藤島大の楕円球にみる夢
(2024/01/01)

ゲスト/鎮勝也氏(スポーツライター)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。
1月1日放送のゲストは、スポーツライターの鎮勝也さんです。

藤島スポーツライターの藤島大です。本日のゲスト、おなじみスポーツライターの鎮勝也さんです。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

藤島今日は関西からわざわざ東京虎ノ門のスタジオに来ていただきました。経歴を改めて私の方から。鎮勝也さん、1966年、大阪府吹田市に生まれました。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始めました。大阪府立摂津高校そして立命館大学。大学卒業後、大阪のデイリースポーツそれからスポーツニッポン新聞社と、なんていうか渡り歩いて。

仕事が続かなくて堪え性がないということです。

藤島記者時代からラグビーも担当してましたけど、野球の印象もありますよね。

そうですね。ラグビーと同じぐらいの数は。

藤島トラ番も経験している?

はい。1年だけでお払い箱になりましたけど、「アレ」の人が監督やったときですね。2003年、星野仙一氏が優勝さしてその後に岡田彰布氏が帰ってきて、そのときに一緒にやりました。駆け出しだったので、岡田彰布さんを取材することはなかったです。

藤島そのときはスポニチですか。

スポニチです。

藤島現在は独立して、スポーツライターです。「ラグリパWEST」の名物コラム、いいんですよね。

(「ラグビーマガジン」の)田村編集長のおかげで好き放題書かせてもらって。

藤島著書「花園が燃えた日」。今日私持ってきましたけど、北野高校と伏見工業がぶつかった試合を描いています。私も現場にいましたけれども、すごかったですね。
近著に「ラグビーが好きやねん」があります。この番組3度目の登場です。

藤島何を話そうかと思ったんですけれども、まずね、東京でも酒場でよく聞かれるのが「同志社どうなんだ」「どうしちゃったんだ」と。関西大学リーグ全敗はちょっとびっくりですね。

まず推薦でとるのが難しいのはあるんですな。なかなか人が集まらない。

藤島でもいいメンバーですよね。私が見たら。

ただコーチの1人がね、「高校ジャパンゼロです」って言ってました。なかなか推薦が難しくて必ず取れるという保証もないし、なおかつ奨学金とか出せるような状況でもない。だから競技実績と勉強で入ってきてもらわないといけない。他のチームも一緒じゃないかと言われればそうなんですけど。

藤島それはね、優勝できない理由ならまだ分かるんですよ。しかし全敗の理由にはならないですね。

ぶっちゃけた話すると、昨シーズン、宮本啓希監督が35歳で就任、橋野皓介コーチが34歳で就任。私が思うのは、やっぱり人を使う仕事だと思うんです、監督は。昔平尾誠二さんに「監督というのはモチベーションをどう持たすかなんや。ラグビーを知ってる知らないではないんや」と教えていただいたことがあって、どういうことかと言えば人生経験がある程度いると思うんですよね。僕が聞いている話を総合すると、若い指導者がサントリーやキヤノン出身でそのやり方を落とし込むところで学生から反発が出てくる。学生はやっぱり自由にさせて欲しいというのがあるんです。でも大人はそれじゃうまいこといかないよというのがある。昨シーズンの関西リーグ最終戦で選手がやりたいようにさせてくださいということで最後やからとやったら、天理大学に勝ってしまったわけですよ。同志社は5位で負け方によっちゃ入れ替え戦の可能性もあったのが、一気に3位に入って大学選手権にも出た。たぶん、そこで成功体験ができてしまったんですよね。でも、私も原稿化させてもらったんですけど、いっときだけなんですよ。今まで抑制されていたところから自由になって、それでやったってなるんやけどそれが長いこと続くかというとそうではない。

藤島2022年の天理に勝った、それは見事なんですけれども、そこですね。

それによって指導陣も学生に任せばいいのかなと。もちろん同志社は選手の自主性でやってきて、選手なんかもキャプテン中心に決めたりしていた。でもある強豪チームの監督が言ってましたけれど、「もう今は時代が違う。ある程度指導者が主導していかないと」と。

藤島私、2022年夏合宿の同志社を見て、全然蹴らないで極端なことをやっていていいなと思いました。あのときね、このやり方をやると9月10月すごい苦しむけど、低空飛行で乗り越えると11月12月に強くなるなって自分のコーチング経験でもそう思っていた。そうしたら9月10月に土がついちゃったんですよね。それでおそらく迷いも出ただろうしね。天理戦の前に学生にお前たちでやってみろというふうになったら勝ったと。ここの総括が難しかったんでしょうね。2023年のシーズン、おそらくね、学生にしたら自分たちでやったら天理に勝てた、そっちでいこうと。

そういうことやというふうには聞いています。(ラグビーマガジンの)明石(尚之)記者が書いていたのは、要は学生から練習計画表を2週間前ぐらいに出させて、それを首脳陣が認める形でやったと。ということは基本的に学生が軸でやってるということじゃないですか。

藤島私は早稲田のコーチを1996年から5シーズンかな、ずいぶん昔になりましたけれど、どこの大学でも起こることなんです。大学生って自治、自主だから。大学生っていうのはね、目の前に許せない、矛盾を感じたら許せない。だから青春でこれは非常に尊いんだけどそこは長く生きていた人が、でもこうやった方が勝つんだっていうのを説得すると。

それは説得力も当然いるから、やっぱり人生経験ですなって話になってくる。

藤島私もね、説得したことありますよ。私の決めの言葉、「マイク・タイソンにもトレーナーがいるぞ」って言ったんですよ。

そうそうそう。タイガー・ウッズにもコーチがいる。

藤島マイク・タイソンがね、友達みたいなトレーナーにしたらすぐ負けた。僕はそのときボクシング記者で、マイク・タイソンでも厳しいトレーナーをクビにして、友達みたいな人にしたらこれは負けるんだと思ってね、やっぱりこれは間違ってないと。

客観的に見て、修正をする人は必要なんですよね。

藤島駄目なコーチならいない方がマシでも、コーチ抜きで日本一はならない。そういうことですね。
今、リーグワンが師走に始まって、どうですか。

埼玉パナソニックワイルドナイツ、いいチームやなと見て思いました。やっぱりしっかりしてるなと。飯島さんというGMがいて、その下にロビー・ディーンズ監督がいて、上意下達というかしっかりした形でやっぱりやってるし、若手もいい選手が入ってきてますしね。外国人もたぶん育成を考えてとってるんやろうと思うんですよね。ワラビーズ(豪州代表)とかには届かないけれど何か才能のある人を日本に連れてきて、ロビーさんのコーチングを受けさせて、ベン・ガンターとかディラン・ライリー、ジャック・コーネルセンとかフィロソフィー、哲学があるんですよね。

藤島例えばワールドカップでジャパンのコーネルセンって、もう本当に頑張る力を振り絞る、いつでもぶれがない、黙々と力を発揮する。ある人が僕に言ってたんですね。ワラビーズになれそうなのに、日本を選んでくれたんですよって。違うんですよね。ワラビーズに全くなれない。全くそのエリートのコースに入ってなかったんだから。

20歳前ぐらいに外れたからどうするんだということだと思うんです。ただ、それなりのものは持ってるから、ひょっとしたら化ける可能性はある。その辺を多分飯島さんなんかが考えてるんだろうなと。

藤島そういうことなんです。コーネルセンとかガンターの話にちょっと思い出すんですけどね、私の学生のときのラグビー部の一つ上の先輩が「ラグビーっていうのは上手い奴が試合出るんじゃないんだよ、試合出たやつが上手くなるんだよ」と。

そうですね。

藤島つまり彼らは日本でチャンスを得たらもうワールドカップで全然通じる力があった。でもオーストラリアにいたら序列があって出られない。

だから結局チームっていうのを思い悩むのは、勝たないといけないですよね。でも、若手は試合に出さないと上手くならないから、若手を使う。そうなると勝てない。どっちに軸足を置いてやっていくのかというところが難しいですよね。

藤島常勝チームはその循環がうまくいくんですよね。勝ってるから若いやつを出せる。若いやつを出せるから彼らの力がつく。循環がこうなったときに黄金時代ができる。

埼玉パナソニックワイルドナイツ なんか長田(智希)君とかね、そういう感じで使えてるなと。

藤島花園近鉄ライナーズはどうですか?

良くなってるって僕は思っています。ディフェンスが非常に良くなってるんです。

藤島向井(昭吾)新監督でいい感じになっている?

あの人もコカ・コーラレッドスパークスで監督をやっていたらチームがなくなって、指導に対して飢えてる部分もあったと思うんですけど。それがリーグワンのトップチームでできるわけやから、還暦を越えてね、すごい幸せなことやと思うし。

藤島コベルコ神戸スティーラーズ、どうでしょう。大物が来て、入団会見行ってましたよね?

アーディ・サベアとブロディ・レタリックですね。

藤島オールブラックスの重鎮ですよね。本物。

見たらすごかったでしょう。

藤島12月、静岡ブルーレヴズ戦を現場で見たんですけど、レタリックは最後静岡が猛攻をかけたときに連続タックルしましたね。バーンとタックルしてすぐ起き上がって、タッチライン際を独走した選手を内側から追いかけてまたバーンとタックルして。結局こういうことなんだなと。何ていうかな、スターを集めたみたいな印象があるけれどサベアとレタリックはもう、ひたむきですもん、プレーが。
静岡の試合を見たときには静岡のスクラム恐るべしとも思いましたね。河田和大、日野剛志、伊藤平一郎と172センチぐらいの3人が具智元のお尻をレタリックが押しているスクラムを押し込みましたよ。

静岡のスクラムを教えているのは長谷川慎コーチですね。

藤島神戸、チームはどうですか?

いい流れだと思います。デイヴ・レニーヘッドコーチ(2023年1月までワラビーズヘッドコーチ)がやっぱりちゃんと教えてますよね。

藤島暮れにオーストラリアの新聞が花園近鉄ライナーズのクウェイド・クーパーに日本でインタビューしたんです。主にエディー・ジョーンズのことを聞くんだけど、その中でデイヴ・レニーについて語ってましたね。本当に準備されていて、カンニングペーパーを持って試験に臨むような感じで試合をしていたと。デイヴ・レニーは良い監督だなってちょっと思いましたね。

神戸で練習は結構きついって話は聞きましたね。

藤島同志社大学の話に繋がるけれどやっぱり練習はきついですよね。

練習しないと勝てへんですよね。

藤島ジャパンもやっぱり猛練習したからある程度のとこまで来たし、エディー・ジョーンズそれからジェイミー・ジョセフも、ジャパンの選手が解放されて、めちゃめちゃきつかったって言ってましたね。エディー・ジョーンズのときよりきつかったと。

すぐに起きるとか、ずっと走るとか続けていかない限りやっぱり勝てない。

藤島ゲスト、関西在住、スポーツライター鎮勝也さんでした。忙しいところありがとうございます。

どうも失礼しました。ありがとうございました。

1月1日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

1月1日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-240101.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0090286