこから逆算して全部考えるので、ここはジャーナリズムと現場の人たちが食い違うところなんですね。つい若いの使おうよって思っちゃうんですけど、ジェイミー・ジョセフさんの頭の中ではほぼ決まっているべきなんですよ。
田村そうだと思いますよ。
藤島本当にいくつかのところだけたぶんまだ決めていないところがある。そのために今度は、恒例と言っていいと思います、宮崎キャンプが始まったわけですけれども、例年と同じように。
田村猛練習ですね。2015年も宮崎で猛練習して結束が強くなってワンチームになって勝てた。まぎれもなく日本代表の強さの源になっていると思います。
藤島本大会を占うにはちょっと早い気もするんですけど、でももう9月10日ですか、現地時間の13時、日本時間20時、チリとの試合から始まるわけですね。1週間後にイングランド、28日サモア、10月8日アルゼンチン。編集長として、山はどこですか?
田村もちろん2戦目のイングランドはそうですね。4戦目のアルゼンチンも。でもその前のサモアも。
藤島危険ですよね。やっぱりイングランドに全てをかけていくべきでしょう。余力を残すんじゃなくてここで終わりぐらいの感じでいくべきでしょうね。ワールドカップをどう見ていますか?
田村海外のワールドカップに行ってそこで勝つのは簡単ではないと思いますね。2019年はホームでちゃんと試合の間隔も空いて大声援を受けてやれたので。でも日本って本当に細かいじゃないですか。もうすでに全てのスタジアムの芝の具合がどうなのか調べているんです。もうその辺まで細かいところまで調べているので、おそらく戦いのイメージは頭の中に詳細まであると思うんです。なので、楽観視はできないですけれど、みっともない試合は絶対ない。
藤島信じられますね、そこに今来ているのは。崩れて全然話にならないっていう負け方はもうしなくなった。
田村イングランドでもアルゼンチンでも、やってみなきゃ分からないところまで来ているじゃないですか。そこまで来られたのが幸せかなと思っています。
藤島ワールドカップに向けて雑誌の方の準備は?
田村いつも大好評でたくさん売れるワールドカップ展望号は9月4日に発売します。現地の記者に頼んで生の情報、詳しい情報をもらう予定なので期待してください。
藤島本日のゲスト、「ラグビーマガジン」編集長の田村一博さんでした。ありがとうございます。
田村ありがとうございます。
7月3日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣
- ラジオ番組について:
- ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。
7月3日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-230703.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0090286