藤島大の楕円球にみる夢
(2023/09/04)

ゲスト/布巻峻介選手(元日本代表/埼玉パナソニックワイルドナイツ)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。
9月4日放送のゲストは、ラグビー元日本代表で埼玉パナソニックワイルドナイツの布巻峻介選手です。

藤島スポーツライターの藤島大です。ゲストは元日本代表、埼玉パナソニックワイルドナイツの布巻峻介さんです。よろしくお願いします。

布巻よろしくお願いします。

藤島この番組には、2017年10月の放送以来の登場ですね。練習が今日あったので、オンラインで熊谷と結んでお話をうかがいます。
経歴を私の方から。1992年7月13日生まれ、福岡県出身、コカ・コーラの選手であった父の影響で4歳からラグビーを始めて、東福岡高校でも1年からレギュラー。覚えてますね。怪物が登場したようなイメージでしたけれども。花園に出場して2連覇に力を尽くしました。
早稲田大学に進んで3年でセンターからフランカーへ転向。2015年、パナソニックに加入します。スーパーラグビーのサンウルブズでも活躍をしました。高校日本代表それからU20の日本代表、そしてジャパン、2016年11月12日のジョージア戦で初キャップでした。代表キャップ7。
178センチ98キロ。
埼玉パナソニックワイルドナイツ、8月28日から新しいシーズンに向けて練習を開始したそうですけれども、昨シーズン、非常に強かったんだけれどもファイナルで惜しくも敗れて準優勝でした。
早速なんですけれどもワイルドナイツもいろんな意味で大きく変わるシーズンになりそうですか?

布巻そうですね。やっぱり順調にいっている、自信を持って戦いに挑んでもやっぱりああいう結果で終わってしまうってことがあるんだなと。予想してなかったというか、ただやっぱりどこか自分たちが見落としている部分があるので、大きく変えることはそんなにないでしょうけど、もう1回自分たちを、今までやってきたことを見つめ直す必要はあるのかなとは思います。

藤島新しいシーズンに向けて始まったところですけれども、雰囲気はどうですか?

布巻特に今はきついシーズンなので。たぶんどのチームもそうでしょうけど、なんかもう1日1日頑張って乗り越えている段階ですね。

藤島リーグワンのトップのチームというのは、今頃きつい練習するわけですか?

布巻最初はやっぱりきついですね。もうちょっとしたら練習試合とか始まっていくのでそうなると少しボリュームは落ちます。

藤島なるほど。熊谷って言ったら日本で一番熱いようなところで、大変でしょうね。

布巻いや暑いですね、でもなんかいいなと思いますけど。暑さにも強くなると思うし。

藤島ポジティブですね。今ワイルドナイツもたくさんの仲間がワールドカップに旅立って、もう開幕の直前ですけれども、どんな感じですか?

布巻パナソニックのメンバーに限らず、戦えるフィジカルだったりそういう強さをたぶんみんな持ってるんですよ。今、うまくいってないのってアタックのつながりだったりそういうところがかみあってないように思ってるんですけれど、そこがつながったときはもう一気に跳ねる、試合内容もすごく良くなると思います。

藤島イタリア戦までなかなか勝てないで、何となくファンの人も心配している。私にもそういう声が届くんですけれども、私も昔コーチをやっていたので分かるんですけれど、筋金が一つ入っていれば、すっとよくなる。

布巻欲を言えばイタリア戦ぐらいで最高の状態に持って行きたかったでしょうけれど。初戦のチリ戦。そこを勝って2戦目ぐらいからピークが来てくれるといいなって感じです。

藤島ピーキングってあるじゃないですか。ちょっと落ちたところから這い上がるときにすごいエネルギーが出たり、ああいうのってコントロールできるものですか?

布巻2019年のワールドカップのときもそうでしたけど、ワンチームとか、とにかくみんなが我慢して頑張り続ければ自然とそうなっていくんですよ。自然とみんなが信頼し合ったり、だから分からないですね。

藤島布巻さんは前回のワールドカップの前もジェイミー・ジョセフさんのチームでずっとトレーニングはもちろん、試合もした。4年前とまた違うんでしょうけれども、ジェイミー・ジョセフはどういう指導を?

布巻基本的にはもう厳しい監督なんですよね。とにかくさぼるとかそういうのも本当に許さないです。チームのためになってないプレーをするのは怒られます。

藤島パナソニックではロビー・ディーンズさんのもとでプレーしていますが、彼らは同じニュージーランド人、同じ南島の人みたいな感じがするんだけど、それぞれ違うんですよね。

布巻違いますね。ロビーさんはすごい先生っぽいっていうんですかね。もちろんラグビーも教えるんですけど、もっと大きな考え方だったり、チームとして必要なことを結構教えてくれます。プレーというよりも、コミュニケーションの大切さであったり、仲間を助け合う大切さ、当事者意識を持ってやる大切さだったり。そう考えると、ラグビーは教わってないかもしれない。

藤島衝撃の発言が(笑)。ニュージーランドでの経歴を見ても良いチームを持つとすごくうまく、雰囲気を良くして持っていくというイメージですよね。

布巻そうですね。

藤島ジェイミー・ジョセフさん、ハイランダーズをたたき上げの軍団で強くして、1回オールブラックスのすごい選手が急に集まったときがあったんですね。そのときすごい成績が下がった。私がインタビューしたときにこう言ってましたね。「私はあの経験からサバイブした。あのときよく分かった。どんなに優れた選手でもチームに忠誠心がない人では勝てないというのを学んだんだ」と。そういう経験が指導に反映されていますか?

布巻そういう意味で言うと、本当に選手に差をつくらない。リーダー陣であろうとめちゃくちゃ怒りますし。たぶんリーチ(マイケル)さんも相当怒られたと思うんですけど。リーダーだろうとなんだろうと1人のプレーヤーとしてちゃんと高いレベルに持って行く指導というのを厳しくやっています。

藤島今のジャパン、ワイルドナイツの選手もたくさん並んでいて、やっぱりファンの人、リスナーの人、私もそうですけれども、本当はどういう人でどういう選手なんだ、というのを聞いてみたい気がするんですけれど。思い浮かんだ前の方から言うとプロップ稲垣啓太、彼はどこが優れていますか?

布巻タフですね。スクラム、ボールキャリー、タックル、接点。それを高いレベルで試合中何回もやって、シーズン通して続けられるそのタフさはすごいなと。

藤島試合中も苦しいときにこそ頼りになる、そういう印象もあります?

布巻もちろん頼りになりますし、当たり前にやってくれているというか、頼りになるとか逆に思わないですね。

藤島フッカーも2人がともにジャパン。坂手と堀江と一緒にプレーして、もちろんタイプは違いますよね。この2人はどうですか?

布巻堀江さんは皆さん知ってる通りすごい方ですけれど、持っている知識、プレーの幅が本当に広くて、それを後輩にも伝えてくれますし、人としても素晴らしい方です。坂手は、勢いをチームに与えてくれるイメージがあります。

藤島フランカー福井翔大。高校の後輩でもありますけれども、布巻先輩から見るとどうですか?

布巻いやもう本当に伸び盛りで、もちろん彼のピークはここじゃないでしょうけど、すごい勢いで高いレベルに来ましたね。ワイルドナイツは高校を卒業して入ったので、最初の2、3年、もちろん試合も出たかったと思うんですけど、我慢して体を作って、しっかりとした体が出来上がって、もともと持っている能力、センスというものが世界レベルで通用するようになってきたな、と。

藤島福井と同世代のセンター長田智希、彼も今ぐっと来てますよね。

布巻もう本当に言うことがないというか。本当にラグビーが好きだし、真面目だし、勉強熱心だし、トレーニングもしっかりやりますし。早稲田でキャプテンもしていたぐらいだし人としてもしっかりしていて。逆に言うと福井はちょっとアホなんで(笑)。

藤島それがまた魅力なんでしょうね。

布巻あのアホさがやっぱりいいですね。ほしいなと思います。

藤島あまり細かいことをしないでぱっと前向きみたいなイメージですか。

布巻そうですね。考える前に体が動いてますよね。

藤島福井翔大が私に冗談で、「自分はすぐプロになって、大学を経てきた長田に差を見せつけようと思ったら、最初からあいつはしっかりしてました」って言ってましたね。

布巻そういう発言をする感じですね。

藤島松田力也、今ポジション争いをしている感じですかね。ジャパンの10番はどう見ていますか?

布巻僕の考えですけど、(李)承信でも力也でも、どっちかに決めてあげないと、チームとしてもちょっと方向性が見えにくいかな、と。本人たちの気持ちは分からないですけれど、ポジション争いに目がいっちゃって試合に目がいきづらいんじゃないかなっていうのはちょっと心配しています。

藤島どっちもうまいんですよね。本当に優劣とかそういうことは一切なくてどっちでもできるんだから、すぱっといこうっていう感じですよね。私もそう思いますね。
このままワールドカップを聞きたいんですけれども、例えば4年前の大会の頃と、今、世界のトップのラグビーって変わってきていますか?

布巻僕が見ている範囲ですけれど、ヨーロッパ勢がぐいぐい来て強いと思います。今までニュージーランドみたいなアンストラクチャーな形が強いイメージがあったんですけれど、ヨーロッパとか形がけっこううまく作られていて精度がすごい高くて、それがはまっている。そこが新しくて変わってきたなっていう印象があります。

藤島このワールドカップ、布巻峻介としてはどういう見立てですか。優勝はどこか?

布巻難しいですね。強いところで言うとアイルランド、フランス、南アフリカ、ニュージーランドなんでしょうけど、ニュージーランドが飛び抜けて強くない時代が何年か続いていて、今の4つぐらいが思い浮かびますけど、そこからは分からないですね。

藤島アイルランドはぱっと見ると一番強く映るんだけれども、アイルランドの良さってどこですか?

布巻1人ひとりを見たときにスーパースターはそんなにいないと思うんですけど、しっかり形を作ってつながってアタックもディフェンスをするのでそこがすごいなと思っています。例えばアイルランドの選手がリーグワンに来てもそんなに目立たないんじゃないかな。だけどアイルランドにいるとすごい強い。

藤島分かりやすい。あとジャパン、やっぱり可能性はありますよね、十分。

布巻あります。伸びしろしかないというか。今は正直言って出来は悪いと思うんですよ。プレーがかみ合ってきたときには相手にとって脅威になると思います。

藤島なるほど。一応開催国フランスもちょっと一言。

布巻(スタンドオフの)ロマン・ヌタマック選手が怪我してどうなるかと思いましたけど、先日、ワラビーズに勝って、チームとしても完成してきているので強いですよね。

藤島オールブラックスが自分たちをちょっとダークホースと思っているというか、挑戦者と思っている感じがあるのがちょっと恐ろしいですよね。

布巻そうですね。オールブラックスは結果が出てないとはいえ、今までは結果が出過ぎていただけで普通に強いので。

藤島最後、リスナーの方にぜひメッセージを伝えていただければ。

布巻ワールドカップが終わってすぐリーグワンが始まります。ワールドカップの勢いを持ったままリーグワンに突入できるのは4年に一度なので、楽しみにしていただけたらなと思います。

藤島ありがとうございます。本日のゲスト、元日本代表、埼玉パナソニックワイルドナイツの布巻峻介さんでした。本当に練習終わったばかりで、忙しいところ、疲れているところ、ありがとうございます。

布巻ありがとうございました。

9月4日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

9月4日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-230904.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0090286